第5話 謎解き1
読野は手紙をマグネットでホワイトボートに貼り付け、続けて、黒いペンで【手紙の謎】と書いた。
「手紙の謎について話す前にあと二人、この議論に参加してもらいましょう」
「二人?」
部室の扉がゆっくりと開いた。扉から現れたのは悠平だった。
「なるほどね、扉越しに事情は聞かせてもらったよ」
「創…悩んでいるなら相談しろよ!」
「俺はこういうのは得意じゃないけどさ、何か力にはなれると思うぜ!」
今までのやり取りを聞かれていて、少し恥ずかしい気分だが、それよりも友達が協力してくれると言ってくれるのが嬉しかった。
「お願いします」
「で、
悠平の後ろに隠れていた、少女がひょこっと顔を出した。
「
「読野さんのご命令とあればなんでもします」
「創さん、さっきはすみませんでした」
「読野さんのご命令とあれば、命を張って対応する必要がありますので、つい力が入り過ぎてしまいました」
謎解きに協力してくれるというのであればさっきほどの無礼は水に流そう。
読野の命令に盲目的な以外は、普通の人そうな感じがするので、議論に参加しても手助けしてくれそうだ。
「お願いします」
四人は部室中央にある椅子に座った。
今までは一人だった謎解きも四人だったら解けるような気がしてきた。
四人が顔を見つめた状態から、読野が口火を切り、議論が始まった。
「本題の手紙についてだけど、【立花咲より】【2013年4月1日】【隠した。目印は君が持っている】という言葉から分かることは、手紙は立花咲さんが差出人ということ、だけだと思うの」
「だから、事件が起こるまでに、咲さんの行動でヒントになるものがないか、知る必要があると思うのだけど」
「創君、何か思い当たる節はあるかしら」
手紙の文から推測ができないのなら、咲の行動から謎を紐解くしかない。
「うーんそうだな…」
思い当たる節と言われても、手紙に直接関係する話はしていないしな。
「うーん…」
俺が、うんうん、うなされていると悠平が言葉を発した。
「なぁ、創。その咲ちゃんって、今までお前から一度も聞かなかった名前だけど、同じ学校の友達か?」
「お前とは、小学生からの友達だけど一回もそんな話聞かなかったぞ」
「そうだな、確かにどういう馴れ初めか、話しておくべきか」
「約七年前、2006年8月、俺が少年サッカーチームの練習から帰る時に、帰り道の途中の公園で自主練をしていたんだ」
「そしたら、公園の木の下で、体育座りをして、顔を膝に埋めている咲がいたんだ」
「気になって声をかけたら、そこから仲良くなって、ほぼ毎日遊ぶようになった」
「創…お前…手が早いな!他にもこんな話ばっかりじゃないだろうな!」
「いるわけないだろ!」
「こういう反応されるから、お前には言わなかったんだよ」
「お盛んなのはいいと思うのですが、咲さんとはその時が初対面ですよね?なぜ話しかけようと思たんですか?」
「咲はピアノの天才なんだ。そんな彼女でも、上手く弾けない曲があって落ち込んでいたらしい」
「その時、俺もサッカーでスランプだったから、自分と重なるものがあって話しかけた」
「今は失敗ばかりだけど、続けていたら必ずその失敗が、成功への過程に変化する瞬間が来る。だから今は信じて続けるしかない。一緒に頑張ろうってね」
「創さんいいこと言いますね!咲さんが創さんのどこを気に入ったのか、なんとなくですがわかりました」
「その後、咲ちゃんは元気になったのか?」
「ああ、後日、公園で会った時、課題曲をクリアできたって俺に報告してくれた」
公園で、【やったよ!ついにできたんだ!】と言ってきた、彼女の笑顔を今でも覚えている。
かわいいことに、リュックに楽譜まで入れて俺に見せてきた。
そんな彼女の純粋なところに惹かれたのかもしれない。
楽譜は、無数の音符と記号が五線譜で覆いつくされていたことを思い出した。
「楽譜を見せてくれたけど、本当に弾けたのか疑いたくなるぐらい難しそうな曲だったよ」
「それでさ、俺のおかげだって言ってさ…」
俺はあることを思い出した。
机の下に置いたバッグから、あれを取り出した。
「これ、花の栞」
「楽譜に挟んであったもので、咲きが励ましてくれたお礼にって、くれたんだ」
「今でも、大切に使っているよ」
栞はラミネートで加工されている。
俺が大切に使ったからか、咲の作り方が上手かったなのかは分からないが、約七年経った今でも当時と変わらない形をしている。
「わぁ、マーガレットの花だ!綺麗だね!」
「雪上、花に詳しいのか?」
「うん、大好きだから子供の頃よく図鑑を見ていたんだよね」
話を聞くと、雪上は花に造詣が深く、マーガレットに関する知識を教えてくれた。
とても熱心に…
「で、原産地はカナリア諸島でね!一年間咲いていて…」
スイッチが入った雪上を、読野が言葉かぶせることで静止した。
「えーと、本題からずれているので話を戻すわよ」
「創君、咲さんとは公園以外では会っていないのよね?」
「そもそも、待ち合わせに来られなくなったからといって、咲さんの家に行くなり電話するなり他に方法はあるはずよ」
「ああ、公園でしか会っていないよ」
「咲の家庭の方針が勉強とピアノ以外は禁止の方針だったから、遊びなんて言語道断」
「両親に黙って公園にきていたらしい」
「だから、家の場所や電話番号を聞いても意味がなかったから、聞いてなかったんだ」
「両親の教育方針が、放任主義だからさ、こんな家もあるんだって信じられなかったよ」
読野は、真剣な表情から口角を下げ少し笑った。
「ふふ、そういうことね」
「読野、どうしたんだ?」
「【隠した。目印は君が持っている】の意味が分かってきたわ」
俺は、身を乗り出して読野の顔を見た。
「分かったのか!早く教えてくれ!」
「あくまで、仮定として聞いて欲しいのだけど…」
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