第23話 逃げ切ったので家に避難
「はぁ、はぁ。追手が来ないのを見ると、
こういう時はめちゃくちゃ頼もしいな、あいつ。
なんていうんだろう、安心感がすごい。
絶対止めてくれるって気がする。
「とりあえず、その道に入って物陰に姿を隠しましょう」
細い道に入り、物陰へと姿を隠す。
そして、
二人が承認した後、俺はすぐに
十万ルディ……地味に高いな。
「それでショップにある
二人が購入したのを確認して使い方を伝える。
そして俺の家へと飛ぶために、場所を教える。
「じゃあ、先に行ってください。三人が言ったのを確認して俺も行くので」
「分かりました、ありがとうございます」
ポン
三人が
全員無事に移動が完了したことを確認してから、俺も自分の家へと移動する。
「お、来た来た。無事だったようで何よりだ」
「そっちこそ、無事でよかったよ。ありがとな」
「な~に、お安い御用よ」
それに、俺の家に逃げたということ自体分からないはず。
しばらくは安心だな。
「とりあえず、中に入ろう」
「お帰り、
「話は後だ。とりあえずそこをどけてくれ」
机を空けてもらい、
座りたがる
ロバートも素直に椅子を譲ってくれ、そばで聞いていた。
「とりあえず、何から話せばいいか……まぁ、こういうことがありまして……」
父さんと母さん、それに
彼女の家に行ったところ、偶然変な奴がいて、捕まえて話を聞き出したこと。
その話で、彼女が狙われているためここまで逃げてきたこと。
「そういえば
「最初の方に数百人、そのあとどんどん増えてきたぜ。多分もっと増えるだろ」
やっぱり、日本中……いや世界中の人々が彼女を狙っているとみていいか。
でも、おそらくさっき襲ってきた奴らは近くに住んでた奴らだ。
県外や海外は、こちらに来ることはできないだろう。
何せ報酬は三万ルディ。
費用の方が多くかかってしまう。
そう考えると、世界中から彼女を狙う奴らが来る心配はないか。
「三万ルディでそこまでの人が動くか……まぁそうだよな。ダンジョンで十階層をクリアしても、もらえるのは千ルディ。そう考えるとかなりの大金か」
「にしても主犯はなんのつもりなんだろうな。自分で行かずに人を使うなんて。報酬に三万も出せるなら、ランキング上ではかなり上位の人なんじゃないか?」
「引っかかるのがそこなんだよ。なぜわざわざそうしたのか。人を使えば、自分が行くよりも成功率が低いのは目に見えている」
「じゃあ、今回は本命じゃなかったじゃんじゃねーか?」
「……というと?」
「報酬を支払う条件は彼女を指定の場所に連れて行った場合のみ。つまり失敗しても報酬を払う必要はない。もし今回のが彼女の周りにいる味方を確認するためだったとしたら?」
「つまり、主犯はどこかで俺彼女を監視してたってことか?」
「しらね。俺はそう思っただけだ。あぁ、あんまり信用するなよ? 中学のテストが五教科で二百点だった頭だからな」
お、おう……
「まぁ、一つ確実なのは、主犯は彼女の周囲にいた人ってことだ。住所はもちろんのこと、顔写真まで持ってたんだからな」
「あの~ 一つよろしいですか?」
「あ、
「顔写真を持っていたと言っていましたけど、一つおかしくて……」
「おかしい? 写真の写り方がですか?」
とてもかわいく写っていると思うけど……下心とかは無いよ?
上手に写ってるって意味だよ? 勘違いしないでね。
「いえ、娘は写真に写るのが嫌いで、家族でも私と父しか娘の写真を持ってなんです。学校でも、無理を言って写らないくらい、写真が嫌いなんです」
「なるほど……」
そりゃ確かにおかしいな。
というか、言われてみればこの写真も、決してカメラ目線ではない。
ということは……盗撮?
