ep.14-5 待ち望まれた開店!
「待ってたぞ!」
「元気にやってたか!」
「早く開店しろ!!」
「おい、押すなって!!」
「料理、早くたべたいな~」
大将が扉から出てきた瞬間、店の前にいた客が口々に叫んだ。
店の前にはたくさんの客がごった返していた。
客としては人間はもちろん、色々な種族の魔族も交じっていた。
その様子を見た大将は客の方に一度頭を下げる。
そして、店の前にかかっていた『閉店中』の札をクルッとひっくり返し『開店中』にしてから、客の方に向かって叫んだ。
「お待たせしました!!小料理屋店『ゆうなぎ』、開店させていただきます!!」
「おぉぉぉぉ!!!!!!」
大将の言葉に客がワッと叫ぶ。
そしてゆうなぎの中に客が一気になだれ込んだ。
すずねに案内された客はつぎつぎと自身の好きな料理を注文する。
すずねはその注文に応えるべく、必死に働いていた。
「たいしょう、からあげていしょく!!」
「たいしょう、ぶりだいこんふたつ!!」
「たいしょう、あつかんにごう!!」
「あいよ!唐揚げ定食とぶり大根2つと熱燗二合ね!!」
大将も料理を作りながら注文に応える。
できた料理を次々にすずねが運び、料理がきた客はみんな目を輝かせた。
そしていただきます、の言葉の後に続いて勢いよく料理を食べ始めた。
久々に大将の料理を食べた客はみんな美味しさのあまり笑顔になっていく。
その様子を見ていた大将やすずねも笑顔になった。
そして食べている客の一人が何かに気づいたのか、他の客に話しかける。
「なぁ、すずねちゃんのもふもふの尻尾って3本だったっけ?」
「いや、確か2本だったと思うけど……あれ、確かに3本だ」
「なっそうだろ!?すずねちゃんファンとしては見逃せないね」
「確かに……どうして増えたんだろう?」
「聞いてみるか。すみませーん!」
尻尾に気づいた客がすずねを呼び止めた。
「はい!ちゅうもんですか?」
「いや……ちょっと聞きたいんだけど、すずねちゃんのしっぽ増えてない?」
「えっ!?」
すずねは無意識に3本のもふもふ尻尾をうねうねと動かした。
その様子に客からおぉぉ!という感嘆の声が響く。
その声が恥ずかしかったのか、すずねは顔を赤らめる。
「はぁ……すずねちゃん!!あっちのお客さんが呼んでるよ!!!」
「あっ、はーい!!」
大将の声にすずねちゃんが反応して、その席のお客に頭を下げて次のテーブルまで行った。
「あぁ……行っちゃった。まぁ三本でもいっか!!可愛いし!!」
「そうだよ!すずねちゃんは尻尾がどうなってもすずねちゃんだし!!」
お客はそう言うと、自分たちが頼んでいた料理に再び手を付け始めた。
そうこうしているうちに時間はあっという間に過ぎ、閉店の時間になる。
「「ありがとうございました!!」」
大将とすずねは最後の客にお礼を言って引き戸を閉めた。
二人はふぅと言って自然とテーブル席に座った。
そして大将がすずねに向かって話しかける。
「すずねちゃん、お疲れ様」
「おつかれさま!みんなえがおだったね!!!」
「そうだね。誰もいなかったらどうしようかと思ってたけど......
この店が愛されていることに気づかされたよ」
大将はそう言うと、手を上にあげてうーんと伸びをした。
すずねもそれにつられて伸びをする。
「人間も魔族も含めてたくさんの人が色々な料理を食べに来てくれる……
そんな料理屋を目指してたんだけど、知らない間に達成できてたのかな」
「たいしょうのりょうりがおいしいからだね」
「いや……」
大将は身を乗り出してすずねの頭を撫でる。
「すずねちゃんのおかげだよ。オーダーも助かってるし。
すずねちゃんが来てから、お客が笑顔になることも増えたと思うから」
「そうなの?」
すずねは首をかしげる。
大将はニコリとして話す。
「もちろん!これからもよろしくね!!」
「うん!!!」
すずねは満面の笑みで頷いた。
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祠が壊されて小料理屋に帰ると見知らぬ『もふもふ』妖狐が!?~一緒に住んで壊れた祠を直していたら、なぜか妖狐の尻尾が増えていきました~ 美堂 蓮 @mido-ren
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