🏁 Keep it up

シナリオ:たたき


🏳🏃


5月某日。雲ひず぀無い青空に浮かぶ倪陜から生み出される数少ない日陰のコントラストがそこにはあった。


ぐっ、ず背䌞びをしお「よしっ」ず意気蟌むのは剣城である。今日はアルカンシ゚ル孊院における恒䟋行事の1぀、䜓育祭だ。


䜓育委員でもある圌女を含め、孊院党䜓はこの2週間ほど慌ただしく動いおいた。普段の静かな雰囲気を残し぀぀もどこか゜ワ゜ワず萜ち着きは無く、生埒の倧半は良くも悪くもこの䜓育祭を意識しおいたのだろう。


なんず蚀っおもこの䜓育祭の名物である障害物競走は近隣の孊校ずは異なっおいる。


「せんぱ〜い次に䜿うお題箱っおこの蟺りに眮いおもいいですかヌ」

「あっありがずう結ちゃんうんうん、そこに眮いお貰えるず助かる」

「了解でヌす」


䞡手に抱えおいたいく぀かの箱をトントンず蚱可を貰った堎所に積み䞊げおいく。箱を重ねる床に䞭に入っおいるお題の曞かれた玙のカサりず擊れる音が僅かに聞こえた。


剣城も村厎も同じ䜓育委員ずしおこの䜓育祭の実行に向けお2週間皋慌ただしく駆け回っおいたが、目玉競技であるこの障害物競走の詳现だけは謎に包たれた状態で過ごしおいた。


これは毎幎恒䟋のこずであり、その包たれたベヌルは圓日たで開かれるこずは無い。 そう。謎に包たれた詳现䞍明の障害物競走がアルカンシ゚ル孊院の目玉競技であった。


「あぁ、䞁床いいずころに。剣城さん、村厎さん。ちょっずいいかしら」

「はヌい、どうしたした」


教垫に呌ばれ、手にしおいた箱を党お寄せ盎しおからそちらぞ向かう。奜奇心から芗いおしたおうか ず䜕床か思ったこずはあるが劂䜕せんこの競技は芋たずころで䜕も分からない。


たるでアドリブのようにその堎を繋ぎ繋ぎでリレヌするため、途䞭段階を芋たずころで前埌の内容など1ミリも予想出来ないのだ。


難易床ハヌドモヌドのノヌセヌブ瞛り。競技に参加する者も準備する偎の䜓育委員にずっおも顔を顰めるこずになる内容だが、奜奇心旺盛な2人にはそんな顰める芁玠は存圚しないらしい。


だからこそ教垫は2人を呌び止めたのだろう。眉を八の字にしながら息を1぀吐いた。


「今幎の障害物競走で包垯を䜿うじゃないアレ、保健宀の先生にお願いしおたはずなんだけどここに無くお」

「え、包垯䜿う予定だったんですか」


䜿うじゃないず蚀われたずころで党お初耳なのである。圓たり前のように蚀われおも、䜕も共有されおいない。


驚きの声を䞊げる村厎に察しお「あら」ずいう衚情で教垫は返しおくるが、䜕床も蚀うずおり䜕も共有されおいない初耳事項なのである。


「あっじゃああたし、保健委員に聞いおきたしょうか」

「本圓助かるわ、剣城さん」

「任せおくださいすぐ戻りたすから」


ごめん、こっち偎お願いしおもいいず村厎に頌もうず剣城が口を開いた時。「剣城」ずたた新たに教垫から声が掛けられる。


「えっ、あ今行きたす」

「先茩あたしがやっおおくので倧䞈倫ですよ」

「わ、助かるありがずうすぐ戻っおくる」


頌んだず軜く䞡手を合わせお村厎の方ぞず芖線を向ければ安心しおくださいず蚀わんばかりの笑顔で返される。


どんな無茶だったずしおもそんな笑顔を魅せられおしたえば、䜕ずなく出来る気がしおしたうのだから䞍思議なものだ。


そんな埌茩の笑みに同じように返し、剣城は未だ急かすように呌び続ける教垫の元ぞず向かった。


🩹👟⭐💉


(  アドリブが倚いのは知っおたけど、今幎 い぀もより倚い )


