第10話
世の中──というか、地球の特に日本については現在大きな混乱に包まれている、だなんて。
その混乱を巻き起こした張本人が言うようなセリフではないのだけれども。
宇宙人による緩やかな、そして「透明な」とも言える侵略により日本は変わろうとしている。
これは私の想定していた通りの事ではあるが、【アロマシンク】の普及は順調に進んでいるし、これから先の話だがそこで使われているギャリカを決済に使えるようにするつもりである。
資本の流れを本格的にコントロール出来るようにする事に対して恐らく、いや、間違いなく今後地球の政治機関と対立するだろう。
……もしかしたら何もしてこないという可能性もあるけど、まあ、流石にそれはないと思う。
具体的に資本の流れをコントロール出来るようにしてどうするのか。
それに関してはまず私がこの星を管理するという義務があるからで、正直なところもっと楽な管理方法は他にある。
それこそ重機で山を崩すが如く、オルタデルタカンパニーが開発した機材で大掛かりな改造計画を施すとかをすれば短期的に見ても長期的に見ても効果的だろう。
しかしやはりそれを実行する事はこの星の人々にとっては悲劇だろうし、だから短期的に見ても長期的に見ても悠長な方法を取る必要がある。
話を戻そう。
ギャリカの話である。
結構な人が今はギャリカを利用して買い物をしていて、更に言うとギャリカを得るための手段のゲーム……という名の労働をしている。
想定外だったのは、地球人が思った以上に仕事が出来る事だ。
いや、もっと言ってしまえばめちゃくちゃ仕事が出来ている。
やっているのがゲームでそこまで複雑な操作を求めていないというのあるけれども、それにしたってここまでの成績を叩き出してくるのは割と想定外だった。
彼等にとってはギャリカを得るための手段、いや、もしかしたらもはやゲームそのものが目的になっている人もいるかもしれない。
厄介なのは、それに関して一部のカンパニーの者がその情報を得ている──という情報が私に届いているという事だろう。
素直に困った事になったと思う。
それがどこの部署にいる誰なのか、目的はなんなのかは分からないけど、そもそもカンパニーの者の中に意味のない事をする奴はいない。
もしかしたら、いや。
「ふう」
あまり、悪い方向に考え過ぎるのはよそう。
楽観的になり過ぎるのもマズイが、とはいえ悩み過ぎても意味はない。
適度にカンパニーの情報を取得しつつ、地球の事を回していこう。
幸い、この地球のカンパニーでの扱いは「アロマ・シアの資産」である。
だから強引な手段でこちらに割り込んでくる事は絶対にない。
逆に言うと強引じゃない手段で介入してくる可能性があるって事だけど。
「お腹痛い」
胃薬が欲しくなってくる時期である。
そしてそれは、今私が見ているドラッグストアでは手に入らない事も理解している。
「……」
地球、日本、千葉県。
こっそり変装をして私はそこにいた。
目的は、一つ。
「お母さん……お父さん」
私がこの星の住人だった時の家族は今、どうしているだろうか?
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