夜更かしでもして
「解けるんだろ?頼むよ。教えてくれ。」
「何を聞いても、驚くなよ。」
静かに頷いた。今はただこの日から逃れたい。だが少しだけ、嫌な予感がした。たった数日のはずなのに、2人とも大人びている。
「人を殺すことだ。」
嫌な予感が的中した。親友は人を殺していた。急に辻褄があった気がする。東京に来ていた意味が何となく分かる。怖くなった。これから人を殺すのか。
「殺したの?」
「路地裏で1人、ね。13年かかったんだ。まだ警察には見つかってない。老人相手に詐欺をしている男だった。でもやっぱり罪悪感は残ってる。あの感触は忘れらんないね。」
「それ以外の方法。出来ることなら探したい。」
「君がそうしたいなら、僕は付き合うよ。僕からしたら1日だしね。僕の今日やった事。全部教えるよ。場所を移そう。ここじゃ落ち着けない。」
それから僕らはカラオケに行ってたまに歌いながら、少し雑談しながら、楽しい時間を過ごした。何年ぶりか。心の底から楽しめた気がする。
「俺さ、3ヶ月ぐらいカラオケに通って歌上手くなろうとしたんだよね。1週間で辞めちゃった。」
「僕はプールに行ってクロール練習したな。ちょっと泳げるようになった。」
「良かったじゃん。お前プールの授業めっちゃ嫌いだったもんな。」
「苦手なのは変わんないよ。多分この生活が終わっても、お前より遅いと思うよ。」
「なんか、今がずっと続けば良いのにな。まだ話したいことがたくさんある。でもここの記憶は残らないって分かってるのに。」
もう11時になった。あと1時間であのベッドの上だ。何も出来ない、10年経って罪を一生背負う覚悟も出来ていない。どうしようもない。仕方ないとかそんな言葉ばっかり頭の中にある。こんだけ言っておいてそんな事するくらいならこの日が続く方が良いと思っている。そして人を殺してもその後にはいつもの日々がある。
「ごめん、ごめん楽。ほんとにごめん。」
「謝るのはこっちだって、俺が巻き込んじまった。」
黙り込む2人を秒針の音が襲う。早いようで短い1時間。僕はいつも通り、ベッドの上に居た。
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