第2話
仕方がないので、下手な人に購入されて変な事になるくらいならばと私はすぐにその星、エリア12354お番をショッピングカートにぶち込み、そのまま購入。
当然安い買い物ではなかったが、しかし他の星に比べれば本当にはした金で購入する事が出来てしまった。
むしろそれだけ安かったのに誰も買い取り手が現れなかったというのは私にとって幸か不幸か。
なんにしてもこれでひとまず安心、という事で私はすぐに次の行動に移る事にする。
まず、船内テレポート装置で目的の場所である惑星販売サイトを運営する部署へと向かう。
いわゆる「惑星管理部」であり、そこではいろいろな部署と連携して惑星を見つけだし、そしてその中から資源を回収したり星そのものを巨大な倉庫にしたりと様々な用途でそれらを利用する事を決定するのだ。
惑星販売もその中の一つ。
星そのものを資産の一つとする富豪は特に珍しくもない。
ちょっとした休暇の時にゆっくり休めるコテージ感覚で星を購入して管理しているのだ、そういう人達は。
一応、この船の中で一番稼いでいる配信者として、リスナーから冗談で「そろそろ星を買ったりすんの?」とかコメントされていたが。
そういう意味で自分も今日からそういう人達の仲間入りかーとかげんなりしつつ、自動ドアの先にいるスタッフの受付嬢に声を掛ける。
そして中にいた社員の方と対面で話をする事となった。
にこやかな笑顔を浮かべて私を出迎えてくれたその人に私は早速尋ねる。
「えっと、その。このエリア12354お番というのは」
「ええ。大変長らく買い取り手が現れなかったため、最悪バラシて亜空障壁の材料にしようかとか冗談で話されてましたよ」
「は、はあ……」
マジかよ、危なかったんじゃん。
「えっと、それで一応私も購入ページである程度情報を確認したのですが、この惑星って一応原住民がいますよね?」
「ええ、それが何か?」
「……私が勝手に所有権というか、私の星であるとか主張しても良いのでしょうか?」
「はは、そう言う事でしたか」
どうやら訳知り顔をしたかと思ったが、
「貴方と同じような質問をする方は年に何度も現れますよ」
どうやら、私と同じ疑問を抱いた奴は他にもたくさんいるみたいだ。
「結論から申し上げますと、こちらは既に確認を取らせて貰っています。こちらから何度も確認の信号を送ったのにも拘らず、相手側は何も反応をしなかった、だからそれは了承の意として受け止め処理をした。それだけの話です」
「それってただこちらの技術に相手が追い付いていないだけでは?」
「それならば、なおの事都合が良いでしょう。貴方はこの星の神として君臨し、そして星を開拓していけばよろしいのですから」
神なんていやしねえとでも言わんばかりの発言だったが、まあ、ここら辺の屁理屈は私が転生してから何度も聞いてきた理屈の一つでもある。
だから私も特に反論はせずに「分かりました」と頷き、ひとまず今回はこれで帰る事にするのだった。
……それから自室に戻り、ベッドの上に横たわり思考する。
タブレット端末を操作して確認するのは例によって12354お番――地球についての事。
どうやら今、地球は2023年なのだそうだ。
「俺」がこの世を去ったのは2021年、だから私は若干の逆行転生をしたという事になる。
それ自体は特に驚くような事はない。
むしろ嬉しいくらいだ。
地球に行けば、俺は再び親しい仲の人間と再会する事が出来る。
しかし、彼等彼女等は地球の支配者になった私と、果たして元と同じように接してくれるだろうか?
『あ、あんたの事なんか別に何も思ってないんだから』
『本当、キモイわね。近寄らないでちょうだい』
かつて、俺の事をとても嫌っていた幼馴染の事をふと思い出す。
彼女は今も生きているのだろうか?
いや、普通に考えてまだ生きているに決まっているか。
だとしたら、どのような生活を送っているのだろうか?
彼女はとても明るくて快活でみんなのヒーローみたいな存在だったから、今も元気にやっているのだろう。
そんな彼女と、また再会して話掛けた時、私は果たして胸を張って話をする事が出来るだろうか?
……分からない。
分からないけど、だけど私は行動に移らなくてはならない。
惑星を購入した場合、そのまま放置して腐らせる訳には行かないのだ。
少なくとも年に数回、現地に赴き管理する事を条件に惑星の購入を許されている。
「星羽」に住む者達はみな、基本的に資源を無駄にするという事を嫌う。
いや、無駄が嫌いというよりも有効活用しない事が嫌いと言うべきだろうか?
どちらにせよ、私はあの星、地球に行かなくてはならない。
行って、そしてどうしようか?
……うーん。
「いっそ、配信でもしちゃう?」
どうせ配信に乗せたところで地球に興味を持つ者はいないだろうし。
いや、むしろ興味を持ってもらって地球の価値を見出して貰った方が良いのだろうか?
……いや、それは流石にやめた方が良さそう、かな。
まあ、そこら辺の事は現地に向かいながら考えよう。
そう思い、私はひとまず身体を起こしてタブレット端末を操作。
星間巡行船のレンタルは……っと。
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