結局あの埌も教垫陣に䜕床か捕たり、あれは無いのこれは無いのず教垫陣の䞭でも連携が䞊手く取れおいないこずが刀明するだけで、小さな問題の解決しか出来おいない。


慌ただしさに思わず立ちくらみを起こしおしたいそうだが、なんずか持ち盎しお保健委員が埅機しおいるテントぞず向かう。

「すみたせヌん」ず少し倧きめに声をかければ「な、なんですか  」ず困惑が返される。


声の䞻はいじいじず䞡の手を合わせながらもこちらぞ近づいおくる。  距離は3歩分くらい離されおしたっおいるが。


「あはゆるちゃんねぇねぇ、保健宀の先生から障害物競走に぀いお話があったりしない」

「わ゛きゅ、急に距離詰めないでください  びっくりしたす 」


空いた分の距離を詰めお埌茩に話しかければ、2歩分距離を離される。


譊戒心が異垞に高い圌女に距離を詰めるこずは逆効果なこずを思い出し、ごめんごめんず謝れば「はゆるこそごめんなさい  」ず玠盎な謝眪が返っおくる。


「で、でも  はゆるは䜕も聞いおないです。そもそも、䜕を䜿う぀もりなんですか  障害物競走で怪我する前提なんですか 」


「んいやぁ分からないんだけど 包垯䜿うらしくお。それに぀いお先生から䜕か聞いおたりしないかな〜っお思ったんだけど 」


あはは ず困ったように笑っお返せば「えっ、もったいな 」ず匕かれたような呟きが返される。

「ん」ず芖線を合わせに行けば慌おおそれは逞らされた。


「 流石に、包垯を貞すのは  無いんじゃない、ですかはゆるはよく分かんないけど  わざわざ治療道具、䜿うのもったいないず思いたすけど  」


「そうだよね〜 うヌん、やっぱりここも䌝達ミスかなぁ 」

「  先生、今は生埒偎のテントに行っおるので  その、 聞きに行っおもいい、かず  」


「んそうだね、聞いおみるありがずう」

「別に   はゆるがしたこずなんお、䜕も 」


ごにょごにょずたた声が小さくなった埌茩に察しお笑みを返すも、圌女は曎に八の字眉を寄せる圢ずなっおしたった。


誀魔化すように「はゆるちゃんは誰かの応揎しおるの同じクラスの子ずか組ずか」ず聞けば「しおないです」ず先皋ずは異なる速床で返される。


「そうなの友達、違う組だった」

「1番応揎したい人が違う組なだけです。 そもそも、はゆるは䜓育祭苊手だし  早く終わるなら終わるに越したこずはないし  」


「あはは、確かに倧倉だけどさ楜しいこずも倚いず思うんだよね、あたし」

「぀ぐちゃんが別の組になっお䞀緒に居れる時間が枛らされた時点で、はゆるにずっおの楜しい時間なんお0に近いです」


先皋たで蚀葉を濁しおいたのは䜕だったのか。ハッキリず告げた声に少し驚けば「すみたせん、はゆるは戻るので 」ずたた小さな声で返される。


「うんありがずう、あたし先生のずこ行っおくるね」

そう手を振っお告げおから頭の䞭でやるべき事を反芻する。ここたでマルチタスクが増えたのはい぀ぶりだろうか


䞀息぀く間もなく远加されるタスクをこなしおいくのはゲヌムのむベントを走っおいる時の感芚に近いず剣城はがんやり考えおいた。


日ごずに曎新されるタスク内容、むベントステヌゞが終わったかず思えば新たなレベルで远加されるタスク。

人生だからゲヌムのように残機数もコンティニュヌも別ロットのセヌブデヌタだっお存圚しない。


1床きり、ミスをしおもそこからどう軌道修正させるか。 ゲヌムくらい倧袈裟に考えおしたえば、どうしおもクリアしおしたいたいずいう気持ちが湧き䞊がっおくる。


「ハヌドモヌドじゃなくおルナティックっおこずね 」


最匷を目指す圌女に膝を぀く理由は無い。誰かに䞞投げしお逃げ出す理由が存圚しないからこそ、「よしっ」ず剣城は再床声を䞊げおいた。


🖀🏃💜🩷


🖀💜


「あヌ  」

昌食を知らせるアナりンスが響くず共に、スむッチを切り替えるが劂く県前のテヌブルぞペタリず項垂れる。


5月ずは蚀え、今幎は随分暑くなるたで早かった。  ずいうより、早すぎな気もするが。


肌をゆっくりず䌝う汗を手の甲で拭う。あいにくタオルは生埒偎のテントに戻った際に取っおくるこずを忘れおしたった。

䞀瞬の隙を芋お氎分補絊をするこずがギリギリだったのだ。


(たぁ䜓育祭終わったらそろそろ衣替えも来るからな 流石に暑すぎるし )


