元地球人だけど、格安値段で故郷が売られてるんだが
カラスバ
第1話
どの世界でも言える話であるが、基本的に商売というのは先んじる者が得をするように基本的になっている。
そう言う意味で元地球人として数多くの娯楽を経験してきた私はこの星の者に比べて大きく差をつけてスタートを切る事が出来たと言えよう。
……まあ、私が転生したここは地球ではなく、故に私は地球人から見れば宇宙人だ。
とはいえ住んでいる場所は「惑星」ではなく巨大な宇宙船なのだ。
歴史を学んでみたら、どうやら今から2000年ほど昔に我らの祖先はこの宇宙船「星羽」を作り上げ、そして遥か長い旅を始めたのだそうだ。
その理由は星の環境汚染とか近くの恒星に爆発する予兆があったからとか、中にはブラックホールが出来たからとか色々考察されていたが、まあそれを考えるのは専門家かコメディアンの仕事だろう。
何にしても私は月より大きいこの「星羽」の上で生まれ、成長して、そして今は動画投稿サイトで配信者をやっている。
配信者という職業自体が私が生まれた頃にはなかった。
その頃、その動画投稿サイト「Oracle」はというと生き物の生態を撮影したものだったり音楽を流すものだったり、まあ、良いように言ってしまえば「正しい」ように使われていたのだろう。
それこそASMR用のマイクのように娯楽目的で使われていない、だから「Oracle」の利用者はそこまで多くなかった。
そしてその発展途上な市場に私は価値を見出し。
結論から言うと、ていうか誰でも思いつきそうな話だが──それこそこの船の上で生まれた彼らだっていずれは思いついていただろう──動画配信を行う事にしたのだ。
幸い、既に生配信のための機能はあったし、しかし利用人口は少なかったので配信をしたところで人は集まらないだろうと思っていた。
ちなみに、古き良き配信者のように顔を半分黒のマスクで覆っている。
この船の人達は魔法あるいは魔法みたいな事を使えるので写真からでもマスク越しの顔を確認出来るが、そこは配信サイト側がプロテクトをしてくれているので、隠していれば大丈夫なのだ。
元々うっかり写り込んでしまった人への配慮の筈の機能をこのように使われるとは思っても見なかっただろうなーと思いつつ。
結論から言ってしまうと、私の配信は成功した。
こう、ぐっと右肩上がり飛び越して垂直跳びみたいな跳ね方をしたのではなく、一年を掛けてゆっくり伸びた。
それでも十分凄いと思うが、ともあれ私はこの船の中の人の中で初めて「バズ」ったのだ。
今では私のアカウントチャンネルの登録者は600万人超え、広告収入だけでウハウハな状態になっている。
将来的に投げ銭機能も追加するか検討もされているみたいだし、もしかしたらもっと稼ぎが増えるかもしれない。
……今では私は「新時代の娯楽者」と呼ばれ、テレビ出演のオファーも来たりするが、それに関しては断っている。
ぶっちゃけメリットがないし、なんならお金に関してはすでに十分過ぎるほどに稼いでしまったのだ。
この船の住人の寿命は大体300歳くらいらしいが、あとはもう遊んで暮らせるくらいのお金があるし、何なら延命治療して100年延ばしてもお釣りが来る。
配信は趣味でもあるから続けているけど、こうなってくるとまた新しい事をやりたくなってくる。
ちなみに、少し脱線するが。
この船の住民は星間企業「オルタデルタカンパニー」の一員になる事が生まれた時から決まっていて、そして私は「総合娯楽開発部」というところに配属されている。
そこではこの船の、ていうか銀河の娯楽を開発している。
現状、私のアイデアを形にする事を主な仕事にしているが、それはさておき。
まあ、私も社会人として働いているわけだが、例によってもう隠居しても良い者なので、だからその日もぼーっとネットの広告を眺めていた。
その日、見ていたのは販売されている「惑星」のリスト。
そして私は──宇宙人アロマは。
奇跡的な再会を果たす事となる。
「辺境の星……エリア12354お番?」
それは、かつて教科書などで見た青い星だった。
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