ep.5-1 すずねの尻尾が!?

アストラが来た次の日。

大将は朝目が覚め、いつもの日課通り朝ごはんを作る。

今日はご飯と海苔、お味噌汁、卵焼きとシンプルだ。

朝ごはんの準備が完了したものの、すずねがまだ起きて来てない。



「仕方ないなぁ……」



少しため息をつき、すずねを起こしに行く。



「すずねちゃん!ご飯だよ~……ってあれ?」

「たいしょう……」



すでに起きていることに大将は少し驚く。

すずねは座った状態で動かず、もじもじして困った様子で大将の方を見つめた。

困っているのを感じ取ったのか、声をかける。



「どうした?」

「これ……」



すずねは自分自身のお尻の方を指をさす。



「……?」



指さす方を見てみるが、すずねの尻尾が床にだらんと広がっているだけだ。

大将は首をひねりながら尋ねる。



「尻尾がどうかしたか?」

「......」



すずねは黙ったまま動かない。

大将も目を凝らしてみるが、

何が変なのか理解できていないようだ。



もふっ

もふっ



尻尾が揺れる。

ただ1本ではなく、2本揺らめく。



「あれっ?」



大将は自身の目がおかしいと思ったのか、目をこすり再度見る。



もふっ

もふっ



二本が別々にゆれていた。



「あさおきたら、にほんになってた」

「……なるほど。俺の目がおかしい訳じゃないのか。

 すずねちゃん、体に異変は?」



フルフル

返事の代わりに横に首を振る。



「尻尾が二本になっただけ?」



コクッ

今度は縦に首を振った。



「……なら、まぁ気にしなくていいんじゃないかな。

 とりあえず、朝ごはん食べて考えようか」

「うん」



すずねは立ち上がる。

二本になった尻尾は意思があるかのように左右にゆれ動いていた。



二人はいつもの通り朝ごはんを食べる。

大将はご飯を食べつつも、すずねの体調が心配なのか、色々声をかけていたが、

すずねは尻尾が二本になった以外はほとんど何も変わらなかった。

食事を食べ終え、大将はすずねに話しかける。



「尻尾については考えても仕方ないし、一旦考えるのをやめようか。

 ルヴィアさんとかにも聞いてみるし」

「わかった」

「そしたら......」



大将は立ち上がる。



「ルトさん、祠直してくれたかなぁ……

 日課のお参りついでに見に行くか。すずねも来る?」

「わたしもいきたい!」

「ならいこうか」

「うん!!」



大将とすずねは店の外へ行く。

そして歩いてすぐの祠まで歩いた。



「おぉ!」

「きれい!」



壊れた祠があった場所には、新品の祠が立っていた。

祠は木でできていて、以前と異なり腐っているところももちろんない。

木の肌色が鮮やかで、そこに木目がきれいについていた。


ただ祠は扉もなく、中は空洞となっていた。

そして壊れた時に合った色々な残骸などもきれいさっぱり無くなっていた。



「ルトさん、周りの片づけも全部やってくれたんだ」

「ると、すごい!!」

「次にルトさん来た時に何かおごらしてもらおう」



二人はで祠に向かってしゃがむ。

何もない祠ではあるものの、大将は慣れた感じで、

すずねはまだぎこちないが、二人とも手を合わせて呟く。



「「いつもありがとうございます。

今日も良い一日でありますように」」



気持ちの良い風が二人の頬をなでた。

その後、結局何もなく夜まで店を開く準備をし、夜の営業が始まった。

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