第48話 グッズ販売2
扉を開けた瞬間に、ドーム2,3個分ある広い会場に地響きの様に響き渡る大きな歓声。
隣にいるレイン達と会話が出来ない程の大歓声である。
その全てが僕・・・・・【ゴースト】へと向けられていた。
「さぁ!【ゴースト】様!壇上へ上がって下さい!こちらは拡声魔動具です!こちらを使ってリスナーの皆様へご挨拶を!」
アルフィンは、聞こえる様に耳元で大声で叫びながら僕を誘導する。
そのまま登って壇上へと上がった。
キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!
キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!
キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!
キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!
ゴースト様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!
ゴーストぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!
素敵ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
悲鳴。
奇声。
歓声。
まさしく阿鼻叫喚。
【ゴースト】の名を叫び、僕を光のない目で見つめている。
僕は壇上で見渡す。
この広大な会場を埋め尽くさんばかりの人、人、人。
一体何人いるのだろうか。
待て。
ちょっと待て。
ちょっと待ってよ。
何?
何これ?
何なの?
前世で、世界中で有名な歌手のコンサートより多くね?
しかも皆なんか目がイってね?
ヤバくね?
・・・・・いやいやいや、いかんいかん。ここに来てくれているのは【ゴースト】のファン。・・・・・そして大事なリスナーだ。
あまりの数の多さと歓声で少し・・・・・いや、かなりビビってしまった。
ここまで集まるとは正直思ってもみなかった。
この間店で、少しだけ小耳に挟んだけど、流石に信じられなかった。
まさかマジだとは。
僕はすぐに気持ちを切り替える。
・・・・・俺は【ゴースト】。世界に発信するパーソナリティ。
世界中のリスナーが、僕のグッズを買いに来てくれたんだ。精一杯のリップサービスをしろ!いや、するんだ俺!!!
僕はゆっくりと片手を上げる。
すると歓声が前方から徐々になくなっていき、暫くすると後ろの方まで歓声がなくなり・・・・・・・そして会場が静寂に包まれた。
僕は覚醒魔道具(マイクっぽいやつ)を口に近づけると叫んだ。
「みんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!来てくれてありがとなっっっっっっっっっ!!!!!」
ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!
静寂から一斉に歓声へと変わり、そしてすぐにまた静寂へと変わる。
「後ろのやつはぁ!俺が見えづらいと思うが我慢してくれ!!!そして今日から三ヶ月!!!俺とぉぉぉぉぉぉ!!!お前達リスナーのぉぉぉぉぉぉ!!!『絆の証』っっっっっ!!!グッズ販売のスタートだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!
一斉に怒涛の歓声が上がる。
大きく手を振りながら壇上から下りると、すぐにアルフィンが叫ぶ。
「さぁ!販売スタートです!皆さんはすぐに受け持ちの各ブースへと行って下さい!【ゴースト】様は真ん中のあの黒いブースで販売をお願いします!!!」
各ブースは白のパネルの様な物で仕切られているが、真ん中の一つだけ黒いブースになっている。
大きな会場の壁際を見ると、露店が並べられて飲み物や食べ物を売っている。
流石アルフィン。
大勢の客が来るのを見越して露店まで出すとは。
僕は感心しながら黒のブースへと近づくと、先に待っていたユーリティアさんとち~ちゃんがお辞儀をする。
「本日はよろしくお願い致します。精一杯仕事をさせて頂きます。」
「がんばるよ!」
「あぁ!よろしく頼むな!」
お辞儀をした二人の頭を優しく撫でる。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♡♡♡♪♪♪」
ユーリティアさんがまたへたりこんだ。
すぐに切り替えてブースへと入り、長テーブルの手前にある椅子に座る。左には会計係のユーリティアが。右には帽子を渡す、ち~ちゃんがスタンバった。
うぉぉ。・・・・・マジか。
見ると、僕のブースの前は遥か先まで長蛇の列。
列。
列だ。
これは時間ギリギリまで退席するのは無理だな。・・・・・あとは先着100名に握手か。まさか有名人でもない僕が握手会をするとは思いもしなかったな。
・・・・・よし!一点でも多く売って稼ぐぞ!
