第3話 悪役おぢVSギャル聖女
「ええー……マジですか……」
エイミはまじまじとおぢさんを見た。
年齢は30歳か40歳くらい?
よくわからない……おぢさんって顔が疲れすぎてるから、全部同じに見える。
痩せて背が高いし、中学のときの算数の先生に似てる気もする。
あれ、異世界だからか、ちょっと外国人風だよね。よく見ればイケメンかも。
いやいや、それにしたって顔がコワすぎでしょ。世界を滅ぼす顔だよ。
「えと、マジでおぢさんがアタシのこと召喚したの?」
「……おぢさん、ではない。私はギルバルト・イル・セリウス・シヴァルディス。シヴァルディス帝国五代皇帝だ」
「へえ……名前、長いね……」
エイミは困惑気味に答えた。いや皇帝とか言われてもどのくらい偉いか実感ないし、おぢさんはおぢさんだし。
おぢさんのほうもどうやら困惑しているようだ。
まあいきなり異世界から大荷物背負ったギャルが来たらビックリか。
しかも自分で呼んでるんだもんね。
ってことは。
「おぢさんもマッチングアプリ入れてるの?」
「何を言っている? まっちんぐ……あぷり?」
「え、だってアタシはマチアプ入れて、条件入れて……」
なるほど、と声を上げたのは王子だ。
「神の召喚式は異世界では違う形を取るそうだ。このようなめぐりあわせをなさるのだな」
「しょーかんしき?」
「そう。聖女召喚は
「ちょ、待って、まって。全然分かんない。何語? アニメの設定?」
一瞬、王子の目の中にこっちをバカにしたみたいな光が見えたけど、彼はすぐにニッコリと、イケメンの笑顔に戻った。
「すまない、こちらの世界の言葉はまだ理解できないだろうね。とにかく、召喚者は『代償』を支払って神の許可する『術』を使い、神は求めに応じてゲンダイ世界の様々な仕組みに介入、『召喚を希望する人材』をメルファリア世界に送り込むことになっている。その詳細は不明だがね、神の御業ゆえに」
さて、と王子は後ろに立つギルバルトへ視線を移した。
「先ほど行った陛下の召喚式は成功した。こうして聖女が召喚された以上、第一の条件は満たしたと言えるだろう。合格だ」
「だが……彼女は本当に聖女なのか? こんな子供が」
立ち上がったギルバルトはちらっとエイミの方を見る。
うーん、なんか見下してるっていうか、本気で子ども扱いしてる感じ。
ムカつく。エイミは眉を吊り上げた。
「なにがマッチングしたか分かんないけど、とにかく聖女召喚で来たんだからアタシが聖女に決まってんじゃん。子ども扱いはやめてよ、もう16歳だよ!」
「……まだ16歳だ。我が帝国の成人年齢は18歳。たしかゲンダイ世界でもそのくらいが成人基準だったと聞く。聖女は十分に子供だろう」
「いや年齢区分じゃなくて、役目とか、ヤル気とか、そういうので認めてって言ってんの!」
「実績もない初対面の子供の評価や認定をすることはできない」
「だから! その子供っていう決めつけをやめてつってば!」
くっそー、頭の固いおぢさんだな!
ますます中学の先生っぽい!
王子が目を細める。
「『氷葬のギルバルト』陛下に正面から言い返すとは、なかなか芯のある少女だ。正当な聖女召喚で顕現しているし、聖女が自分でそう言っている以上、認めて差し上げたほうがいいのでは?」
「だが」
渋るギルバルトに、王子は何とも言えない笑みを向ける。
「16歳という年齢ゆえか……過去に囚われていては、未来を掴めませんよ、陛下」
ハッとしたようにギルバルトは唇を噛み締めた。
エイミは胸を突かれたような気持になった。
なんだろう、この感じ。
おぢさん……悲しんでいるような。
いや全然分かんないけど! こんな初対面の悪役おぢさんのことなんて!
でも、何か伝わるというか。
心の傷を抉られたような、そんな悲しみを急に送られた気がする。
あともう一つ。
理由は分からなくて、これはただ直感だけど。
「……王子って、もしかして性格悪い?」
思わず言ってしまったエイミに王子は微笑み、ゆっくりと視線を向けた。
「いいだろう。そろそろ次の条件の話に移ろうじゃないか」
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