第96話 シメの一人旅15・Aランク試合1
全く飛んでもない事になってしまったものだ。いきなりAランクパーティー同士で戦いだなんて。
ヨシアにしてもこんな事は初めての事だ。それに現役のAランクパーティーと戦った経験などない。
本当に私達は勝てるのかと思っていたが少なくともシメが負ける事はないと思っていた。問題は私達だと。
数に少々ばらつきがあるので勝ち抜き戦のトーナメント制でやる事になった。
組み合わせはクジ引きだ。4組だから準決勝から始まる様な物だ。
最初の組み合わせは「再生の翼」対「魔法騎士団」となり、次に「黄金の獅子」と「銀嶺の咆哮」とが戦う事になった。
ヨシア達は魔法使い達と戦う事になったが果たしてこれはヨシア達に有利になるのかどうか。
ヨシアは魔法使いだ。そしてカミルもまた魔法使いの中に入る。しかし普通は付与魔法師は戦闘要員でない。あくまで後方支援だ。そしてシメとなる。
相手の「魔法騎士団」は全員が戦闘可能な魔法使いの様だ。勿論中には治癒魔法の使える者もいるだろう。
これはパーティー戦だから戦闘を続けられる者には治癒魔法を掛けてもいいと言う事になっていた。
そうなるとちょっと厄介な相手と言う事になる。多少ダメージを受けてもまた元に戻ってしまうのなら実に戦い難い相手だ。
とは言ってもそれは勝者に限られる。試合続行中に治癒魔法を受ける事は出来ない。当たり前と言えば当たり前だ。
治癒魔法の使える者は「黄金の獅子」と「魔法騎士団」にいる。あとカミルも使える。ただ「銀嶺の咆哮」に関してはわからない。
要は傷を負わなければいいのだがそう上手く行くとは限らない。何しろ相手はAランクだ。想像以上の力の持ち主かも知れない。
シメ側の布陣はカミルが先鋒、シメが次鋒兼副将、そしてヨシアが大将と言う事にした。
ヨシアが大将なのは当然彼女がAランクでパーティの顔だからだ。
確かに実力はシメの方が上だがEランクのシメを大将にしたのでは余りにも不自然だろう。それにシメを中間に置いた方が相手の力を良く図れる。
今回はAランク同士の戦いだ。最終戦はヨシアに任せようとシメは考えていた。
そして第一試合の相手「魔法騎士団」の先鋒はBランクの魔法使いを出してきた。まぁ当然と言えば当然の選択だろう。
それに対してカミルは両手にトンファの様な武器を持っていた。これはシメが「自警団カリヤ」にいる鍛冶師に頼んで作ってもらって送ってもらった物だ。
これには色々な用途がある。普通の武器としてもそうだが、カミルの付与魔法を使う事によって防御魔法武器にもなる。そして魔法武器にも。
こんな事が出来るのもカミルの付与魔法がちょっと特殊だからだ。
普通の者から見れば相手は付与魔法師でろくに戦えないから武器を持って来たんだろうと思うだろう。
そこがミソだ。これで相手の想像や計画を覆す事が出来る。
想像通り相手の魔法使いはカミルを軽く見て初級レベルの魔法で攻撃して来た。
強化したカミルなら身体強化だけでこんな魔法は防げるが一応次の対戦もあるので武器を使って魔法を防いでおいた。
このトンファは棒の長い方を前に出して魔力を供給すれば防御魔法を作り出す事が出来る優れ物だ。
こうして相手の炎魔法を潜り抜けながら接近してトンファ本来の使い方で相手を倒してしまった。先ずは一勝だ。
次鋒は二人目のBランクの魔法使いだった。相手は順当に選手を出して来る様だった。
二人目は土魔法を得意とする者の様だ。試合場を色々と変形させてカミルに戦い難くしていた。戦闘系の冒険者には不利な相手だ。
しかしカミルの身体能力はそんなものではなかった。まるでマシラの様にどんな障壁、障害物も乗り越えて相手に迫っていた。
相手がカミルを土魔法で拘束しようとした時にはカミルの姿はなかった。カミルはその時空中高くに飛び上がっていた。
相手にはそれが見えなかった様で。真上からの攻撃であっさりと相手は沈んだ。これで二勝目だ。
ここでシメはカミルと交代した。これ以上カミルの手の内を晒すのは不味いと。
後一人、Aランクの魔法使いを削って置けばヨシアも戦い易くなるだろうと。
三人目の副将はAランクの魔法使いだった。やはりAランクと言うだけはある。四属性の使える魔法使いらしい。そこそこの相手だ。
これはあくまでシメの見た目での話だ。普通の者からしたら超越者と映ったかも知れない。
ある者は伝説の大魔法使いカラスにも匹敵すると思ったかも知れないが所詮カラスとは次元が違い過ぎた。
その魔法使いに対してシメは左手首に丸いシールド、そして右手にはヨシアが使ったのと同じようなプロテクターを嵌めていた。
これは当然そんな武器も用意するだろうと相手も思っていた。何しろ相手はEランクのヘタレだ。武器なしに戦える訳がない。それでも勝利は覆らないと妄信していた。
そしていざ戦いが始まってみると何かがおかしい。思うように自分の魔法が効果を発揮しなかった。
魔法はその丸いシールドによって片っ端から弾かれていった。実はあれは極普通の鉄板のシールドなんだがそこにシメが気を流して最強度の魔法防御シールドにしていた。
本当はこんな事位シールドなしでも出来るのだがそれをやってしまってはシメに対する認識が変わってしまう。今はまだ自分の実力は出したくなかった。
そして巨大魔法に対しては縮地で間合いを切って安全圏に逃げていた。つまり何をしてもシメには当たらず捕まえる事すら出来なかったと言う事だ。
これには相手の副将も焦った。
「ねぇねぇ、あれってシメさん遊んでますよね」
「そうね、それもかなり手を抜いてね」
「困った人ですね、こんな時に遊ぶなんて」
「いいんじゃない。何しろ相手が相手なんだから」
この二人は一体何を言ってるのか。Aランクの魔法使いを相手にして。
とうとう相手は魔力の枯渇で自滅してしまった。これならシメが何かの術を使って相手を倒したとは見えないだろう。本当は全てシメの手のひらで踊らされていたんだが。
さてこれで最終戦だ。ここでシメが向こうの大将を倒したら勝敗が着く。しかしこれは既に予行演習が済んでいた。
シメがある程度戦って相手の力と技術を計った上で負けて交代すると言う筋立てにしてあった。
シメは最後の大将と対峙して少し歪感を感じた。ただし強いと。この歪感は何だ。かって何処かで感じた事がある様なと思った。
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