「それじゃ!・・・・・販売開始だ!!!」
僕は叫ぶ。
騎士だろうか、先頭にいた真っ白い鎧を着た女性が、ホッとした様な顔で一人の女性と変わる。
「フィア様。販売開始だそうです。」
「アシェリー。並んでくれて、ありがとう。」
「いえ。貴方が並ぶと聞かなくて大変でしたが、そうなると一週間以上、聖務に支障が出ます。それならば喜んで私が代わりを致しましょう。」
えっ?今一週間って言いました?
すると一瞬。
空気が変わった。
最初に僕の前に現れた客は教会の人だろうか。真っ白いローブを着て、所々金のアクセサリーを身に付けているとても可愛く美しい女性。黄金色の髪、空の様に青い瞳、そして・・・・・胸がデカい魅惑のプロポーション。
彼女の周りだけ、空気が浄化された様な澄んだ空気に変わる。
ゆっくりと僕の前まで来る。
彼女を見て、僕は笑顔で対応する。
「よく来てくれた!君が最初の客だ!さぁ、選んでくれ。どれがいい?」
ち~ちゃんが、白、青、赤の帽子を並べる。
暫くその帽子を凝視した後、自分の白い服を見て、白の帽子を選んだ。
「これでお願いします。」
「白だな!」
隣のユーリティアがすぐに会計を済ますと、僕は彼女を見てしっかりと握手する。
「買ってくれてありがとな!これからもリスナーとして俺の【ゴースト】を聞いてくれ!」
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
あれ?
全然手を離してくれない。
彼女は僕を凝視しながら、光を失った瞳でずっと手を握っている。
「おっ、おう。そろそろ次のリスナーが待っているからな!そろそろいいか?」
「あっ。・・・・・すみませんでした。・・・・・これからも貴方様を見て聞いて、お便りを出します。頑張ってください。」
「ああ!ありがとな!」
ゆっくりと手を離すと、そのまま待っていた騎士達に連れられていなくなる。
とても可愛いかったな。・・・・・胸もデカかったなぁ。
そんな事を考えていると、次の客が来る。
耳が長い。エルフだろうか。これまた、薄い鎧を着たエルフの男が女性へと変わる。
「ネーア様。番でございます。」
「ありがと。ありがと。」
代わりに僕の前に現れたのは、これまた美しい女性。輝く緑色の髪。緑の瞳。僕より背は低いが、スラっとしたモデルの様な体形の女性だ。
「さぁ!どれがいい?」
同じ様に並べられた帽子を凝視した後、白の帽子を選ぶ。
「これ。これ。」
「白だな!ありがとう!・・・・・これからも俺の【ゴースト】を聞いてくれよ!」
彼女と握手する。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
あれ?
また全然手を離してくれない。
見かねたユーリティアさんが肩を叩く。
「あっ。・・・・・ごめん。ごめん。・・・・・これからも聞く。聞く。・・・・・がんば。がんば。」
そう言うと、笑顔でエルフの女性は鎧を着たエルフの男達を連れて去っていった。
・・・・・何でだろう。まだ二人目だけど、凄く疲れる。
「よし!次!」
気持ちを切り替えて次の客を促す。
今度はずっと並んでいたのか、代理じゃなく、そのままこちらへとやってきた。
見ると、先程と同じエルフの様だが少し外見が違う。
尖った耳に、真っ白い髪。オレンジ色の瞳。おそらくダークエルフだろう。そして僕より年下だろうか。とても可愛らしい女の子だ。
「よく来てくれたな!さぁ、どれがいい?」
並べられた帽子を見て、決めていたのか、すぐに赤い帽子を取る。
「これがいいっちゃ♪」
「おう!それだな!ありがとな!これからも【ゴースト】をよろしくな!」
彼女と握手する。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
また離してくれない。
チラリと見ると、やっぱり先程の二人と同じ様に光のない瞳で僕を凝視している。
同じ様にユーリティアが肩を叩く。
「あっ。ごめんちゃ。これかも応援するっちゃね!」
そう言うとブンブン手を振りながら去っていった。
・・・・・これが続くの?
ははっ。まさかね。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
ずっと同じ様に続いた。
そして結局、握手会は倍の200名まで増やした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます