ep.1-3 謎のお爺さん

お爺さんは全身の服がひげと同じく白い。

そして癖なのか、長く白いひげを手でさすりながら大将に少し厳しめの口調で尋ねる。



「その二つをどうするつもりじゃ」

「うーん。祠が元に戻るまで、とりあえず預かっておこうかと」



手元に持っていたヒビの入った青い玉を見ながら大将は答える。

お爺さんの顔がさらに険しくなる。



「この祠が壊された今、この世界には良くないことが起こるじゃろう。

 それをお前さんはそれを受け止めるつもりなのか?」

「……さぁな。難しいことはわからない。でも、俺はこの町のこの場所に店を構えた時から

 たまたま横に合った毎日この祠にお参りするのが日課だった」



大将は自身の服についた埃を払いつつ立ち上がりながら、

お爺さんに向かって真面目な顔で話す。



「俺の店は......この祠と共にあったと思っている。どうして今こういう状況なのかはわからない。

 でも、これまで恩を返すために、祠を元に戻すことは俺の役目だと思う」

「そうか」



お爺さんはさっきまでの顔が嘘のように急に笑顔になり、にこりと笑った。

そして優しい口調で語るかのように話す。



「であれば、お前にそれらを託そう。

 色々大変になるかもしれんが......是非、この祠を直してくれ」

「あぁ。もちろんだ」



大将はおじいさんにニコリとして答える。

その顔を見たお爺さんは何かを思い出したのか、手をポンと叩く。



「そうじゃった。祠が壊れてかなり力を失っておるから......そやつも頼んだぞ」

「そやつって?」



大将はお爺さんに聞こうとした瞬間、急に強い風が吹く。

祠を中心に砂埃が舞い、大将は砂が目に入るのを防ぐために目を閉じた。

少しすると風がピタっと止まり、大将はゆっくりと目を開く。

すると、お爺さんがいた場所には誰もいなかった。



「さっきのお爺さんは?」



大将は呟きながらキョロキョロと周りを見るが、誰も見当たらないようだ。

首をかしげながらも、石の台座と青い玉を店まで大切に持ち帰った。

そして、もともとあった神棚のところに石の台座を置き、その上に青い玉を置いた。

すると衛兵が複数人、店に入って来た。



「この店の大将か?」

「そうだが、なにか」

「申し訳ないが、詰所まで来てもらおう」

「.......放火だからか?」

「そうだ。申し訳ないが、色々確認したいのでな」



大将は今日何度目かわからない大きなため息をつく。

そして衛兵と一緒に詰所まで行った。

詰所では放火はこの町では重罪であるためか、根掘り葉掘り聞かれているようだ。

そして、夜遅くに解放された。



大将はかなり疲れた顔で店の前に立つ。

【準備中】という札を眺めて呟く。



「さすがに、いまから店を開くのは難しいか……

下処理した料理が余ったが、仕方ない。明日に回そう」



そう呟きながら、自身の店の引き戸を開けた。




大将の目の前にもふもふのしっぽと獣の耳がついている女性が床に倒れていた。




床に倒れている女性は10代後半ぐらい。

髪が腰まで長く、髪は金色のように見えた。

ただ弱っているのか、かなりぐったりしていた。


大将は女性の方に慌てて近づいた。

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2024年12月3日 07:03
2024年12月4日 07:03
2024年12月5日 07:03

『もふもふ』で超人気小料理店へ!?~祠が壊されて店に帰ると見知らぬ妖狐が!~ 美堂 蓮 @mido-ren

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