進路の悩み
そろそろ、俺もバイトでも始めようかなぁ。
何時までもこの衆難山寺で過ごすワケには行かない。
いくら此処にいれば、衣食住は確約されているからと言って、金が無ければ抜刀官になる為の金を払う事すら出来ない。
何よりも、里帰りをする為には金が必要なのだ、歩いて帰るには距離があるし、その場合にも食費が必要となる。
であれば、俺が出来るバイトでもするべきなのだろうが、そう考えても俺の年齢は十四歳である、この歳で行える合法的なバイトなど、あまりない。
いや……あるにはあるが……。
俺は数日前に、協会から渡された封筒を見た。
それは、俺が外に出る際に必要になる封筒であり、その中身には、緋火刃金を携帯しても良い刀剣類所持許可証であった。
これがあれば外に出ても刀を所持しても良くて、更には祅霊や、妖刀師が出て来た際に護衛の手段として刀の使用が許可されているのだ。
なので、これが無ければ普通に刀を携帯するのは犯罪である。
言うなれば車の免許みたいなものだ。
俺の身分を証明出来る代物でもあるので、取得して損はしない。
同時にこれがあれば、祅霊退治が出来るのだ。
抜刀官以外にも、祅霊を退治する組織と言うものがある。
民間会社や、自営業みたいな形式をとって、祅霊を討伐し、協会に提示する事で等級に応じて報酬が貰える、と言うものである。
抜刀官の多い都市ではあまり収入は見込めないが、田舎や郊外付近であれば、祅霊が多く棲みつく事もあり、そこで金を稼いでいる猛者が居る。
当然、縄張りもあるので、沢山稼ぐ事は難しいが、刀を振るう事しか能の無い俺には持って来いの仕事であろう、とそう思っていた。
幸い、祅霊を狩る為に必要な武器は、衆難山寺にある緋火刃金を使用すれば良いので、最低限の準備は出来ている。
が、其処で問題になるのは、この周辺では祅霊があまり出て来ない、と言う点である。
台明寺先生の『山籠もり』にて山に離された祅霊が原因であるのか、ここら一体では祅霊が寄り付かない様になっているのだ。
ここ数年では、祅霊が麓に出現して被害を齎したと言う話など聞いた事も無い。
結局、遠出するにも金が要るし、祅霊を狩るにしても、遠くへ出かけなければならない、と言うワケだ。
俺が抜刀官になる為に、試刀館学院へ入学するには、最短でも十八歳からだが、それまでに入学金とか学費を稼がなければならない。
推薦や勧誘だったら、奨学金が貰えて学費とか無料だし、十六歳からでも入れるのだが……生憎、伝手となる人はいなかった。
何か、良い手段はないだろうか。
そんな事を考えながら今日も俺は道場で刀を振るう。
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