ep.11-3 二人に挟まれて
大将が立ち止まりその後ろから追いかけてきたルトも追いついた。
大将とルト、すずねは華奢な女に行く手を阻まれる。
女は仮面で顔の下半分が見れなくても、猫のような細い目と耳がピンと立っていることから激怒していそうなことがわかる。
華奢な女が一度呼吸を整えてから口を開く。
「はぁ、はぁ……この顔をみて生きて帰れると思うなよ!!!」
「くそっ。大将とすずねちゃんは下がってくれ!!」
ルトは大将とすずねの前に出て、華奢な女と対峙する。
すずねは相変わらず手を縛られたままで顔が真っ青のまま、
ルトは全力で走ったためか、少し息が切れているものの、
大将は目の前の華奢な女を睨みつけながら、ルトに話す。
「くそっ、いい作戦だと思ったんだが……」
「うまくいったさ……想定外だったのは、こいつが魔族で猫又だったってこと以外な。
どうせ後ろからあのごついのも来るハズだ。で、あいつもどうせ……」
ルトが大将に話しかけようとしたとき、二人の後ろの方からドシドシと音を立てて走ってきた。
そして、二人の前で止まる。
「はぁはぁはぁ……お前ら!こんなことして生きて帰れると思うなよ!!」
ごつい男は仮面もローブも外れていた。
ごつごつしているその顔は、まぎれもなく魔族のオークそのものだった。
オークが到着したことで大将、すずね、ルトは魔族二人に挟まれた格好となる。
大将はとっさにすずねを守るためか、後ろから来たオークとすずねの間に立った。
猫又が一歩前に出て、ルトに話す。
「お前さん所の旦那の腕を一本切っておけば、みんな死ななくて済んだのに……結局こうなるのか」
「がはは。そもそも、お前らがすずねちゃんを誘拐しなければ何も起こらなかったんだがな」
「……」
猫又はスッとすずねの方を見て、少し唇を噛む。
そして少し小さな声で答える。
「そうだな……私も同族に手をかけるほど落ちぶれてしまうとはね」
「お、おい!!」
猫又の発言に逆サイドにいたオークがうろたえる。
「今更やめるとか言わねぇだろな!?」
「それは、できない。私達は……どうしてもたくさんの金がいるからな!!」
猫又はローブの腰あたりから短剣を引き抜き、一気に目の前にいるルトに近づく。
ルトも背中に背負っていた斧を両手で持って構える。
「フッ」
「ふん!!!」
ギン!!!
二人の短剣と斧が当たり、火花が散る。
猫又は素早い動きでルトに攻めるが、ルトもその動きに対応していた。
その二人を尻目に、オークと大将が話す。
「恨みはねぇが、許してくれよ」
「それは断る。俺たちは今ここで死ぬわけにはいかないからな」
「ハァ……お前みたいな貧弱な人間に何ができるっていうんだ?」
オークはため息交じりに話す。
だが、大将の目はじっとオークの方を見つつ、諦めたような感じではない。
スッと大将はコートの中に手を入れる。
それを見たオークは持っていた牛刀を構える。
「同じ手は二度食らわない。次は必ず……切る!!」
「それが本当か、試させてもらおう!!」
大将はポケットから丸いものを手に取り、自分とオークの間に投げる。
それを見たオークは目を閉じ、耳を手でふさいだ。
ぷしゅー
もくもく……
丸い物からは光や音ではなく、大量の煙が発生し周りが見えなくなる。
大将はすずねの腕を取って逃げる。
目を閉じていたオークは、音も光もないことに戸惑う。
そしてゆっくりと目を開くと、一面が煙で覆われていてさらに困惑した。
ゆっくりと状況を理解したのか、顔が一気に真っ赤になって叫ぶ。
「あいつ……俺をだましたな!!!!」
オークは煙の中に走っておいかけた。
猫又とルトの戦いにも煙が覆う。
煙に気づいたルトは猫又とのつばぜり合い時に一気に押して猫又の体制を崩し、地面に倒れ込む。
それを見たルトは猫又に話す。
「すまんな、俺たちはさっさと逃げるわ!ガハハ!!」
「ま、まて!!」
ルトは煙の中に消えた。
猫又は素早く立ち上がり、煙の中を追いかけた。
大将とルトは逃げる方向を決めていたのか、煙の中で落ち合う。
「よかった……念のための作戦がうまくいった!あとは馬車に逃げ込むだけだ!!」
「ガハハ、そうだな!さっさと逃げよう!!」
「そうだな。すずねちゃん、大丈夫か?手首の縄はあとできるからね!!」
「……」
コクッ
言葉はなかったものの、顔がこわばったすずねは頷く。
それを見た大将はすずねの腕を引っ張りながら叫ぶ。
そして、3人は煙から抜けだした。
三人は必死に走る。
そして目の前に馬車が見えた。
「良かった!!馬車だ!!」
「これで逃げれるぞ!!すずねちゃん、もう少しだ!!」
大将はそう叫びながら、後ろにいたすずねの方を見た。
すずねは馬車が見えたことに安心したのか、少し顔から緊張感が抜けていた。
一方、大将の顔は凍り付く。
大将は引っ張っていたすずねの腕を力任せに引っ張る。
すずねは動揺しながら体制を崩し、大将は自身の身を投げ出す。
グサッ!!
後ろから来ていた猫又は大将の胸あたりに短剣を刺した。
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