第3話

 地球に向かうに当たってまず重要になって来るのはやはり私の第一印象だろう。

 私というか「星羽」……あるいは「オルタデルタカンパニー」は地球に比べて圧倒的な文明力を有していて、ぶっちゃけて言うのならば「オルタデルタカンパニー」は地球の事を植民地のようにしか考えていない。

 あるいは資源的価値すら見出していないので植民地ですらないかもしれない。

 現状、「オルタデルタカンパニー」と地球とではそれほどの差が開いており、だからこそ私が地球に降り立つという行為は極めて「宇宙人が攻めて来たぞ!」的な感じになってしまうだろう。

 その場合、アメリカ映画的によくある展開の一つ、核戦争勃発という危険性もなきにしも非ず。

 アメコミ的ヒーローが現れる可能性はかなり低いとは思うけど……

 あるいは日本人のスーパー超能力者が現れるとか――いや、ないな。


 どちらにせよそのような事態に発展する可能性は徹底的に排除しなくてはならないだろう。

 私はあくまで「オルタデルタカンパニー」の魔の手から地球を守りたいだけであり、そして悲しい事に私は「オルタデルタカンパニー」に就職している職員の一人でしかないので、普通に考えればこの戦いの行方は既に決まっているとも言える。

「オルタデルタカンパニー」は数多という星を支配下に置いている巨大な概念だ。

 だからもはや勝つとかそういった次元の相手ではない、ただ気まぐれに滅ぼされない事を祈るしかない。

 なあなあに済ませるのが一番なのだ。

 あるいは私が趣味で開拓している星の一つとして済ませて貰う事を祈るしかない。

 間違っても「あ、この星結構重要そうだから頂戴ね?」とか思われたらお終いだ。

 そうなったら最終戦争にすら至らず普通に回収されてしまうだろう。


 そんな訳で、やっぱり配信は出来ないな。

 私の個人的な趣味、あるいはそう、個人的な拠点の一つとして扱うのが一番ベストかもしれない。

 配信するにしたってその時は「辺境の土地でひっそり暮らしている」とか「厄介ファンから遠ざかる為にこんな場所にいる」と言うべきだろう。


 さて、話を戻そう。

 地球の話だ。


 とりあえず地球との戦争は絶対に避ける。

 ていうか戦争になったらこちら側が百パーセント勝てるだろうけど、風評とかは最悪になる。

 恐怖の侵略者として扱われるのではなく、友好的な宇宙人として迎え入れて貰いたい。

 その為に出来る事と言えば、そう。

 お土産を持って地球に向かうのだ。

 ちなみにそのお土産は既にジャンクショップで購入済みだ。

 その正体とは、そう――





 


 いや、本当に見つけた時は驚いた。

 ジャンクショップでは「原始人が作ったオモチャ」、あるいは遺物として扱われていた。

 私はそれをすぐに購入して保存していたのだったが、まさかここに来て役に立つ日がやって来るとは。

 ちなみにこのボイジャーのレコードというのは地球外生命体に向けて送られたメッセージボードであり、だからそう言う意味で私がそれを持っているというのは地球人にとっては嬉しい知らせなのだろう。

 余談ではあるがこちらは飛んでいたボイジャーからぺりっと剥がして持ってきたらしいので、今もなおボイジャー自身は宇宙でその使命を果たすために飛んでいるようだ。

 

 とりあえず、お土産としてはこれで十分だろう。

 言語に関しても、これを解析したって事にすれば問題ない。

 使うのは、日本語。

 そうなるとそれこそレコードに収録されていた曲をバックに流して音声メッセージを送ったりした方が良いのだろうか?

 そうだな、それなら早速そうしよう。

 

 ……既に自分は「星羽」を離れレンタルした巡航宇宙船に乗って地球の近くまでやってきている。

 ステルス機能を利用しているので地球人にはまだ見つかっていないだろう。

 とりあえず、まずは電波に載せてメッセージを送信する。

 内容は――




『貴方達が私個人にプレゼントしてくれたものは今、手元にあります。この黄金のレコードは私に感動を与え、そしてこの星に至るまでの航路を指示してくれました。私と貴方達が共に手を取り合える未来へと至れる可能性を信じています』



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