🌌この糞の行く先は

💛💚💐


「倜䌚、ですか」


したった、ず慌おお手で口を芆ったのは銚子だ、人の話を遮り思わず口から零れおしたった蚀葉を拟おうずしおいる。


誰盞手であっおも話を遮るのはよろしくないず理解しおいるが、特に目の前にいる人物、憧れず呌ぶに盞応しい感情を持った盞手の前で倱態を犯しおしたい恥ずかしさで耳が赀くなる。銚子の反応に件の人物は嫋やかに口元を手で隠しにこやかに埮笑んでいる。


「ええ、今は䜿われおいたせんが、校舎の裏手に倧きなホヌルがあるでしょうそこに改修工事が入るので最埌の思い出ずしおPTAの方々が立案したのですが、進行などは生埒に任せたいずのこずで」


アルカンシ゚ル女孊院はかなり歎史がある孊校だ。

建物自䜓は100幎前から存圚しおおり、元は倖囜からやっおきた芁人が建おた別荘だった ずいうのを、はるか昔、入孊匏で聞いた気がする。


組織ずしおは䞀般的な私立の䞭高䞀貫校だが、建物はあたりにも自分にずっお銎染み深いものばかりだ。现やかなロココ調の装食が倚く、䞭には噎氎があり、倖に面した廊䞋には石英の柱が䞊ぶ。


孊校の倖芳や制服を気に入り高校受隓する生埒も少なくない。広い敷地には倧きなグラりンドに蚭備が十分に敎ったドヌム型の䜓育通、広い校舎に郚掻棟、建物ずしお独立しおいる図曞通たであり、それらの裏手にあるのが件のホヌルだ。


䞀蚀で蚀えば、埡䌜噺などで聞く舞螏䌚の䌚堎。

珟圚は䜿われおおらず、オヌプンスクヌルや新入生の孊校案内の際に解攟するくらいで誰も立ち入らないが、孊校の斜蚭ずは思えないくらい華矎な建物ずいう蚘憶が朧気に誰しもの蚘憶に残る皋床の斜蚭。


「それでですね、䌚堎で叞䌚をするお仕事を銚子ちゃんに頌みたいず思いたしお」


「ええ、ええ      えぇ」


建物を思い出すこずに集䞭しおいたこずも重なり突然の提案に驚いおしたう、銚子の驚いた声も想定内だったのか、目の前の人物は気にせず話を続ける。


「私含めお、圹職ある3幎生の方々は裏方の仕事で手䞀杯で衚に立぀䜙裕もありたせんし。それに、この孊校をひっくり返しおも私が適任だず思えるのは銚子ちゃんしかいらっしゃいたせんから」


「 」


幌い頃から圌女のこの流れるような耒め蚀葉を受けお育ったが、今回は少し、いや、かなり嬉しくお぀い口元が緩みそうになるずころを手で抑える。ここは淑女に、圌女のように花も恥じらうような埮笑みを 


「おほんっおヌっほっほっほ暁さんの頌みずあらば䞍肖 花園銚子花園の名にかけお超絶怒涛震倩動地か぀感奮興起な最高の倜䌚にしおみたすわ」


手の甲を頬に圓お高らかに宣蚀する、䞍安を感じさせない堂々ずした銚子の立ち姿に埮笑みを深め、纏っおいる雰囲気が茪をかけおぱっず明るくなる。


「もちろん、孊玚委員ずしお党力でサポヌトさせおいただきたすので䜕でも質問しに来おください。それでは、よろしくお願いしたすね」


「もちろんですわ〜」


圌女が優矎にお蟞儀をし、ふわりず髪を揺らしおほのかに銙るロヌズの匂いだけを眮いお去っおいく。その姿が芋えなくなるたで埌ろから芋぀め、呚りに誰もいないこずを確認し、小さくガッツポヌズを䜜る。


「やりたすわよ 」


他でもない暁に頌たれた仕事に、今たでにないやる気を芋せる。圹に立ちたいずいう思いはもちろんだが、この仕事を乗り越えればたた少し圌女のような淑女に近づけるず信じお。


🗒ᝰ✍


「えヌ最近流行っおる蚀葉特に今特定の䜕かが流行っおるっお蚳じゃないけどヌ うヌん、きょヌのそのリボンメロいね〜ずかあ、可愛いずかそう蚀う意味だよ。蚀葉ずか感芚じゃん気にしなくおいいず思うけどなヌ」


「奜きな展開か〜そうだなぁ あっラスボスが2段階で埅ち構えおるず超燃えるよね倒したず思ったら起き䞊がっおくるんだよアツいず思わない」


「緊匵しないコツ、なのですれゆはただそんなに沢山人前に立぀こずはないのですが そうですね〜、あっ、みんなの顔をねこさんだず思っおみるず、ずヌっおもかわいいのです」


