第7話 成瀬は天下を取りにいくは、誤読で評価された。
この作品、誤読がスタンダードのようです。成瀬は自由、好きなことを実行する、縛られない、すごい能力の持ち主、他人の目を気にしない。でも、これは完全な誤読です。これは誤読が悪いのではなく表層のエンタメ性と含意・行間の2重性ですので、意図された誤読ですが、それで終わるのはもったいない話です。
1話の大津西武の話。これは成瀬にとって西武というのは心のよりどころであるという話です。だから、祖母の葬儀の話が出てくる。つまり西武=祖母なのです。おそらく両方とも大好きだった。
ただ、祖母の病気と向き合えない。だから、テレビに映るというごまかしと同時に、心の整理をする。祖母の葬儀で行けないかもしれないというセリフ。つまり、祖母が死んだことで心の糸が切れかける。ただ、TVに映ることを祖母が喜んでいたと知って、祖母の鎮魂として出ることにする。こういう構造です。
そしてM1の話。これはプロと素人の違いの話。いくら成瀬がすごくてもしょせんはローカルのすごさ。成瀬というのは平凡の中のすごい人という話になります。
次が突然の全く違う人たちの同窓会の話。これは他人の理解、行動の真意はわからない。わかるとしても時間がかかるという話です。また、思い出の場所に集まるのは終わりの時であるという、現実と思い出の接点の話でもあります。
成瀬の髪の毛を丸めた話。これは実験と言っていますが、島崎と違う高校にいった失意です。要するに振られたから気分をどうにかしたかったというのを実験という言い訳をしているのです。
また、髪の毛がゼロになる。新しい時間の始まりです。大貫という女子と出会いますが、この時はコミュニケーションはゼロ。表層でしかお互い見ない。ただ、後ででますが、2年生の後半になって、大貫が成瀬の髪を見て、似合ってないから整えろという。これが心の距離と時間の経過の意味になります。同時に島崎は不満になる。これは逆に2人の別離の時間の象徴です。
成瀬は東大や京大を目指します。短歌、けん玉、西武のTV出演。これらに比べるとまともになります。これが成瀬の髪を整える行動と合わさって、成長ということになります。
いままで一人で行動していたのに、部活でかるたを始めるのも、寂しさでもあるし一人での活動の限界を表しています。
成瀬が告白されて動揺して断るのは、つまり他者の理解をするには、成瀬には時間がかかるということです。
一方で、自殺を止めるときにもめた。あれも告白した男性が近くにいる安心で出来た行動です。つまり、この時点で成瀬は一人では何もできなくなっていた。
最後、島崎との別離です。成瀬のアイデンティティは、大津であり、西武であり、祖母であり、島崎だった。それは小学校から高校時代の成瀬の核です。ただ、それはいつかは終わる。祭りがあれば、また集まれる。それは希望でもありますが、祭りがなければ集まれないという現実でもあります。
つまり、成瀬の弱さ、支えてくれるいつものものが失われていく故に成長しなければならない、人間関係を広げなければならない、誰かに頼らないといけない、という話です。
この話、実は「涼宮ハルヒの憂鬱」とそっくりな構造と精神性です。ハルヒは強いのか。弱いゆえに特別でありたいのです。本当は仲間や居場所が必要だと。だからSOS団ができると性格も行動も変わる。これと表現は違いますが、成瀬は全く同じことを言っています。
30歳を過ぎてもアニメ・小説・コミックを楽しむための考察 @kuro_shiro_kuro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。30歳を過ぎてもアニメ・小説・コミックを楽しむための考察の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます