🍫あなたのための甘いひととき。
💚ྀི💙ྀི >>> 🍫
2月の初め、生徒たちは来たる祭典に浮き足立ち、教師はそんな生徒たちが飛び立たないよう目を光らせている。そんな雰囲気から漏れず意気揚々としている女子生徒が1人。
「最近の玲優、まるで足が浮いているようですけど」
「あー…そりゃあまあ、"アレ"が近い…からかな?」
「え〜?あれって?」
高等部2学年の教室で意気揚々とした玲優と面識が深い3人が彼女を見ながら話し合っている。彼女は浮き足立つ所かいつもより数センチ以上は浮いているのではないか、と錯覚するほどのふわふわ具合に各々あたたく見守っている。
その視線と会話に気づいた玲優が3人の元にふわふわと駆け寄ってくる。
「みなさ〜ん、今年はどんなチョコがいいですかぁ?れゆ、今年はたくさんがんばるのです〜!」
予想通り、と言うべきだろうか。甘い空気を更に甘くしそうな彼女の声と問いかけに3人は各々の表情を浮かべながら玲優の問いかけに答える。
「私はどんなチョコを頂いても嬉しいですわ!」
「あたしも?いいの?…うーん、チョコ…チョコ……待って、ちょっとスマホで調べる」
「チョコくれるの?あはは、あたしは甘かったらなんでも好き!」
「ふむふむ…うーん…なんでも、なんでもぉ〜…迷うのです~…」
三者三様の曖昧な答えに玲優は腕を組みふんふんと考え込んだが、しばらくして名案を思いついた様でガタリと音を鳴らして椅子から立ち上がった。
「みんなで作りあいっこするのです!きっと、いえ!絶対たのしいのです〜!」
名案かとでも言うように目をキラキラさせ、3人に対して前のめりに提案する。彼女の突飛かつ可愛らしい言葉は日常茶飯事だからか、それともこの甘い空気に酔ったからだろうか、3人とも驚きつつも肯定的だった。
「それなら四人で一緒に作りましょう!御三方を家に招待致しますわ!」
「お菓子は映えの基本だし、4人で作ったらまぁ…美味しいか」
「ふふ、味見なら任せてよ!」
「絹も作るに決まっていてよ?」
「え〜?オーブン爆発するかもよ?」
「そんな面白映え要らないんですケド...」
「ふふふっ!楽しみなのです!」
教室の一角、甘く愛おしい空気が4人の女学生を包み込んだ。
🤎🤎🤎
🍫💡🌃
2月14日、バレンタインも終わりを告げる18時頃。
まだ冬の寒さと暗さが一帯を覆っていたが、少女たちはチョコレートでお腹を満たし帰路に着く。
絹は「これは後輩にあげるチョコで〜、これはあさちゃん先輩の分!へへ、紅茶の茶葉入れてみたんだよ〜」と自慢げに話し、芥は「綺麗にできたねー……マジ、まじでオーブンから煙出した時は弁償にビビったけどね…」と感慨深く甘い一時を思い返している。
和気あいあいとしたクラスメイトを先頭に親友同士の玲優と馨子もにこやかに笑みを浮かべ、4人の帰路も終わる。
駅に着くと絹と芥が「また明日ね」とさよならをし、真っ直ぐと改札の向こうへと歩いて行った。駅はバレンタインだからか少しのイルミネーションで飾られており、赤や桃色の電球が煌めいている。
ふわふわと甘い空気で包み込まれた影響か、ただ楽しい時間が終わってしまうことが惜しかったのか、どちらからともなくイルミネーションの方へと歩みを進める。
「綺麗ですわね」や「あの形...なんでしょう?」などの他愛ない会話が続く。しかし、その他愛ない会話すら楽しくて。
「あのとき、あの絹のハプニングを収めるなんて、さすが玲優ですわ」
「ふふ、あのときのきょ~ちゃんのびっくりしたお顔、と~ってもかわいかったのです~」
「なっ…!そ、そんな顔してましたの!?い、いってくださいまし!?」
今日起きたハプニングや近々行われる期末考査、もっと先の予定であるはずの修学旅行の話が続いた後、玲優が話題を切り出した。
「あの、ね…これ、受け取って欲しいのです…!」
丁寧なラッピングがされた猫型の小ぶりの箱。
今日行われていることや、雰囲気からしてバレンタインのチョコレートだと容易に想像できたであろう馨子はチョコレートを受け取りしばらく放心した後、玲優が不安気な雰囲気を浮かべる隙もなく喜びに満ちた顔に変わった。
「まぁ…!これ、私に?いつの間に作ってたんですの?」
「昨日つくってたのです!きょ〜ちゃんには特別、違うものを上げたくなって………きょ〜ちゃんは、れゆのだ〜いすきなのです!」
「ふふふっ…うれしい!でも私、何も用意できてなくって…」
「わわっ!気にしなくていいのです!れゆがしたくてしただけなのです!チョコを受け取ってくれただけで、とっても嬉しいのです!」
お互い嬉しくなってしまって、二人で跳ねるようにぶんぶんと繋ぎ合わせた手を動かしている。数分間、しばらく感情のままに動いていたが寒さと周りとの温度差で落ち着きを取り戻す。
「嬉しくなっちゃって、つい舞い上がってしまったわ…」
「れゆもいっぱいいっぱいになっちゃって、ふふ、顔があったかいのです」
「ほら」と言ったように馨子の手を取り、赤くなった玲優の頬の上に重なるふたつの手のひら。馨子はじんわりと温かくなっていく手のひらを感じとり「ほんとうですわ、ふふっ、あったかい」と言って玲優に微笑みかける。
周りも自分たちも、マフラーやコートを羽織り外の寒さに震えているはずなのに、玲優の体温がまた上がった気がした。
🧣💛💚💙
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