第11話 戦いを制した者
ドンドンドンドンドン!!!!
死生剣を一度しまい、両手に旋弾銃を構える。
相手の
下手に剣で攻撃するより、二丁で遠くから弾丸を撃ちこみ続けたほうがいいと考えたのだ。
まぁ、今のところ一発も当たってないけど……
「……厄介だ」
彼女がポロリと言葉を漏らす。
厄介だと思っているなら、せめて一発は当たってくれ!
なんで全弾……しかも二丁分の弾丸を槍で防ぎきれるんだよ!!!
「……剣をしまわない方がよかったんじゃない?」
そういって、
だが、そんなに近づいても槍は使えない……は!?
長い武器である槍はその長さ故に至近距離では使えない、そう思っていたが、なんと彼女は槍の先の部分を握っていた。
まずい! これなら槍を相手に突き刺すことができる。
「心配してくれて……どうも!!」
突き出された槍の先端部分を、銃身で止める。
そしてもう片方の銃口を彼女の頭へと向け、発砲する。
ドン!
発砲したとともに、視界から彼女が消える。
下!!
反応したが、彼女の方が速かった。
「おわ!?」
下から強烈な蹴り上げを繰り出し、俺の手から銃を吹き飛ばす。
そしてすぐさま距離を取り、槍の持ち方を直す。
「この距離は私の世界だよ」
そう言って、こちらへ槍を連続で突く。
速い速い速い!!!
『動視アップ』でも完全には捉えきれない、まさに異次元の速さだ。
「いった……」
やっぱり、完全にはかわしきれなかったか。
左肩に一撃、しかも地味に深いのをもらってしまった。
手は……ギリギリ動くか。
でも、力が入りにくいし、細かい動きができない。
いや、左肩なだけまだマシだ。
右だったら、剣が使えなかった。
とはいえだ、この状況はマズい。
今、俺と彼女の間には、ある程度の距離が出来ている。
銃を使うことはできるが、この距離ではすぐに詰められてしまう。
だが、剣を振るには遠すぎる。
頑張って振っても、惨めに空気を斬るという、恥ずかしすぎることになってしまう。
だが逆に、相手からすればこの距離は好都合だ。
相手は剣を使えず、銃を構えれば距離を詰めればいい。
そして何より、この距離なら槍の能力を最大限に活かしきれる。
ほんと難しいな、人との戦いは。
モンスターみたいに、本能のまま突っ込んできてくれれば楽なのに。
「仕方ない、次で決められなかったら俺の負けだ」
俺が勝てる唯一の距離、それは至近距離だ。
遠距離では、槍こそ当たらないが、こちらも銃しか使えない。
銃は相手にすべて防がれてしまうため意味がない。
なら、槍の本来の能力を活かしきれない、かつ攻撃が通る可能性がある剣が使える至近距離で勝負を決める!
近づくのに『不可視』は使えない。
『不可視』は、斬り合う時に使い、少しでも勝率を上げる。
見えない攻撃は防ぎようがない……そう信じるぞ。
左手に銃、右手に剣を構える。
銃は連続で引き金を引けない、さっき受けた肩のせいで。
近づくまでの
決められなかったら負け、このすべてに集中しろ。
帰ったら報酬金でパーティーでもしようぜ!
「よっしゃいくぞぉぉぉ!!!!」
わざわざ相手に仕掛けることをバラし、俺は突撃する。
ドン……ドン!
二発の弾丸を
彼女は予想通り、一瞬意識が弾丸の方へと向く。
弾丸を撃ち落としたため、彼女の体制はまだ完全に俺を狙える状態じゃない。
対して俺は、もう剣にすべての力を乗せ、攻撃の構えをしている。
「終わりだぁぁぁ!!」
「う……うぅ!」
彼女は不完全な体制ながらも、槍で剣を受けた。
だがな……もう俺はこの攻撃に全部賭けてんだよ!!!
「貫けぇぇぇぇぇ!!!」
パキパキ
相手の槍の刃に、ひびが入る。
対して固有
バキバキバキ
ひびはどんどんと広がり、ついに限界を迎えた。
ビー!!!!!