彼女、モテモテだな……いいモテ方ではないかもだけど。
「盗撮となると、思い浮かぶのはあの時の三人……でも弱かったし」
俺が初めて彼女とあった時に撃退したストーカ三人。
その可能性を思ったが、実力から考えて、三万ルディも報酬に出す余裕はないはずだ。
ここ数日で一気に強くなった可能性はあるけど。
「一人だけ、心当たりがある人がいるんですけど……
「お、誰ですか?」
「私の一つ上の先輩に、北見という人がいたんです。ストーカってわけじゃないんですけど、学校にいる間は、しつこく話しかけてきて。卒業直前に告白されたんですけど、振りました……」
「そんな奴がいたのか!? 由井……! 教えてくれれば父さんが何とかしたのに!」
「まぁまぁ落ち着いてください。とりあえず、その人を候補としてみますか」
メニュー画面を開き、ランキングを確認する。
もし三万ルディ払えるような実力があるなら、それはほぼ確実に”黒”だ。
「……候補にはなりそうだな」
「どうだったんですか?」
「
ここではボス階層でなくとも数千ルディを得られる。
周回すれば、ある程度の回数で万単位稼ぐことができる。
「でも、大会には出場してなかったですよ? この順位なら、出ることも可能なんじゃ?」
「出れますね。でも出れなかったんですよ、その時はまだ。俺が大会の時にランキングを確認した際、上位者に日本人はほとんどいなかった。もちろん、一桁の順位に関しては、俺と
明らかに急成長している。
俺の死生剣みたいに、
それならばこの急成長にも説明が付く。
「なら、俺がそいつの所に行って殺してきてやろうか?」
「やめとけ」
「じゃあ、殺さねーなら?」
「そうじゃない。お前は今、一組織のリーダーになろうとしてる人間だろ?」
「それがなんだ?」
「はぁ。いいか? 組織は人々の信頼がないと成り立たないものだ。そして、今お前が殺すといった北見が、この事件の犯人だという確たる証拠はない。そんな中で殺せば、世間からの評価はどうなる?」
「……まぁ、評価は落ちそうだな。でもバレなきゃいんじゃねーか?」
「俺たちが使ってる情報、誰が載せてると思う?」
「そりゃ、世界の誰かだろ?」
「ブー、少し違う。確かに世界の誰かが載せているものもあるが、大多数は未知の力……まぁ、神が作った人工知能とでも言っておくか。その人工知能が、世の中の出来事をまとめ、載せてるんだ。可能性があるってだけだが、もしかしたら載るかもしれない。何せお前は、今最も注目されてる人物の一人なんだからな」
人の評価は、必ずしも全体を見て付けられるものじゃない。
明かされた表だけを見て人を罵倒し、傷つける。
だが裏が公表された瞬間、考え方を変え、そいつを英雄にまで持ち上げる。
そんな世界なんだよ、今の時代は。
「なるほど……確かにそりゃまずいな。やめとくよ。てか、それって結構プライバシーの侵害じゃね!?」
「まぁ、そこは同感だな」
とにかく、今の俺たちにはもっと情報が必要だ。
犯人が北見だという証拠。
それを得るための情報が。
「まぁ、今はまだ動く必要はないさ。なにせ、下手に動けば彼女がここにいるとバレてしまう。今は彼女の身を第一に動くんだ。
「分かった。気を付けるよ。なら俺は一度失礼するぜ」
「しばらくは家の中から出れないな。父さん、確かまだ空いてる部屋があるだろ? 三人を案内してくれ」
「え!? いいんですか!?」
「あなたの家は場所が割れてるし、戻るのは危険です。しばらくはここにいたほうがいいでしょう」
「ありがとうございます!」
さてと、なら俺は部屋に戻って作戦を考えますか。
俺と
だが俺の家は誰も知らないから、ここに来る心配はほとんどない。
というか、
なぜなら大会優勝者、そしてランキング一位に名を連ねる絶対的王者なのだから。
なら今頃、相手は作戦を考え直しているはず。
となれば、今までのように金で人を釣る作戦は不可能になってくる。
そこで計画は頓挫……するか?
もしかしたらやけになって、本人が来るかもしれない。
そうなってくれれば楽だが、果たしてそうも簡単なものか……
「
「いいですけど、足元に気を付けてくださいね」
工具などが散らかっていて、とても危ないのだ。
一応は端にまとめて置いているが、まだ残っているかもしれない。
「おやま三人そろって」
いやぁ、こんな汚い部屋を見られるなんて恥ずかしい……って思うなら片づけとけよって話だな。
「今回は、本当にありがとうございました!!!」
入ってきて一番に、父親が頭を下げる。
それに続き、二人も頭を下げる。
「顔を上げてください! 恥ずかしいので……」
「あなたのお話は、娘からよく聞いていました。危ないところを助けていただいただけでなく、家へと帰るまでの間泊めていただき、さらには帰る手段も用意してくださったと!」
「大袈裟ですよ。それくらいどうってことありません」
「いえいえ、あなたがいなければ、私たちはこうして今三人でいることも叶わなかった。さらには今日の出来事で、娘を失っていたかもしれない!」
あぁ、なんていい両親なのだろうか。
娘への愛が伝わってくる。
俺の両親もそこそこだが、なんか変な方向にいくから、こんな純粋な形の愛情はなんだか見ていて気分が良くなる。
「
「
「まぁ……愛情を注がれてるのは分かりますけど、とにかく夫婦喧嘩が……」
それで思い出したのか、
笑ってやってくれ、あんなえげつない夫婦喧嘩、めったに見られないぞ。
「まぁとにかく、俺はあなたたちの幸せを守りたい。何があっても、俺が守りますよ」
そういうと
ん? 俺なんか変なこと言ったか?
「ありがとうございます」
「任せてくださいよ」
そうして三人と少し話をした後、ご飯の時間になったので全員に食事代を送金した。
美味しいご飯は、人生を楽しむ手段の一つなのだ。
楽しめるときに楽しまないと、もうその瞬間は来ないかもしれない。
少なくとも、俺の前にいるときは幸せでいてもらいたい。
「じゃあ、いただきます」
「いただきます!!」
俺と両親、ロバート、
計七人で机を囲み、それぞれが購入したご飯を楽しんだ。
少し窮屈だったけど、とっても楽しい食事になった。
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