小学六年生の僕
小学六年生になった。
担任は変わらず昭和先生だった。
一学期の中頃、僕は何度席替えしても隣になる男子生徒に目をつけられていた。
授業中に筆箱を落とされたり、体をつねられたり、落書きされたり。
最初は我慢していたが、一学期も終わりに近づくにつれて段々僕もおかしくなっていき、反撃を始めるようになっていた。
授業中に筆箱を落とされればこちらも落とし返し、落書きされれば落書きし返す。体操着を隠されれば物を隠し返す。
僕の中で出来る唯一の抵抗だった。
しかし一学期最後の日、終業式の終わりに担任に呼び出された。
部屋の中には、僕をいじめていた男子生徒が座っていた。
僕は凄く嫌な予感がして、男子生徒の隣にあった椅子に座った。
開口一番、先生の口から放たれたのは「僕が男子生徒をいじめている」という怒号だった。
いきなり怒鳴られたことに驚き体が固まったが、いじめっ子に反撃出来ていた僕は今の僕なら負けないと思い込んでいたこともあり、必死に潰れた喉を開き、か細くながらも「先にやってきたのはあっちです……」と絞り出した。
しかし、先生にはそんなことはどうでもよかった様で、頑張って絞り出した僕の声をいとも簡単に消し去る声量で「だからどうした!!!」と怒鳴り返してきた。
だからどうしたと言われた僕は完全に日和ってしまい、だからどうしたという問いの答えを真っ白になった頭の中で必死に探し始めた。
しかし、真っ白になった頭の中に答えがあるはずもなく、何も返せないまま一方的に怒鳴られ続け、この時間が早く終わることだけを願った。
30分だった様な、1時間だった様な、はたまた10分だったのかもしれない時間は僕の中ではとても長く感じた。
ようやく終わり、泣いているいじめっ子の背中を擦りながら先生はその部屋を出て行った。
去り際に先生が「本当に自分が被害者なら先に相談に来ていたのは、お前の方だろ。」と言ってきたが、僕の耳はその言葉を脳に伝達することを拒んだ。無意識に自己防衛に走っていた。
この時から僕は、音は聞こえるが内容が理解できない現象が起きるようになっていた。
まるで密閉の箱の中に閉じ込められた様に音が籠って聞こえた。この現象はこの先も僕を悩ませ続けた。
夏休み明け、僕は勿論いじめっ子としてクラスで浮いていた。
皆見ていたはずなのに、知っていたはずなのに誰も僕の味方をしてくれることは無かった。
自然とずる休みする日数が増えていった。元々体が弱かった事もあり、日にちを開けて計画的に休めば親にバレることなく休むことが出来た。
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