分かった顔をした

「もう、もうやめてくれ!金は沢山あるから!誰にも言わないから!」

 ナイフをそいつの体に見えなくなるほど沈ませるとやっと黙ってくれた。やっとこの日々が終わると思うと、清々しい気持ちになった。だが、怖くもある。その時、知らない人からメールが届いた。

「次は鳥羽火鶴です。」

 それだけ書かれていた。親友だ。もしかしてこのループが次火鶴に変わるのだろうか。謝らなければ。不思議なことに頭が全く回らない。急いでキャリーケースに入れた。

 ここから先を俺は知らない。とりあえず今夜、深夜バスで函館まで行く。はっきり言ってどうすべきかなんて分からない。でも、とりあえず逃げたかった。コインロッカーにキャリーケースを入れる。手ぶらになって少し安心したのか、お腹が空いた。いつも食べるハンバーガー屋に行った。ゆっくり食べた後、立ち去って服でも買おうと思った時、見覚えのある顔が見えた。

「ごめん火鶴。もう何周もしてるんだろ。」

「やめてよ。そんなこと話に来たんじゃないんだ。詐欺師はどこにいるの?」

「なるほど、全部聞いたんだな。何するつもりか知らないがやめてくれ。」

「こいつの上で繋がってるヤクザの事務所に行って放火してくる。そこに一緒に置いてくる。」

 すっかり知らない顔になった友に少しがっかりした。覚悟を決めたんだろう。運命とは残酷だ。

「なぁ、終わった後上野駅で集合しよう。函館までのバス。2席取ったんだ。一緒に来てくれ。」

「あぁ。ありがとう。」

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