第44話 使徒4
「へっ?いいの?」
思わず聞き返す。
「当然じゃ。ヒカリの頼みならば何でも聞くぞ。むしろこの国をあげたっていい。」
「ハハッ。」
僕は後ろにいる幹部達を見る。
「ヒカリ様でしたら、私は何も異論はございません。」
グレイブが笑顔で会釈する。
「俺もだ。まさか【ゴースト】がヒカリだとは思わなかったからな!ハッハッハッ!」
バジルが豪快に笑う。
「ワシもですじゃ。ヒカリ様なら皆納得するじゃろうて。」
コングレットが続ける。
他の幹部達もそれに合わせて頷いている。
「そう言う事だ。ヒカリ。だが一つだけわらわにも頼みがある。」
「ん?もちろんいいよ。何?」
ミリは僕の仲間達を見ると言う。
「・・・・・その者達とヒカリは一心同体の感じがずっとしているのじゃ。わらわも同じになりたい。」
「えっ?それって僕の【使徒】になるって事だよ?」
慌ててすぐに僕のスキルを説明する。
それを聞くと目を輝かせてミリは答えた。
「そっ、そんな事が出来るのか?!なら!ならすぐにわらわを【使徒】にするのじゃ!」
「えぇ~・・・・・・グレイブさんや皆。それでいいの?」
「もちろんでございます。ミリオン様が決めた事なら眷属の私達はそれに従うのみ。」
「ハッハッハ!そうなれば、俺の主はミリオン様とヒカリになる!何の問題もないぞ!」
「ワシ達も、ヒカリ殿には返しきれない程の恩がありますのじゃ。それが少しでも返せるなら喜んで仕えるぞぃ。」
何でそうなるのか。
でもしょうがない。
土地を譲ってくれるんだ。
それでいてミリはこの世界で友達だから、拒否する選択肢なんてない。
『寿命/残り1,989年』
『貴方に対する忠誠が上限を超えました。使徒にしますか? 【使徒】残り9名/マスターと同じ寿命となる。マスターが死亡すると同じく死亡する。』
いつものスキルが表示された。
僕は希望の番号を聞いて立ち上がると手を前に出す。
ミリも同じ様に立ちあがって僕の前に来ると、笑顔でそれに応えて握手した。
「それじゃ、ミリ。これからもよろしく。」
「うむ!よろしくなのだ!」
ミリの体が虹色に光る。
『寿命/残り1,989年』
【使徒】残り8名
ナンバー0:レイン=シルバー
ナンバー1:ジェミニ
ナンバー2:ミリオン=ロード
ナンバー9:クロック=ロドリゲス
「ほう。面白いの!こんなスキルなのか!」
【使徒】になると、僕が見ている表示が見えるらしい。
目をキラキラさせてその表示を眺めている。
「それでは、今後の詰めの作業は私とグレイブ殿でよろしいでしょうか。」
クロックさんが僕に問いかける。
「うん。クロックさんに任せるよ。グレイブさんもこれからよろしく。」
「「 ハッ!! 」」
「なぁ、ヒカリ。」
握手をしていたミリがぴょんと僕の首周りに抱きつくと、耳元で囁く。
「久しぶりにいいかの?・・・・・ちょっとだけ。ちょっとだけ・・・・・の?」
「ハハッ。いいよ。」
ミリは喜ぶと、僕の首元を可愛らしい口でパクっと噛んだ。
「!!! ヒカリ様!」
「あぁ、大丈夫、大丈夫。そんなに吸う事はしないから。」
レインが慌てて立ち上がるが、僕が手で制する。
「・・・・・そんなの。私も吸いたい。」
「・・・・・同意。」
小さい声で不満を口にするレイン。
同じ様に頷くジェミ。
二人は何を言っているのかな?
僕はミリを抱きしめながら椅子に座り直すと、疑問を口にする。
「そういえば、ここってどこなの?何でミリや皆がいるの?」
「ヒカリ様。すぐにここへと来たので説明が遅れました。ここは『魔大陸』。その北にある大国『バルメリア』です。我々と同じ【使徒】になったミリオン様は、この国の王・・・・・魔王ミリオン=ロード。そして土地を頂いたのは、『魔大陸』と我々が住む『ユーテラス大陸』の丁度中間にある島でございます。」
「・・・・・・・・・・・・へっ?????」
おもわず変な声が出た。
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「はぁ~。」
帰って来た僕は、座って頭を抱えると大きくため息をつく。
「ヒカリどうしたの?レインさんが上手くいったって言ってたよ!良かったね!」
ちーちゃんが、笑顔で僕の前にお茶を出してくれる。
「ハハッ。ありがとう。いつもちーちゃんは優しいね。」
「うん!だって未来の旦那様に優しくするのは当然だよ!」
「こらっ!ちーちゃん!何て事を言うの!」
「わ~♪ レインお姉ちゃんが怒る~♪」
「まちなさい!」
パタパタと少女を追いかけまわすレイン。
とても平和だ。
「はぁ~・・・・・魔王を使徒にしちまった・・・・・・。」
またため息をついて呟く。
まさかミリが魔王なんて誰が思うだろうか。
幼女。
幼女だよ?
ありえないだろう。
まぁ、今思えば、グレイブさんやバジルさんはめっちゃ強かったし、よく助けてくれた。でも幼女の眷属なんて誰も思わないだろう。
しかも、あの古参でいて危険指定のリスナー『ろーど』がまさかのミリ。
確かに我がままで夢中になる子だったよなぁ。
それで土地を探していたクロックさん。
何で島なの?
土地って言ったじゃん。
しかも帰りにちょっとだけ見によったけど、生半可な島じゃない。
聞くと8万キロ程の大きさがあるとの事。
それって北海道じゃん。
それってオーストリアじゃん。
バカなの?
土地は土地でも・・・・・・・ねぇ、バカなの?
いや。
やめよう。
クロックさんが一生懸命探してくれたんだ。
静かな所に皆が住める家を建てたいと言ったのは僕だ。
それを守って、たまたま巨大な島を貰ったにすぎない。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・。」
僕はまた大きなため息をついた。
そして考えるのをやめた。
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