大きな警報音と共に、お互いが入口へと戻される。
「試合が終了しました。勝者、高橋輝!」
「よっしゃぁぁぁぁぁ!!!」
心の底から喜びの声を上げた。
何度も飛び跳ね、喜びを表現する。
何とか勝った……本当に、何とか……
パチパチパチパチ!!!
「すげぇ!」
「めっちゃ興奮したぞ!」
「異次元すぎる!」
会場内から、様々な歓声が上がる。
「二回戦突破おめでとうございます。流石、強かったですね」
悠がこちらへと歩いてきた。
「”今回”は、俺の勝ちですね」
「えぇ、でも次は勝たせてもらいます! それにしても、楽しかった。あんなに本気になったのは、人生の中でも初めてかも」
そういう彼女の目は笑っていた。
息切れしながらも、とても満足そうな表情を浮かべて。
「そういえば槍、壊れちゃいましたけど直るんですか?」
「ん? 大丈夫、道具を使ったら直りますよ」
ならよかった。
もし、彼女の武器を壊して、直らなかったら、俺は結構心にダメージを負うところだった。
あれ? そういえば試合で俺が受けた傷も、治ってるな。
その後は再び、待機室で待機させられていた。
だがまぁ……お菓子がおいしいから許してやろう(現在、三食団子十本目)
ちなみに悠さんとは待機室が違ったから、話すことはできなかった。
ただ代わりに……
「おい! あんた高橋さんだろ!? すげぇ強いんだな!」
……っと、同じ待機室にいた人からひたすらに声を掛けられ続けた。
嬉しくはあったが、全員が一斉にしゃべるもんだから、何を言っているのか、誰の質問に答えればいいのか分からない。
まったく……俺は聖徳太子じゃないっての!
そうこう話しているうちに、もう全ての第二試合が終わった。
この会場から代表として出るには、あと三回勝たなきゃいけない。
まぁ、この会場にはもうレア武器所有者はいないから、楽に進められるだろう。
「第三試合のトーナメント表が発表されます。確認してください」
対戦相手は……まぁ、当然知らない人だ。
(弾薬五百発 百ルディ 購入を確定しますか?)
はい
さっきの試合で、弾薬をまぁまぁ使ってしまったから今のうちに補充しておかないとな。
試合中に弾薬切れです! とかなったら嫌だし。
「これより、第三試合を開始します。選手 高橋……」
あ、もう始めるのか。
よっしゃ! ここからはもう勢いに乗っていこう。
「開始!」
そこからは、特に何も問題なく勝ち続けた。
ただ、おもしろい
欠点として、一時的にとても狂暴になり、理性が薄れてしまうこと。
ただうまく使えばとても強力な能力なことに変わりはない。
「本会場からは、高橋輝選手が二日目へと進みます。 盛大な拍手を!」
パチパチパチパチ!!
アナウンスの声で、再び会場内に大木は拍手が響く。
「武闘大会一日目は、これで終了します。選手の皆さんお疲れさまでした」
そうして、全員が元居た場所へと戻された。
家へと戻ったことを確認し、辺りを見渡すと、父さん、母さん、梅田さんも戻ってきていた。
「はぁ~ 疲れたよ!」
「お疲れ様! とってもすごい戦いだったぞ! 特に二試合目なんて、父さん緊張でで心臓が破裂したぞ」
「じゃあ、さっさと成仏してくれ」
「冷たい! 親なのに冷たい!」
「はは、じゃあ腹も減ったし、温かい食べ物でも食べようか」
「
「今回の五試合で、報酬金五十万」
「ご、五十万!?」
「あぁ。さあみんな座って、ほら、梅田さんも」
「私もいいんですか!?」
「当然じゃないか。応援もしてくれたんだし、好きな物食べよう」
「ありがとうございます!」
この日の晩御飯は、とても賑やかなものになった。
父さんが酔っ払って、自分の黒歴史を公開しだしたから、何やってんだと呆れたが……
久しぶりに腹いっぱい食べたし、今日の疲れに見合ったご褒美じゃないか?
