第5話
絶望と共に目覚める
おれは派遣労働者だ。
朝5時半、まだ空は薄暗い。派遣会社の寮のアパートの下にマイクロバスが止まっている。準備をして部屋を出る。
4階から階段を降りてバスへ乗り込む。憂うつを吐き出すように見なれた顔の運転手にあいさつをしていつもの座席に座る。
扉が閉まりバスが動き出す。
行き先は某大手半導体製造工場だ。
バスの車内を見渡してみた。いつもと同じメンバーが乗っている。中年もいれば若者もいるが、みんなどこか諦めたような目をしている。5、6人乗っているが言葉を発するものはいない
みんなスマホをいじったり窓の外を眺めたり、目をつむったりしている
独特の緊張感と憂うつを乗せたバスは今日も現場へと労働者を運ぶ。
この生活ももう一年くらいになる
夢も希望もなく毎日決められたことをしてただ感情を殺して1日が過ぎるのを待つ
今日も絶望をなれてしまったカフェインでかき消す
将来への不安や焦りで頭が痛くなって吐き気がする日が何度もあった
昼勤と夜勤の交代勤務。4勤2休の12時間労働だ。
生活リズムが不安定で自律神経が乱れたのもあると思う
寿命を削っていると思った
だがここにいる人たちはみんな現実を受け入れていた
生活のために夢や希望をもつことをあきらめていた
噂ではたまに派遣先に正社員として雇用される人もいるみたいだがかなり狭き門だ
100人に1人もいないんじゃないか
並大抵の努力じゃない
おれには捨てきれないプライドがあったから毎日悩んで苦しかった
幸せになりたかった
派遣元の管理者に苦しみを打ち明けても相手にされなかった。
奴らはおれたちにただ毎日現場に行って最低限の作業をさせればいいと思っている。
それが管理者の役割だ
おれたちの将来なんぞどうでもいい。
おれみたいな扱い辛いやつは嫌われる
派遣先の社員さんに相談してもは気持ちはわかってもらえない
それはそうだ。所属している会社もやっている業務内容もなにもかも違う
休日に買い物に行く途中公園で遊ぶ子どもと家族をみかけた
ふと自分にもそんな時期があったなと思った
今まで抑えこんでいたものが溢れて止まらなくなった
グッピー ぎがじん @gigajin
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