第22話 みんなで楽しむ、ということ
「アタシから手番をもらうわね! 神聖魔法の『シールドフィールド』を唱えるわ!」
「いいですね、範囲内にいる対象のダメージを-1点する支援魔法です! 魔法の使用には、まず行使判定を行う必要があります。使いたい魔法系統の技能と知力ボーナスを加えての判定ですね。ピンゾロを出さなければ成功となり、魔法が効果を発揮します」
「それじゃ、行使判定行くわよ! それっ!」
桃の説明を受けて魅美がダイスを振る。
転がったダイスは8の出目を出し、ここにプリーストの技能レベル2、知力ボーナスの3を加算し、13が達成値となる。
「行使成功です。無事に魔法が発動し、皆さんにダメージ軽減のバフがかかりました!」
「『シールドフィールド! さあ、準備はできたわ。みんな、思う存分戦ってちょうだい!』」
「『おう、任せろ!』」
「『っしゃ! ミミちサンキューね! 思いっ切り暴れてやんぜー!』」
生き生きとした表情でRPを決める魅美に触発されたのか、前衛役の二人もやる気に満ちたRPを返す。
「では次、手番貰いますわ。レッドキャップ一体目掛けて『マジックミサイル』を放ちますわ。個体差ないなら適当にAを狙う、と言っておきましょう。行使判定しますわね」
莉々嬢の淡々とした声とともに振られたダイスは、7の出目を出した。
リリィのソーサラーレベルは2、知力ボーナスが3なので、達成値は12となった。
「ダメージを与えたり相手に不都合な状態を付与する魔法は、相手が抵抗してきます。抵抗された場合、ダメージが半減したり、魔法の効果を受けなかったりします。レッドキャップの精神抵抗は10、抵抗突破です!」
「ふふっ、なら魔法は十全の効果を発揮したという事ですわね。このままダメージを出しますわ!」
「では、ダメージの算出です。ダメージの算出には、こちらの威力表テーブルを参照します」
そう言って桃はルールブック上のページを拡大したものを掲げ、みんなに見せる。
「『マジックミサイル』の威力は10ですので、ダイスの出目をこちらの威力表を参照にして算出します。例えば出目で7が出たらダメージは3、ここにソーサラーのレベルの2と知力ボーナスの3が乗るので、最終的に8ダメージが発生する、といった具合です」
「ふうん、振ったダイスの出目をそのまま直接採用するわけではないのですわね。では、早速ダメージを算出しましてよ!」
莉々嬢が勢いよくダイスを振ると、出目は10という数値を叩き出した。
「出目10は……5ダメージ、そこにソーサラー2と知力ボーナス3が乗って10点ダメージ!」
「いいえ、実はそれだけではありません! 威力表を用いての判定には、『クリティカル値』というものが設定されています。出目がこの数値以上だった場合、更にもう一度この威力表を振ってダメージを上乗せする事ができるのです! もちろん、振り足した際の出目もクリティカルした場合は追加振りが発生するので、クリティカルすればするほどダメージが膨れ上がっていきます!」
「成程! 確かに、『マジックミサイル』のクリティカル値は10となっていますわね。振り足しが発生するので、もう一度ダメージを出しますわ!」
莉々嬢は再びダメージダイスを振り、8の出目を出した。
威力表では4ダメージとなる。
「合計14点の魔法ダメージ! さらに、レッドキャップは魔法ダメージが弱点なので、さらに2点が追加され、16点の大ダメージです! これにはレッドキャップは耐え切れず、一撃で倒れます!」
「『おーっほっほっ! わたくしにかかればレッドキャップなんてこんなもんですわ!』」
「『やるじゃねえかリリィ。俺も負けてられないな』」
「『あーしがボコる分もちゃんと残しといてよぉ?』」
莉々嬢の活躍に、前衛組の二人のRPにも活気がみなぎる。
(すごい……流石ね、莉々は。でも、ここではそれが莉々の役割。アタシはアタシの役割をこなせばいい……!)
「今度はあーしの番! あーしのキャラはダガーの二刀流で、二回攻撃ができんのよね! んで、攻撃の命中判定はぁ、2D6とフェンサーのレベルと器用ボーナスね、おけまる! 前線エリアに移動してから二回連続でぶっこむべー!」
とう! と振られたダイスは、一投目が5、二投目が7だった。
それぞれにフェンサーレベルの2と器用ボーナスの3が足され、10と12という結果になる。
「レッドキャップの回避は10、一回目の攻撃の達成値と同じですね。この場合、『受動有利の法則』と言って、判定を挑まれた方が判定に勝利する事になります。なので一回目の攻撃は回避され、二回目の攻撃が命中となります」
「うわぁー、惜っしいなー! 二発とも当てたかった! んじゃダメージね。威力はしょぼしょぼの3!」
「ですが、フェンサーは武器で攻撃する際、クリティカル値を自動的に1低くすることができる……つまり、クリティカルしやすいんです。なので、威力の低い武器でも大ダメージを出せる可能性がありますよ!」
「おー何それ超アガるー! そいじゃダメージドーン!」
テンションテン上げの寧音とは裏腹に、出た出目は6、威力表にして1点ダメージである。
「フェンサーのレベルと筋力ボーナスを加算して、合計4ダメージ! おらぁくらえレッドキャップ!」
「いいですね! レッドキャップの防護点は2点、都合2点のダメージが入ります!」
「やっぱ一発だけしか入らないとダメージしょっぱいなぁー。『カケルス、いっちょ頼んだ!』」
「『おう、任せろ!』ってことで、前線エリアに移動だ。宣言特技の『全力攻撃Lv1』を使用し、ダメージアップだ。更に、サブアクションで『ビルドアップ』を使用、筋力ボーナスを上げて更にダメージを上げる! 行くぞ、ネネチが攻撃した奴に対して命中判定!」
火力をマシマシに乗せた一撃の命中判定は、出目で8を出した。
カケルスのファイター技能はLv2、器用ボーナスは2のため、達成値はレッドキャップの回避を上回る12だ。
「命中です! そのままダメージ算出もお願いします!」
「おう。カケルスの武器はバスタードソードの両手持ち、威力は27だ。ダメージ出すぞ!」
ダイスの出目は9、8点ダメージの出目である。
ここにカケルスのファイターレベルの2と筋力ボーナスの3、ビルドアップでの増加分が2、更に全力攻撃の追加ダメージ4点が合わさり……。
「オラッ、19点だ!」
「お見事です! これにはレッドキャップも耐えられません、真っ二つになって倒れます。では、残り一匹になってしまいましたがエネミーターン、レッドキャップが反撃してきます!」
そう言って桃はサイコロを一つだけ取る。
「レッドキャップは知能が『低い』魔物ですので、攻撃対象をランダムに決定します。この状況で攻撃対象に選択できるのはカケルスとネネチのお二人なので、ダイスを振って奇数ならカケルス、偶数ならネネチを狙って攻撃します。それっ!」
ダイスの出目は1、カケルス狙いだ。
「まずいな、俺は今『全力攻撃』の反動で回避が-2されてる状態だ。回避に期待ができない分、防具で防ぎきれるといいんだが……」
「どうでしょうね。では、レッドキャップがカケルスに襲い掛かります。こちらの命中は10です、回避判定どうぞ!」
「仕方ない、やるか……! 回避はファイターレベルと敏捷ボーナスが乗るんだったよな……」
そう言いながら出た出目は8、ファイターレベルと敏捷ボーナスを足して11になる達成値だが、特技の反動で受けたペナルティによって最終結果は9となる。
「命中ですね。では、レッドキャップの攻撃によるダメージを出します。ダメージは2D6+2点、ですよ!」
振られたダイスの出目は11、つまり13点のダメージがカケルスを襲う。
「GMの出目に殺意を感じるぞ……! ええい、ブレストプレートの防護点で5点、『シールドフィールド』でさらに1点軽減されるから、都合7点の被ダメージか!」
「ですが、これで敵の手番は終了です。少し手負いにはなりましたが、四人がかりであればきっと問題なく対処できるでしょう。さあ、手番どうぞ!」
「『カケルス! 大丈夫!?』」
ミミが真っ先にカケルスに声をかける。
「『大丈夫だ、このくらい平気さ』」
「『……わかった、後で治療するから、無茶だけはしないでね』」
(……やったわ! 今の感じ、結構自然にヒロインムーヴできたわね!)
……などという魅美の思惑はよそに、駆は戦闘モードに入る。
「『ミミは心配性だな。なら、神官様の為にもさっさとこいつを片付けてやるか』。というわけで……最後の一匹に『全力攻撃Lv1』を宣言して攻撃だ!」
カケルスは命中判定で11を出し無事にヒット、ダメージ算出では再び19点のダメージを叩き出す。
「これは一撃ですね……! フィニッシュブローです、何か演出あればどうぞ!」
「ならそうだな……体当たりで相手の体勢を崩したところを、思いっきり袈裟に剣を振り下ろして叩き斬る!」
「お見事! ではその攻撃で最後のレッドキャップが倒れます。皆さんの勝利です! お疲れ様でした!」
「「「「お疲れ様でしたー!」」」」
戦闘を終えた魅美たちの顔は、皆晴れやかだった。
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