1209 だんまりベルアテンダント
「あんれ、
顔を上げた九十九が突然、声を上げた。
視線の先を追った柚葉は危うく、すいとんを詰まらせそうになる。椅子ごと後退り、鼻と鼻がくっつきそうだった少女と距離を取った。
猫のように目を細めた少女はほんのりと笑みを浮かべて、九十九の背に隠れる。
「いくら新入りが気になっちょるいうても、驚かせたらあかんよ」
たしなめた九十九に対して、零は反省した様子はない。下唇に人差し指を当て、甘え顔をする。
渋面の九十九は開いた口を一旦閉じ、へいへいと肩をすくめた。柚葉に視線を寄越した後、へぇいと至極面倒くさそうに応えて頬杖をつく。
「これは零。案内係しとるやっちゃ。おらと一緒に柚葉の面倒見ることなったき、よろしゅうな」
「あの、もしかして、零さんは話せないんですか」
二人の会話がなかったので、柚葉は遠慮がちに確認した。
九十九はあどけない顔に不釣り合いな皮肉のこもった笑みを浮かべる。
「零は話せるもんが限られとんよ」
柚葉は慎重に頷いた。どう応えるべきか悩んでしまう。
「わからんかったら、わからん言うたらええけぇ。てげてげに気張りぃ」
「……てげてげ?」
困惑した柚葉を見た九十九が零を振り返る。
けらけらと笑う少女をひと睨みした少年はほどほどやと付け足した。
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