ピコーン
「……ん?」
「がぁぁぁぁ……ごぉぉぉぉ!」
酔いつぶれて眠ってしまった父さんのいびが、家中に響く。
まぁ、久しぶりの酒だったんだろうし、許してあげよう。
梅田さんにも、母がごめんなさいね、と苦笑いしながら言っていた。
ただ、こんな光景が今になって幸せに見えてくる。
今までずっと、当たり前に見ていた光景なのにな……
「みんな、今日はもう遅いし寝ましょう。父さんのいびきがうるさかったら、言ってね」
もし言われた場合、父さんはどうなるんだろうか……
ちなみに、俺が中学の時に父さんのいびきに文句を言ったところ、父さんは布団を詰めたカゴに入れられ、外に放り出されていた。
「じゃあ、おやすみ~」
そういって部屋に戻ったが、まだ俺は寝ない。
実はさっきの食事中、悠さんから連絡が来た。
だが食事中だったため、少し待ってくれと言ったのだ。
(話せますよ)
(通話でいいですか? まだ文字を打つのに慣れなくて……)
(分かりました。 通話でいいですよ)
ブゥン、ブゥン
すぐに着信が来た。
通話もできるなんて、本当に便利だな~ このメニュー画面。
「おはようございます、お時間いただいてすみません」
「こんにちは? こんばんわじゃなくて?」
「あ! そっちはもう夜なんですね」
「そっち?悠さんは、日本にはいないんですか?」
「はい、親の用事で、アメリカにいるんです」
「へ~ 英語分かるんですか?」
ちなみに俺は、中学の定期テストで二十五点という、圧倒的点数をたたき出した。
ハウ アー ユー(調子はどうですか?)と聞かれても、急には答えられないくらいには英語が苦手だ。
「こっちに来たのも、一か月ほど前ですからね~ ほとんど分かりませんよ」
「あ、意外と最近なんですね」
「でも、行けるようになったら日本に帰ろうと思っているんです。仕事の意味がなくなった今、両親もアメリカにいる意味は無いですし、やっぱり、生まれ育った場所が一番体に馴染みます」
「今のところ、移動手段を
「ショップには、かなりの頻度で新しいものが追加されてますから、そう遠くないうちに出るはずですよ」
「そうですね、楽しみです」
移動手段が出れば、梅田さんも家族の元に戻れる。
一日でも早く、そうなってほしいものだ。
「あ! 話が逸れちゃいましたね。それで、あの時言っていた話の続きはなんなんですか?」
「そうですね、その話のために時間を作ってもらったんでした。この世界、いずれ誰が管理すると思いますか? 今まで国を支えていた政治家たちは、もういない。いたとしても、恐らく国を成り立たせられるほど国民が従順に従うとは思えません。何せ、力があれば生きていけるんですから」
「あの時言ったように、僕は力を持った人が管理すると思ってます。」
「まだ先のことだとは思いますが、一応あなたには知っておいてほしいと思ったんです。現在ランキング一位の優、恐らく彼がその動きの先導者となります」
「優が?」
「あくまで予測なので、頭の片隅にでも置いておいてください。ただ、忘れないでください。そしてそうなった場合、多分私たちが一番に狙われる」
「邪魔だから……ですか」
「えぇ、私たちを倒せば、もう完全に彼を止めることのできる人はいなくなる」
「大丈夫ですよ、俺は優になんか負けません」
正直、かっこつけた。
勝てるか勝てないかで言うと、多分勝てない。
でもかっこつけちゃいました、僕も男子。女の子にいいところ見せたかったんです。
「高橋さんなら、確かに大丈夫かもしれませんね」
意外にも、彼女は笑った。
まぁ、それが本当に俺が負けないと思っているのか、冗談だと取られているのかは知らないが。
「あと、一つお願いしてもいいですか?」
「まぁ、僕にできることなら」
「明日の大会、私も観客として登録してほしいんです」
「そのくらいならできますよ」
「ありがとうございます!」
「ではまた。おやす……いや、そっちはこれからでしたね」
そういって、通話を終えた。
え~っと、悠さんを登録っと。
(登録が完了しました)
よし、寝よう!
明日は、今日を勝ち抜いた十五人の戦闘。
悠がいないとはいえ、レア武器を持っている人は、俺を除いてあと三人いる。
そして、必一回以上、そいつらと戦わないといけない。
う~ん、若干憂鬱だ……
まぁ、やることは一つ、勝つだけだ。
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