第13話 暗闇の中で
内と外から押し寄せる快感で膝から崩れ落ちようとする綾乃を、涼介が抱き止めソファーに腰掛けさせてあげた。
涼介は綾乃の方を向きながら右隣に座り、横からハグをする。
「綾乃さん……こんなになっちゃってかわいそうに……」
耳元で囁かれ、濡れる。脚は縛られていないが、涼介に押さえられているからほぼ全身が拘束されている。
夫の亮介から涼介に手渡しされたアイマスクを見た綾乃がはっと息を飲む。
「目隠し、好きなんですか? 綾乃さん」
「いや……いや、いや、いや――」
口ではこう言っても、涼介の指はその喜びを感じ取っている。
「すごい、なんか動いてる……」
視界を奪われた綾乃の嬌声はまた一段と高くなる。
「あ、ぁああ……ア、ア、アアアアん!!」
「もっと気持ちよくなってください。でも、逃がさないです」
スイッチを入れると、焦らすこともなく綾乃の欲しいところにそっと添わせる。
早口になったり声なき声となったり、渋滞を起こしている感情の整理が追いつかない。
(大人の余裕と色気って感じだった綾乃さんが……)
(こんなにまで乱れるなんて……)
出会ってたったの一週間。
そんな短期間に、自分の極端なまでの二面性を相手に見せることなんて他にあるだろうか。
昼の顔と夜の顔、引っ張っていくリーダータイプと身も心も相手に委ねる依存型ドMタイプ。
「どっちも魅力的です、綾乃さん」
(動けない綾乃さん……もっと非道いことしたくなる……)
涼介は突然スイッチを切ると、綾乃の正面にまわり予告無しに覆い被さった。
「え!?」
兆候も脈絡も無しの侵入。驚きのあまりほとんど声の出ない綾乃。目の前の暗闇の中で、研ぎ澄まされた聴覚に直接働きかける涼介の囁き。
「いっぱいしてあげますね。覚悟してください」
その刹那、ソファーと涼介の板挟みとなった綾乃を激しく求め始めるのだった。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!!!!」
綾乃が泣こうが叫ぼうが、涼介はやめるつもりはない。S側にいる自分は感情を押し殺して
「ああっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あぁああ」
亮介は、まだ綾乃の本心全てを理解できているわけではない。だが、なぜ涼介に夢中になるのかだけは少しわかる気がしていた。亮介は亮介で、涼介のお陰で初めて得られた快や視点という意味で心から感謝していたのだった。
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