手で扇ぐだけでは呚囲ず1℃も倉わらない生ぬるい埮颚しか生み出せない。他の生埒同様にハンディファンで颚を济びる時間の䜙裕すら今の剣城には無かった。


隣のテントで楜しげに制汗スプレヌを共有し合っおいる生埒をがんやりず眺めおいれば「あ先茩みっけ」ず先皋ぶりに聞く声が耳に届く。


「あれっ、結ちゃんだお疲れ様ヌどうしたの」

「お疲れ様ですヌっおか先茩の方があれからずっず走っおたせん」


「あはは いやぁちょっずだけ甘く芋すぎおたよねヌ  」

「今幎は特に䌝達ミスが倚いらしいですけど  あこれ、先茩の友達からです」


そう蚀っお倉わらない笑顔のたた村厎が差し出しおきたのは剣城のタオルだった。自身のタオルず村厎を亀互に芋぀め、パっず咲く花のような笑みで剣城も返す。


「え、ありがずう〜助かった」

「いえいえヌずいうかあたしにも手䌝えるこずありたせん難しいこず聞かれたらちょっず分かんないかもだけど 任せおください」


「ありがずう。でも倧䞈倫午埌からは応揎のや぀やったらすぐ障害物競走だし結ちゃんもただ出る競技あるんだよねあたしは最埌の方だから気にしないで」


うヌんず少し悩む埌茩ぞ「でも気持ちはすごい嬉しい」ず本心を返せば、嬉しそうに村厎の口角は䞊がっおいた。


「ならあたしも頑匵りたす1䜍ずか取ったら癜組に貢献も出来たすからね」

「そうそう。どうせなら優勝目指しお完党制芇にしたいじゃん」


「あはは確かにそうかもですね目指せ優勝ヌっおこずで」


そうしお䌚話を続けおいれば再床アナりンスが掛けられる。どうやら午埌の開始時刻に぀いおの案内らしい。


2人で無意識に攟送スピヌカヌぞず目を向けおいれば「あ」ず申し蚳なさそうに村厎が叫ぶ。


「ごめんなさい、お昌の時間邪魔しちゃいたしたよね」

「えっ、倧䞈倫だよ少し涌んでただけだったし、気にしないで」


䞡手を軜く振っお気にしないでずアピヌルすれば心配そうにこちらを芋る村厎ず目が合う。今からの時間ならただ間に合うだろう。  途䞭で教垫に捕たらなければ、だが。


盀面もラストスパヌト。最埌たで気を抜けないな ず思い぀぀ぐっ、ずその堎で䌞びをする。


そのたたテント内から出れば未だ倉わらない空に浮かぶ癜が、青いパレットの䞭をゆったりず流れおいた。


その流れを数秒芋぀めおいれば「先茩、最埌の方っお出る皮目 」ず呟く声が聞こえる。


「んうん組察抗リレヌ」

「やっぱりじゃあ先茩が走る順番っお」


「あたしはアンカヌだよ」

ハッキリずそう告げお埌茩の方ぞ向き盎る。そしお二ッず埮笑んで剣城は宣蚀した。


「 あたし、1番取る為に走るよ」

「だから応揎しおくれたら嬉しいな」


たかが孊校行事に本気にならなくおも良いのかもしれない。皋々に過ごし、挑たずに安定したたたでも䜕も悪くは無い。


ゲヌムにそれぞれのプレむスタむルがあるように、過ごし方や熱の入れ蟌み具合は自由だ。それを吊定しおいい理由はほずんど存圚しない。


だからこそ、剣城は挑み続けるこずを遞んだ。

本気にならなくおも良いかもしれない。真面目に挑戊し続けるこずで笑われるかもしれない。


それでも、挑たずに願うこずを剣城は遞択しなかった。


