第1章 ギャル聖女、悪役(っぽい)おぢさん皇帝と出会う

第1話 異世界召喚とかウケるんですけど笑



 まぶしい光。

 なに、何が起きたの?

 いきなり人生のスポットライト浴びちゃった?


 でもすぐに光は引いていき、アタシはホッとして目を開けた。

 開けたんだけど。


 目の前に広がっていたのは、見たことがないほど天井の高い部屋。


 なんか彫刻みたいな飾りがあって、白くて丸い柱が奥まで続いている。

 広っ。美術館かな?


 壁にある綺麗な窓からはキラキラと光が差し込んでいた。

 あ、これは分かる。ステンドグラスだ。

 でもそれもありえないほど奥まで続いてて、映画に出てくる教会っぽい感じ。


 いやいやいや。

 ここ川崎じゃないよね?

 

「驚いたかな? まあ無理もない」


 いきなり大きな声で言われてびっくりした。

 カツカツと靴音を立てて歩いてきたのは、金髪のイケメン。

 その恰好にアタシは目を丸くした。


 王子だ。

 ファンタジー漫画とかゲームに出てくる王子みたいに、マントとなんかそんな感じの服着てる! 剣までぶら下げてるし、オーラもパないし、マジの王子だ!


 もしかして。

 ……これはもしかすると……。

 スマホのコミックアプリで読んだことがある……あの……!


 目を丸くしたまま、ドキドキしたまま止まってるアタシの前で、王子はにこやかに両手を広げた。


「ようこそ、異世界メルファリアへ! あなたは聖女としてこの世界に召喚されたのだ!」


 わーっ!

 異世界召喚キタ――――――ッ!

 コミックで見たやつだ!! 本当にあったんだ!


「マジ!? マジで異世界召喚!? アタシが!? 超ウケるんですけど!!」


「面白い言葉遣いのお嬢さんだね! 非常に興味深いな」


 イケメン王子はキラキラした青い目でアタシを見つめてくる。うわっイケメン視線ビーム。目から好感度のビームが出てる!


「私はアークリンデ北大陸諸国連合議長国、ルクセリア王国のリュミエール王子だ。大陸連合の議長補佐を務めている。以後、お見知りおきを」


「しゅごい……マジの王子様だ……」


 金髪の周りにキラキラの星が飛んでいく。

 だめだ、驚きと感動で頭がアホになってる。ずり落ちたメガネを戻すのがやっとだ。


「ずいぶんな大荷物を持ってきたんだね。ゲンダイ世界からの転移者としては珍しい。旅の途中だったのかな?」


「あ、えっと、家を追い出されちゃって……」


「なるほど、そういうことだったのか」


 王子は優しい声で語り掛けてくる。どうしよう、胸のドキドキが止まらない。


 あのマッチングアプリ、やっぱ神だった。ガチで運命変わったかも。こんなイケメンがアタシを召喚してくれただなんて。


 おまけにコミックによれば、このあとは婚約とか溺愛とかそういう展開になるはずで……。


「おっと、勘違いさせてはいけないので言っておくが、私は君の召喚者ではないよ」


「え?」


 思わず低い声が出ちゃった。


「じゃあ、アタシを召喚したのは?」


「後ろ」


 にこやかに王子がアタシの後ろを指さす。


 恐る恐る振り向いたアタシの目に映ったのは……。


 首元まである真っ黒な服。

 赤い模様の真っ黒なマント。


 手にはゴツゴツした杖まで持ってて、これまた赤く光ってる。

 白い髪の毛は長く、メッシュみたいに一筋の黒髪が流れていて。

 赤い目は不気味に暗くて、ご丁寧に目の下には徹夜したみたいなクマ。


 青ざめた肌の、いかにも「悪役ですよ」って感じの怖いおぢさんがそこに立っていた。


 この感じ! 見たことある!

 お姉ちゃんがお客さんからもらったRPGゲームにいたキャラ!


「ラスボスの悪役皇帝だ―――ッ!」


「誰が悪役だ……!」


 おぢさんは苦虫をかみつぶしたみたいな顔で唸った。






 


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