「銚子ちゃん、今床の倜䌚の叞䌚進行しおくれるんだよねありがず〜、3幎生だけじゃ手が回らなかったから助かる え話す時のコツそうだなぁ ゆっくりハキハキず喋るずかほら、菅原さんずかいいんじゃ いや、倜䌚が取締䌚になっちゃうか あははっ、ちょっずは緊匵ほぐれたかな」


「人前での立ち振る舞いえヌっず 聞く盞手間違えおたせんえヌ うヌん 別に私が床胞あるずかそんなんじゃないですけど 盞手の目じゃなくお眉間を芋るずか倱瀌にならなければ別にっお思いたすけど  」


芪しい人や近くにいた友人に話を聞くが、質問に問題があるのか、人遞が個性的すぎるのか、的を埗おいるような掠っおいるような壊しにいっおいるような、そんな助蚀がメモ垳を黒く埋めるばかりで銚子の頭には重たい石が積たれおいき、石もたた厩れそうだった。


項垂れおいる銚子を前にズゟゟず音を鳎らしおカップの底を確認し぀぀オレンゞゞュヌスを飲み終わった玡未は倧きくため息を぀いたあず頬杖を぀き、銚子を真っ盎ぐ芋る。


「なんか い぀にも増しお匵り切っおたせんかたぁ、むベント事が奜きな事は知っおたすけど なにかあったんですか」


玡未の玠朎な疑問に銚子の肩が揺れ少しの反応を芋せたあず、玡未を䞊目遣いするように芋぀める。


「 私、もっずもっずしっかりしなきゃっお思いたしたの。もっず色んなこずができるようになれば、みんなの力になれたすでしょう」


玡未は銚子の芯が通り぀぀もい぀もより芇気が無い様子に面食らっお思わず「ぷっ」ず吹き出しおしたう、銚子はそんな玡未の様子に思わず立ち䞊がり抗議の声を䞊げる。


「たぁ私真剣に悩んでたすのよ人生で、えヌっず 3番目3番目くらいには悩んでたしおよ」


「いや、だっお ふふっ、花園さんらしいけど、花園さんらしくないなっお  んふふ、私が知っおる花園さんはもっず堂々ずしおお、凛々しくお力匷いんで 䜕があったかは知りたせんけど、そういう花園さんらしいものを求められおるんじゃないんですか」


ころころず鈎が転がるように埮笑む玡未の蚀葉にハッずする。

確かにあの方も、幌い頃から自分が元気よくすればするほど楜しげに笑っおくれたから、自分もはしゃぎすぎおしたっお怒られたこずも少なくない。


私は圌女のような優矎な淑女になりたいず垞々思い、そうなろうず䞀念発起しおいるが、今回に限っおは圌女に映る自分を、私なりに頑匵れば、期埅に応えられる 


「うふ うふふふふ  おヌっほっほっほ月倜さん、ありがずうございたす感謝を申し䞊げたすわ私分かりたしたわよお倜䌚、楜しみにしおくださいたし〜」


「あヌ はい、分かりたした、どういたしたしお、はい、嬉しいのはわかりたしたから、ここ䞭庭ですよ、ちょっず、嬉しくなっおるのは分かっおるんでここで優雅にくるくる回るのはやめおください 」


⛲💃💚

🧵𓂃🪡


時刻は午埌6時。

季節は倏に近づき、空は倜ず呌ぶには些か明るく、日差しは建物を照らし跳ね返った光がキラキラず空気を装食する。


この日のために党おを完璧に仕䞊げおきた淑女が1人、控え宀でロココ調の怅子に腰掛け 息を敎えおいた。


柔らかい郚屋の雰囲気ずは打っお倉わり、衚情や姿勢は非垞に固く、傍から芋おも緊匵しおいるこずが䌝わる。


隣のホヌルから聞こえる人の声が䞍安ず緊匵を煜り、この郚屋に来お自分の持぀手足の数では数え切れなくなったため息を぀く。


「 きょヌちゃんっ」

「きゃっ」

「わあ」


銚子の肩を誰かが掎み、銚子が怅子から数センチ浮く。その銚子の反応や声に驚いたのか、話しかけた声の䞻もたた驚き銚子の肩から手を離す。


「びっくりさせちゃったのですご、ごめんなさいなのです 」

「玲優 いえ、倧䞈倫ですわ緊匵しちゃっお い぀もより驚いおしたっただけでしおよ」


芪友の顔を芋お心が少し萜ち着く。玲優は銚子の顔を芗き蟌み眉尻を䞋げるず、銚子の蚱可を埗る前に隣に腰を萜ずす。銚子も玲優の行動に異議を唱える蚳でもなく、圓然の事ずしお受け取り、他愛ない䌚話を広げる。


倜䌚にどれだけ人が集たっおいるか、今日の先茩方の着こなし、奜評を呌んでいるお菓子の話。お互いのドレスアップ姿を耒め合い、時間は過ぎおいく。


普段通り和気あいあいず䌚話をしおいたが、銚子はふず玲優がここにいる蚳を考えた。叞䌚進行ずしお呌ばれた自分でもこれから忙しくなるからず別宀で埅機を蚀われおいるのに、今回のむベントの枊䞭を担う孊玚委員の䞀員である玲優がどうしおここにいるのか


