ep.11-2 店での作戦会議

大きな音と光にごつい男と華奢な女は叫ぶ。



「クソ……まぶしくて何も見えない!!!」

「あの野郎!!」



二人とも目を閉じ、一瞬怯んだ。

すると、どこからともなく背中に斧を背負ったルトが走ってくる。



「うぉぉぉぉ!!!!」



ルトは叫びながらごつい男に突進し、押し倒す。

そして大将もすぐに目を開き、華奢な女の方に突進した。



「邪魔だ!」

「ぎゃあ!!」



華奢な女は突き飛ばされ、掴んでいたすずねの腕を離す。

そして、そのすずねの腕を大将は掴んで叫ぶ。



「すずねちゃん、走るよ!!」

「!!!」



すずねも光と音で苦しんでいるものの、

大将の声が聞こえたのか、目をつむりながらも頷いた。

そして大将は元来た方向にすずねと一緒に走った。



ルトも大将が走り始めたのを見て同じ方向に走り始めた。

混乱している二人を置いて、どんどん距離が離れていく。

大将とすずね、そしてルトはがれきの間を走り抜けていく。

大将は後ろを向いてルトもついてきてることを確認した。



「はぁ、はぁ……良かった。どうにか逃げれそうだ……

すずねちゃん、大丈夫?」



コクッ



すずねはまだ衰弱しているのか返事はできないようだが、

黙ってうなづいた。

それを見た大将は安心する。



「まさか、即席で考えた作戦が成功するとは……

 ルトからもらった閃光玉が役に立った。これでとりあえずはどうにかなりそうだ」



大将は走りつつも、何かを思い出しているようだ。



◆◆◆



時刻は14時。

店の中にいる大将とルトは、机を挟んで真剣な顔で話をしている。



「大将、時間もない。どうやってすずねちゃんを助けるかを考えよう」

「とはいうものの、敵の数も武器も何もないこの状況でどうするか......」

「とりあえず、敵の数は少ないと思っていいと思うぞ」

「......どうしてだ?」



大将は眉をひそめてルトに聞く。

ルトは答えるのが少し悔しそうにしながら話す。



「俺は大将の店の横にある祠の扉を付けていた。

 で、すずねちゃんは店から祠までの間で拉致された。

 ということは、もし大勢でなんかやっとったら俺は気づいていたはずだ」

「確かに。ちなみに怪しいやつとかは居なかったのか?」



ルトは首を横に振る。



「この店の前の通りは人通りもそれなりにあるし、流石に覚えてはない。

 逆に言えば、普段と同じぐらいの人通りしかなかったということだから、

 そんな大勢ではなかっただろうて......俺がその時にすずねちゃんに気づいていれば.......」

「起こったことを気にするより、今どうするかに集中しよう」



大将はルトに話しかける。

ルトはゆっくりと縦に一度頷き、話を戻す。



「会う場所に敵の仲間がいる可能性も否定はできないが、

 すずねちゃんを捕まえるのに大勢とは正直思えない」

「なら、とりあえずは2~3人として考えるか」

「そうだな。でだ、その人数なら俺に一つ策がある」

「?」



ルトは自身の腰あたりに手を回す。

そして何かを取り、机の上に置いた。

そこには上に赤いボタンのついた丸い玉が置いてあった。



「これを渡しておこう。俺は斧を持っているからそれで戦うが、大将は戦うのは向いてないからな」

「これは?」

「閃光玉だ。上のボタンを押して投げれば、光と音で相手を足止めできる」

「......どうしてこんなものを持っているだ?」

「ドワーフは色々な鉱山に鉱石を取りに行くんだが、その時に魔物に合うことがある。

 友好的だといいんだが、全員が友好的とは限らないからな」

「なるほどね」



大将は赤い玉を一つ手に取る。

持った時に少し驚く顔をする。



「......軽い」

「まぁ、最新式の魔術組み込み型だからな」

「なら、俺でも投げれそうだ」

「どうしても困ったときに使ってくれ。これは1つしかストックがない」

「わかった」



大将は赤い玉をポケットに入れつつ、さらに尋ねる。



「落ち合う時どうすればいい?」

「そうだな......」



ルトは腕組みをして悩みつつ、口を開く。



「今回、大将は一人で会わないといけない。

 であれば、俺は他のルートでばれないように近づくしかない」

「そうだな。ただ、ルトが近くに来たことはどうやって知ればいい?」

「......あそこらへんにはがれきが大量にある。がれきを投げよう」

「そんなんで本当に大丈夫......なのか?」



大将は心配そうにルトに尋ねる。

ルトは大きく首を横に振り、大将の目を見て話す。



「大丈夫とか関係ない。俺たちはどうにかするしかないんだ。

 そもそも、この短時間で完璧な作戦は無理なんだ。

 実際、俺が近くに来たことを知らせても、どうにもならないかもしれない。

 そうであっても、俺たちは......すずねちゃんを助けるしかないんだ」

「ハァ.......確かにそうだ。わかった」



大将は大きく息を吐きつつ、ルトに答える。

ルトは頷き、再び腰のあたりに手を持っていく。

そして再び何かを机の上に置いた。



「大将、これも持っていけ」

「......これは?」

「念のためのお守りだ。これはな......」


◆◆◆


何かを思い出した大将は走りながら再び自身のコートのポケットに手を入れる。

そして何かの感触を確かめているようだ。

すると、大将の目の前に人影がサッと現れる。



「お前ら!!!!!!」



走っていた大将の目の前に、信じられないスピードで華奢な女が現れた。

大将は行く手を防がれ、立ち止まる。


華奢な女はさっき突進されたためか、仮面の上半分が欠け、

頭から被っていたローブも頭部分は肩まで落ちていた。

華奢な女の顔は猫のような目と耳がついていた。

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