第4話 それはそうとして、現状把握しないと
エリーゼの宣言から暫く。
俺はとにかく状況把握に努めた。
自分が置かれている立場や環境。
とにかく情報を手に入れなければ、うっかり死ぬことになる。
「桜雅さんはそういうキャラクターだからな」
分かった事は、やはり俺は鬼咲桜雅になっていること。
そしてこの世界が学ストの設定に則ってること。
俺はマンションで一人暮らしだ。
両親は海外で働いている。
折り合いは悪くないが、あんまり干渉してこない親だ。
兄弟姉妹はいない。
親戚その他は交流がない。
つまり完全に一人だ。
「なんてエロゲーらしい好都合な設定、もとい環境だよ」
桜雅さんは主人公ではないので、あんまり設定が開示されていなかったから、分かった時は驚いた。
あと、お金持ちだった。
親からの仕送りがあり、毎月結構な額が振り込まれている。
家賃に光熱費、食費や諸経費などを抜いてもまだビックリするほど余ってる。
これなら当面の活動に支障がないだろう。
「まぁでも、この世界。金があっても力がなければ死ぬからなぁ」
この世界で生き残るための手段。
つまり戦闘力を調べるのに手間取った。
この学ストはアドベンチャーパートと戦闘パートに分かれる。
戦闘パートはオーソドックスなコマンド式だった。
鬼咲桜雅というキャラは序盤でも終盤でも、かなり強いキャラクターとして設定されていた。
「ゲーム的な世界じゃないから、お手軽にステータスやレベルが確認できるわけでなし。こればっかりは実戦か何かで確認するしかないかぁ」
体感的になんか強い感じがするってだけだ。
一応、前世じゃできないようなアクロバティックな動きがホイホイ出来てしまう。
魔法は法律で禁止されてるから、街中でぶっ放せないので、おいおい確認するとして。
結論。
自由に生きれて、お金に苦労せず、運動神経抜群。
体格はたくましく健康的と。
これは設定盛り過ぎて、都合がよすぎますねー。
もう一度、設定を見直してみましょう。
なんて、ツッコまれるぞコレ。
流石、桜雅さんだわ。
俺の想像を軽く超えていく。
「これなら問題なく活動できるか?」
俺は買ったばかりのパソコンを使い、画面を眺める。
そこに映っているのは、俺が調べた内容をまとめたデータだ。
「この辺は設定資料と違わないな」
鬼咲桜雅はネタキャラクターとして有名だが悪役だ。
この手の学生キャラにありがちな、過去の交友関係や犯罪歴についても調べた。
どうやらヤンチャだったことは確かで、ケンカに明け暮れていたようだ。
特に中学時代はこの物語の主人公と戦って、負けた経歴を持つ。
それ以来、主人公をライバル視して度々、突っかかってるようだ。
「桜雅さん。ボッチだったんだなぁ」
いわゆる不良かと思えばそうでもなく、一匹狼なスタイルを貫いていて、悪そうな人間と付き合いはない。
唯一、付いて来てくれるのはあの少女、クリキチだけというわけだ。
「まぁこれなら好都合だ。過去のやらかしで、うっかり死ぬことはない」
昔の女が出てきて、刺されて死ぬなんて事はなさそうだ。
このキャラならあり得る死に方だからな。
なにせ、ボー●ボの「殺してやるぞ、と●ろ天●助」構文よろしく、なぜか流れ弾で死ぬパターンもあるからな。
油断ならない。
次に今後の活動についても考える。
「開幕のイベントがあったから、まもなくエリーゼが主人公『
俺は独自に作ったタイムラインを確認する。
記憶は薄れていくからな。
覚えているイベントを可能な限り、書き出して保存した。
つまり、この世界で起きる予言の書だ。
世界観的には、ちょっとシャレになってない物なのだが仕方ない。
うっかり流出しないように管理はしっかりしよう。
特に各ルートでラスボスを務める奇人、変人、変態たちに渡れば大変なことになる。
「予言の書は置いといて、現在はまだ共通ルートの範囲内だ」
戦闘パートのチュートリアルイベントである、あの決闘イベントを起こさないと諸々の話が始まらない。
「おそらく必ず起きるが、俺が動かさないと進まない話だった」
ゲーム中の物語では、桜雅さんはそこで登場するのだから。
「よーし。いつイベントが起きてもいいように、エリーゼの周りにいよう。楽しみだぜ」
というわけでワクワクしながら、俺は活動を開始した。
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学ストの主人公はもうちょい先で登場します。
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