第8話 エリーゼ VS 大和
『マジックバトル! レディィィィィィ・ゴォォォ!!』
開始の合図が鳴って、エリーゼと大和は同時に動く。
互いの間合いに来た。
互いに武器を振るう。
刃と刃が打ち合って金属音を鳴らし、火花が散った。
斬撃を打ち合いで防ぎ、初撃はお互いに無傷。
武器同士が弾かれる。
だが、大和は踏み込んだ足を軸にして回転した。
「【
弾かれた勢いと回転の力を乗せた、斬撃を繰り出す。
「舐めないで!」
彼女は襲い来る刃を炎の剣で受け流して、追撃で振り回して攻撃。
だが、彼はそれを予測したように、次の技を繰り出す。
「続けて【
大和は迫る剣筋を上手く逸らした。
さらに間髪入れずに、次の技を発動させる。
「【
足裏に魔力を宿して踏み込んだ。
「ぐっ」
周囲が陥没してエリーゼに加重がかかる。
重力操作による拘束技だ。
「焼け。紅蓮王!」
彼の愛刀がリィィィンと涼やかに鳴り、紅蓮を発現させる。
そのまま、火炎の刃で斬り上げた。
火炎が彼女を飲み込み、斬撃で切り裂かれる。
「こんのぉっ!」
エリーゼは風の魔法弾を手前で弾けさせ、その風圧と自身の脚力で強引に加重力圏内を脱出した。
二人の距離が空く。
「おお! すっげぇ!」
俺は感動した。
ここまで息つく間もない攻防。
「確かに、あの二人強いっす」
クリキチも頷く。
周囲の生徒も拍手を送る。
だが、まだ勝負は始まったばかり。
俺は激しい戦いの予感に心を躍らせた。
■□■□
エリーゼの体には火炎の軌跡が走っていた。
ソウルバトルは死なないだけで、痛みや衝撃は本物さながらに感じるルールである。
彼女に刻まれた裂傷は、熱を持ち焦げていた。
「ふーん。やるじゃない。重力属性と風属性。それに刀の火属性で三系統魔法士かしら」
エリーゼは獰猛な笑みを浮かべて言う。
大和は刀を構えつつ言った。
「半分、正解だ」
その通り。彼の属性はそんな簡単な話じゃない。
このイベントでそれを披露して、勝つのが今回のシナリオだ。
いつ、御開帳するのか俺はワクワクした。
「探り合いはここまでよ。覚悟しなさい!」
短い打ち合いで、エリーゼは大和を強敵と認めた。
彼女は自身の魔力を解放。
彼女の後ろに異形の女性が現れる。
大きい。
全長は十五メートル。
肌の色は大理石のような白。
顔は目から鼻にかけて、夜会用の仮面で覆い、唇は血のように赤い。
長い髪はエリーゼと同じ白金色。
体を七色の布で覆い、背中から右に五枚、左に四枚、計九枚の非対称な翼が生えていた。
「天使の【
大和は降臨した天使を見つめる。
「凄い。あのお姫様、【
クリキチが驚く。
俺も現実で初めて見た。
【
魔力の質、量は人によって違う。そのため現れる【
出現する形、色、濃さ、大きさなどで魔法使いの力量を知ることが出来る。
エリーゼの【
正真正銘、一流の魔法使いである。
「【ハイランク】クラスなのは間違いないか」
大和は刀を構え直す。
さぁ本気の彼女を前にしては、さしもの主人公も気を抜けないだろう。
「さぁ、行くわよ!!」
エリーゼは剣に魔力を宿して振るう。
「ラアアッ!」
裂帛の気合で、幾つもの光る三日月状の刃が現れて飛んでいく。
それは光の魔法による斬撃。
さらに四枚の魔法陣を展開して火、土、水、風属性の魔力光線を発射。
大和は前方に風の障壁を展開して防御。
「残念。甘いわね!」
斬撃と光線がバラバラに分かれ、障壁を避けて縦横無尽に襲い掛かった。
大和は重力操作で斬撃を反らし回避。
光線は刀で弾く。
攻撃は防いだ。
だが、それは足止めだった。
本命は突貫による間合い詰め。
エリーゼの刃が襲い掛かる。
「せやあああああああっ!」
跳躍して、空中から強襲。
魔法光線が大和の脳天を狙う。
息つく暇もない連続攻撃でエリーゼは戦場を舞う。
大和はその猛攻撃を傷つきながらも、受け、捌き、避け、防ぎ、逃げる。
同時に土属性で植物を体に生やして、傷を治癒させる。
斬られた傷が見る見るうちに癒えていった。
「へぇ! 貴方も治癒魔法が使えるのね!」
エリーゼは大和の力を見て笑う。
「何だと?」
大和は疑問を口にする。
その答えはすぐにわかった。
エリーゼの体に走っていた傷口が回復していく。
「面倒だオイ!」
光魔法による治癒再生。
これ一つならば驚かない。
驚愕なのは治癒だけでなく、複数属性による攻撃、闇属性による自身の防衛を同時に並行して行っていることだ。
とてつもない魔力コントロール。
例えるなら自転車に乗りながら、片手で料理を作り、もう片方で絵を描いているようなものだ。
別系統の魔法を同時に三つ以上展開している。
異次元レベルの制御能力。
普通は脳みそが茹って壊れる。
さすが、センターヒロイン。
その強さはゲーム中でも現実でも最強クラスだ。
「ほらほら、どうかしら?」
火炎の剣が大和を焼き、連撃が飛ぶ。
連撃の隙は無詠唱で放つ光線が埋める。
エリーゼが地面を踏み砕いた。
砕いて出来た無数の石を、土魔法で制御して発射する。
さらに風属性による大気の操作で大和の体勢を崩す。
そこに十一連の突き技を繰り出した。
完全に捕らえた攻撃。
石と突撃、魔法光線が逃げ場なく襲い来る。
そう、ここだ。
俺が大和なら、ここで魔力を全開にして、本気を出す。
大和はまだ本気じゃない。
いけ、そこで出してみろ。
だが、俺の期待を裏切るように。
「ぐあああああああああああああ」
モロに食らって大和は吹き飛んだ。
『BATTLE・OVER BATTLE・OVER Winner・エリーゼ!』
無常にアナウンスが鳴って、試合が終了した。
え?
え? ちょま。
「
俺は混乱のまま叫ぶのだった。
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さぁシナリオが崩れ始める。
それにしてもバトルシーンって書くの難しいですね。
ちょっと試行錯誤です。
読んでいただき、ありがとうございます。
よろしければ応援、★評価、感想などいただけましたら幸いです。
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