「ねぇ玲優、お仕事は倧䞈倫なのこんなに話し蟌んじゃっお 迷惑じゃないかしら」

「そんな事ないのですれゆはきょヌちゃんに䌚いに来たのですなので、沢山お話するのももヌたんたいなのです」

「 ふふっありがずう、玲優」

「ふぞぞ、きょヌちゃんの力になるのがれゆのお仕事なのです」


芪友の無邪気な笑みず気遣いに癒される。心臓が口から出るくらいうるさかったのに、鎮静剀を打たれたように倧人しく動く心臓の蟺りをさする。


「きょヌちゃんっマニキュア、しおみたせんか」

「え」

「石鹞で掗ったらすぐ萜ちるので、明日のこずは気にしなくで倧䞈倫なのです」

「ふふ、玲優がそこたで蚀うなら 」

「小栗さんからオススメしおもらった、むチオシなのですきょヌちゃんに絶察ぜったい䌌合うのです〜」


手を差し出すず玲優はご機嫌に銚子の爪を拭い、青緑色のマニキュアを塗り出す。爪から䌝わるほんの少しの冷たさを感じながら、玲優の真剣そのものな衚情に面癜さが蟌䞊げる。


「   ねぇ、きょヌちゃん。きょヌちゃんは芋えないけど、そこにある 運呜の糞っお信じるのです」

「運呜 」


「人じゃなくおも、ものだったり、事だったり 䟋えば、この孊校に入孊したこず。これは運呜の糞で匕き合わせられたものなのか なんお、れゆは考えたりするのです」


「今、この瞬間、れゆたちを取り囲む党おが糞で繋がっおお、糞は现かったり倪かったりするけど でも、どんなものでも党郚党郚、れゆにずっおは二床ずない倧事なものだず思うのです。」


「こんな話しおおも、れゆにも糞はわかりたせん   でも、芥ちゃんにマニキュアのお話をしおもらったこず、きょヌちゃんにこうやっおマニキュアを塗っおるこず、れゆにずっおは倧切な運呜の糞なんだず思いたす」


「   れゆ、きょヌちゃんにずっお、このお仕事がずっおも倧事な糞だず思うのです。だから、きょヌちゃんはこの糞が繋がっおお良かったなっお思えるような、そんな倜にしお欲しいのです」


玲優は話し終えるず銚子の手をギュッず握り、じゃヌん、ずいいながら銚子に芋えるように手を目線の高さたで掲げる。青緑のマニキュアが銚子の爪をいろどり、ラメが光を受け取りキラキラず茝く。


「きょヌちゃんの今日ずいう倜が、倧切なものになるこずを祈っおいるのです」

「 っありがずうっ 玲優」

「わわっふふっ、ぎゅヌっ、なのです」


🌃🏰


「それじゃあ、最高なものにしおきたすわ」


「行っおらっしゃいなのです」


芪友は眩いホヌルぞの扉をひらく。光に負けないくらい茝く圌女の姿はたるで、花嫁のように矎しく、錓動が早くなる。


ずくん、ずくん


どくどくどくどく


ぎゅう、ぎゅう、ぎゅう


きゅヌっ   


うるさい、心臓。

これはい぀か芋る景色じゃない。ただ、そうじゃない。


だから、感傷に浞っお涙を流すこずも、圌女を今すぐ連れ去りたいず思うこずも、叶えるわけにはいかない。


い぀か話したこずがあった。決められたレヌルを螏み倖すこずがない圌女の、脱線にも及ばない倢物語を。圌女は倢を倢で終わらせる぀もりで、自分にも圌女の意思をねじ曲げるほどの傲慢さはなかった。


自分がもっず匷い人で圚れたら、圌女の手を離さなければ、涙を拭う以䞊の觊れ合いが蚱されるのであれば。䜕床考えおも、圌女の笑顔を壊すこずが䜕よりも恐ろしくお、もどかしさに身を焊がすこずしか出来ない。


「   きょヌちゃん、れゆの、倧奜きな人 」


「きょヌちゃんは、れゆのこず、どんな颚に考えおいるのです  れゆは、れゆは 」


「きょヌちゃんの運呜の糞が、れゆに繋がっおなかったら   れゆは  蚱せないかも、しれないのです」


「欲しい、のです きょヌちゃんの糞が」


はっ、ず息づく。なんお、恐ろしいこずを考えた

ホヌルの真ん䞭に立ち、ペリドットのように茝く圌女を芋る。あの笑顔が、愛おしい。そう、守らなきゃいけない笑顔。


倧䞈倫、だいじょうぶ。

自分にそう唱えながら、ゞュヌスが入ったグラスを2぀貰った。


🌌🥂

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