第9話
大切な人。
あの人に言われた言葉がいまだに脳裏でこだましている。
その言葉は『私』に向けられた言葉では決してなく、そしてだからこそ今の私にはどうしようもないほどに心を揺れ動かすものだった。
私は、元地球人だ。
転生し、この肉体で第二の生を歩み始めてから既に何年も経過しているが、それでも心の中には常に地球の事があった。
そもそも地球なんて存在しないのではと思っていた時もあった。
帰る事が出来るのならば帰りたいと思った。
それでもきっとそれは実現しないとも思っていた。
だからそれを見つけたときは本当に驚いたし、嬉しかったし、同時にどうしようとも思った。
オルタデルタカンパニー。
星羅渡る巨大な概念。
私は――それに属する存在だからこそ、地球という惑星が極めてちっぽけな存在である事を知っている。
守ろう、だなんて。
あまりにも偉そうだけど。
だけど今の私は、やはりこの星の事が。
「好き、なんだろうな」
窓の外に、真っ暗な宇宙に浮かぶ星。
青い水の星――というのはそこそこ珍しいけれども希少でではないのだけれども。
私にとっては、その星の前では宝石ですらその輝きが霞むように思える。
地球が好きだなんて思うのはちょっと規模が大きい気もするけれども。
だけど大切な人が住まうこの星の事を守りたいとは本当に思っているんだ。
「……」
お母さん。
お父さん。
そして、
……
どちらにせよ、賽は既に投げられている。
私はこの地球の事を侵略するために訪れた宇宙人としての役割を全うしなくてはならないのだ。
だから――
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