第31話 「魔素溜り」の復活
聖教徒法国の町の中はゼロがいた時と然程変わった様には思えなかった。
ただ確かにゴルメルが言う様に何処を見ても獣人や亜人の姿は見る事が出来なかった。
やはり聖教徒法国は今も昔も聖教徒法国のままかとゼロは思った。
ゼロ達はゴルメルの依頼が終わたのでここで依頼主とは一旦分かれてそれぞれの道を行く事にした。
もし帰りにまた護衛が必要になったらその時はその時の事にして別れた。
取り敢えずゼロ達はこの町の冒険者ギルドに顔出した。護衛依頼の達成報告もある。
依頼人のゴルメルから依頼達成の承認ももらっていたのでは問題はなかった。
そしてその時分かったのだが、ゼロが凍結しておいた冒険者パーティ「魔素溜り」だがまだ成立しているとの事だった。
あれから100年以上も経ってるのに何故かと尋ねたら中には長寿族のエルフやドワーフもいると言う事で、本人の死亡が確信されない限りは保留は保留として残るらしい。流石はファンタジーの国だ。
そこでゼロはカロールと相談した結果、冒険者パーティー「魔素溜り」を復活させる事にした。
メンバーも当時の二人が生存しているのだ問題はなかった。
つまりその時点でまたデストロイヤーと言う悪名高き冒険者の名前が復活する訳だがそれを知る者はもういないだろう。
「お師匠様、その『魔素溜り』とか言うおかしな名前は何なんですか」
「それはね、昔あたしがこいつと一緒に組んでいた冒険者パーティーの名前よ」
「えっ、ええっ。お師匠様がこんなヒューマンの輩とパーティーを組まれていたのですか」
ゴツン!「痛いです」
「いいか、ようく覚えておけ。今日から俺達はまたパーティーを復活させる。だからお前は俺達の下僕、荷物運びみたいなものだと思っておけ」
「な、何を生意気な、ヒューマンのくせに」
ゴツン!「痛いです」
取り敢えずこのメルチもパーティーに加えて3人にしておいたが勿論メルチはFランクだ。
何であたちがFランクなんですかとメルチは文句を言っていたがFランクはFランクだ。
「お師匠様、このヒューマンがあたちを荷物運びだと言うのです」
「お黙り」
「はい、お師匠様」
ただこの国では冒険者活動はかなり制限されると言う話だった。
何故かと言うと魔物狩りも教会の騎士団達が訓練を兼ねてよく魔物狩りをするので、バッティングしてしまい、力で騎士団に負けるのだと言う話だった。
しかし獣人国から人族の国に戻ったばかりの騎士団に何故そんな力があるのかと聞いたら、どうやらこの国の聖教徒教会は100年前の戦争が始まると同時に地下に姿を隠したと言う話だった。
そしてあれから100年、面々と地下で力を蓄えていたらしい。地下には地下宮殿もあると言う話だった。
日本の徳川時代の隠れキリシタンの様な物かとゼロは思ってた。
それが事実なら高位の魔導士がいても可笑しくはない。もしかしたらそいつらが勇者の召喚魔法を用いたのかも知れない。
しかしそれには当然この教会の守護神たるクソ神が後ろにいるんだろうとゼロは思っていた。
『まぁいい。また邪魔して来たら今度こそ壊滅させてやる』
とゼロは神相手に恐ろしい事を言っていた。
「で、あんたこれからどうするの」
「そうだな、取り敢えずは薬草採取で様子を見てみるか」
「なるほど薬草採取ね。あんた昔と全然変わってないわね」
「お、お師匠様、薬草採取ってなんですか。女子供の仕事じゃあるまいし。この輩ならわかりますが何もお師匠様までしなくても」
「馬鹿かお前は、これはお前の為の仕事なんだよ。しっかり働け」
「き、貴様ー。ヒューマンの分際で」
ゴツン!「痛いです」
「お師匠様、こいつが」
「お黙り」
「はい、お師匠様」
「よう、あんたら新人か」
「新人と言う程ではないがここでは新人だな」
「そうか、ただここでは大した仕事にはならないぞ」
「それはどう言う意味だ」
「ここでは騎士団も魔物狩りをやるんだ。一応訓練の一環と言う事でな。しかも奴らはそれなりに強い。だから俺達には中々お鉢が回って来ないんだ」
「そうか、なる程な」
「それによ、ここ最近は特にそうだな」
「どうしてだ」
「知ってるかここに勇者様が現れたと言う話を」
「ああ、聞いた事がある」
「だからその勇者様方の訓練なんだとよ」
「そう言う事か、それで勇者が魔物狩りをやってると言う事だな」
「そうだ、だからよ益々獲物がいなくなっちまってよ。そろそろ場所替えかなと考えてる所さ」
「わかった。情報ありがとうよ」
そう言ってゼロはその冒険者に小銭を渡した。
「いいのかい、こんなにもらっちゃって」
「ああ、情報代だ」
「それじゃーよ、特別の追加情報だ。ここ2-3日教会の様子がおかしいらしい」
「おかしいとは」
「何にか大事件が起きて、ここのNo2がヘッケン王国の国王に会いに行ったとか。また騎士団の締め付けが厳しくなったらしいぞ」
「そうか、わかった。ありがとう」
「じゃーな」
ゼロはここのNo2がヘッケン国の国王に会いに行ったのはあのサザンの事件のもみ消しだろうと思っていた。
「ねぇ、あんたそれってどう言う事」
「実は先日勇者が一人殺された」
「うそ、勇者が。それって本当なの」
「ああ、本当だ。その場には俺もいた」
「まさか、あんたがやったんじゃないでしょうね」
「俺じゃない。一人の獣人の冒険者だ」
「そ、それってほんとうなの。なら早速スカウトしなきゃ」
「おい」
「冗談よ。しかし凄いわね。勇者を倒せる者がいるなんて」
「あいつらはみんなガキだからな。本当の戦い方も人の殺し方も知らん。いや殺し方だけは知っていたが、殺され方は知らなかったな」
「へーそれって面白い話ね。まだ未熟って事よね」
「まぁそうだな」
「なら今倒しとけば憂いはなくなるわよね」
「確かにそうだ。しかし魔王は戦争を中止したんじゃなかったのか。それをお前の一存で初めていいのか」
「あっ、そうか忘れてた。残念」
「一応どれ位の力を持ってるか、それだけでも調べておくか」
「そうね。メルチ行くわよ」
「はい、お師匠様」
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