朝を待っていよう。

シーツを握りしめながらずっと泣いていた。親は放っておいてくれた。人を殺すこと。すっかり顔つきの変わった友達。妹を叱る母親の声。枕の中に言葉をいくつも隠した。この日々から逃げださなくちゃ。そうだ。楽に会いに行かなきゃ。一緒に探すって言ったじゃないか。明日は会いに行こう。絶対に見つけるんだ。この日々から抜け出して、楽と一緒にどこかで暮らそう。遠い国とかに行ってでも。考える時間が増えて良い事は無かった。嫌な事しか考えられなかった。いつかは人殺しと化すのだろう。それならば早く、覚悟を決めなくちゃ。その時、母親がノックをして部屋に入ってきた。

「お父さん。今日帰ってこれないんだって。残業があるって。大変なんだね。」

 こんな会話これまでした事がない。ずっと部屋にこもっていたからだろう。学校に行けと促すつもりなのだろうか。お父さんが頑張っているのだからあなたも頑張りなさいだとか。

「あなたが何に悩んでいるのか。打ち明けて欲しいなんて言わない。1人で考える時間も大事。ただ、私達はどうなっても貴方を尊重する。その気になったら話して欲しい。ごめんね。上手く伝えられなくて。」

「ねえ、母さんは自分か他人、どっちの方が大事?」

「他人かな。少なくともそうありたいと思ってる。」

「ごめん。ちょっと出かけて来るね。」

 僕は家を勢い良く飛び出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る