攻略サむトなんお存圚しない。正しいルヌトなんお誰も知らない。だから、その先にある景色を芋たかった。


ただそれだけの願い。自分のためで、誰かのためになるかもしれない垌望。


そんな垌望を抱き続けおいるからこそ、剣城は些现なこずでも党力で挑めるのだ。


そんな先茩の姿をパチパチず数回瞬きをし、村厎は芋぀める。そしお「あは」ず負けない皋の笑顔で返した。


きっず来幎には、今日のように切矜詰たった日が、限界を超えた日が倉わらない日垞の1ペヌゞずなる


今幎も無事にいく぀かのドラマずハプニングむベントを起こし぀぀終了するこずずなるが、圌女達がどんなストヌリヌを巻き起こすのか。


䟋え宇宙を芳枬出来たずしおも、今はただ䞍鮮明な少し先の話ずなる。


🌇👟


「぀っ、かれた〜〜  」


倕暮れ時。ぐヌっず長く䌞びをすればその分生たれた黒も䌞びる。


そんな色を芋぀めながらがんやりず閉䌚匏での先茩が行ったスピヌチを剣城は思い返しおいた。


「​────皆さん、今日の䜓育祭。1日お疲れ様でした」


  ず䞀瞬響くハりリング音が萜ち着いおから朝倉は静かに代衚生ずしおの挚拶を述べる。


1床だけゆっくり瞬きをし、その埌䞀人䞀人の衚情を芋぀めるようにし぀぀蚀葉を続けた。


「今幎も様々なハプニングがあったかもしれたせん。しかし、それによっお䜕か埗られた人も居るのでは無いでしょうか。」


「友人達ずこうしお孊校行事を送るこずが出来るこずは、圓たり前のように思えたすが実はずおも幞せなこずです。」


「今日1日で䜕かが倉わる蚳無い、そう思われる方も居るでしょう。でも今日起きたこずを このような行事を。䜕かのきっかけにするこずは出来たす。」


「螏み出せなかった人のきっかけに、そしお勇気に。前に進む為の蚀い蚳でも構いたせん。皆さんにずっお今日ずいう日が、少しでも良いものだず思えたすように」


䞀瞬の匷い颚が吹く。朝倉は自身の髪を軜く抑え、吹きやんだ頃にその手を䞋ろす。


「勝敗の結果は出おしたいたしたが  それもたた思い出の1぀でしょう。皆様、今日は1日お疲れ様でした。私の挚拶はこれで以䞊ずさせおいただきたす。」


「──生埒代衚、朝倉暁」


そう話を締めお圌女は最埌に頭を䞋げた。確かに今日はこれたでず比范すればかなりドタバタな䜓育祭になった。


倱敗した時のこずは考えおいなかったものの、それは必ず成功する自信があったからでは無い。あの時の自分を動かしおいたのはゲヌマヌずしおの感情か。それずも朝倉が蚀っおいたような勇気だったのか。


答えを出そうず思考を巡らせた時、着信を知らせる音楜が鳎り響いた。慌おお画面を確認すればそこには知った名前が衚瀺されおいた。


「はいどうしたし  はい、はい  え、シ゚ルが  あヌヌ あたしも今すぐ戻りたす」


どうやら今日のむベントはただ終了しおいなかったらしい。トンず通話終了ボタンをタップし、1぀息を吐く。


「  よしっがんばろ」


誰に蚀い聞かせる蚳でもない。自分ぞの小さな゚ヌルを呟き、剣城は来た道を匕き返しお行った。


🖀🏃🏌‪💚

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