第37話 パーソナリティ6
「さて!今日も始めたい所だが、まずはお礼からだ。 じぇみ!魔女っ子! 聞いてるか?」
すぐにお便りが届く。
『ペンネーム/じぇみ 聞いてるよ!』
『ペンネーム/魔女っ子 いるよ~♪』
横目でジェミを見ると、すかさず【キューブ】を打ち込んでいた。
「よし!いるな!この間俺が頼んだスタンピート。ギルドで手助けしてくれた二人がいて、そのおかげで犠牲をほとんど出さずにすんだと聞いた。その二人はお前達か?」
『ペンネーム/じぇみ うん!』
『ペンネーム/魔女っ子 【ゴースト】の頼みだからね♪ 頑張っちゃった♪』
「そうか!やっぱりお前達だったか!」
僕は座りながら頭を下げる。
「ありがとう!俺の頼みを聞いてくれて。」
『ペンネーム/動物好きちゃん 私も近くにいたら助けるっちゃ!』
『ペンネーム/ふぃあっち 私も遠くて行けませんでしたが、近くだったら駆けつけました!』
『ペンネーム/ゆーり 私も!』
『ペンネーム/ろ~ど くっ!我が近くにいれば全てを殲滅したものを!』
・・・・・・・
・・・・・・・
手助けする事が出来なかったリスナー達のお便りが山の様に届く。
「ハハッ!分かっているさ。近くにいなかったリスナー達も、きっといたら手助けしてくれるってな!その気持ちだけで俺は嬉しいぞ!だが、今回は二人が俺の頼みを聞いて駆けつけてくれた。 じぇみ!魔女っ子! もう一度言う。ありがとう。」
『ペンネーム/じぇみ 【ゴースト】の頼みだったらどんな事でも聞くよ!』
『ペンネーム/魔女っ子 今度~♪ 私の頼みも聞いてもらおうかな~♪』
「もちろんだ。何かあったら俺の所にお便りを出してくれ。魔女っ子。お手柔らかにな!・・・・・・・よし!それじゃ今日もどんどんお便り読んでいくぞ~。」
二人にはちゃんとお礼をしたかった。
ジェミは一緒にいるからいいけど、魔女っ子はこの【ゴースト】だけしか連絡が取れない。
後からレイナさんに聞いたけど、魔女っ子もとい【深淵の魔女】と呼ばれているリスナーは、一瞬にして溢れ出たモンスター達を殲滅したらしい。・・・・・たった一人で。
ジェミの方は二体のA級モンスターが現れた所で、他の冒険者達の代わりに残り全てのモンスターを倒したらしい。・・・・・たった一人で。
ほぼ二人のおかげでスタンピートは防げたと言っていた。
だからこそ、ジェミもそうだが、魔女っ子には何かあったら微力だけど力にないたいと思った。
今日はランダム形式の進行。
軽快に読み始め、感想を答える。
リスナー達の反応を見ながら、その反応のお便りに対しても答えたり、ツッコミを入れる。
そしてまた次のお便りを僕は読む。
『ペンネーム/りゅう君 僕は聞き専なので、今回は勇気を出して初めてお便りを出します。僕には好きな幼馴染がいます。でも振られるのが怖くて告白する事が出来ません。どうしたらいいですか?』
とうとう来たか。
恋愛相談はパーソナリティをやっていれば絶対に来る案件だ。
今回はランダムだったから読み上げたが、普通の時は読み上げなかっただろう。
読むと前世を思い出して、ちょっと辛くなるから。
僕は。
一人の女性を愛し。
その女性と一緒になる事が出来た。
そして僕が病にかかり、本当に辛い思いをさせた。
だから恋愛がテーマのお便りは読み上げたくなかったのだ。
前世を思い出してしまうから。
でも、読んじまったんだからしょうがない。
「おう!りゅう君は【聞き専】か!勇気を出してお便りを出してくれたんだな。いいか!他のリスナーも無理に参加しなくていいからな。前にも言った事があるが、【聞き専】は大いにありだ!俺は聞いてくれるだけで嬉しい。だからお便りは出したい時に出してくれ。・・・・・それでりゅう君。好きな幼馴染がいて、告白がしたいけど振られるのが怖くて出来ないか。・・・・・よし、りゅう君。俺の言葉は今回も一つだ。それはな・・・・・・・『信じろ』だ!!!」
僕は一呼吸おいて、話し続ける。
「はっきり言って、俺は恋愛には答えがないと思っている。だってさ、相手は自分じゃない。他人だ。どんな事を考えていて、どんな性格なのかも分からない。もし付き合えたとしても、ネコを被っているかもしれないし、利用される事もあるかもしれない。本当に恋愛は千差万別だ。・・・・・だからな。俺は自分を『信じる』事にしている。もし振られてダメだったら自分に魅力がなかったって諦められるし、もし付き合えて、自分が考えていた理想と違っていたとしても、自分が信じてダメだったら諦めもつくからな。だからりゅう君。・・・・・告白しろ!自分を『信じて』!!!幼馴染なんだろう?なら付き合いは長いはずだ。ある程度の性格も分かっていて好きになったんだったら、こんなに理想的な事はない。だから告白しろ!!!りゅう君!勇気を出せ!!!・・・・・・・それでもしダメだったら俺の所へ来いっっっっっ!気が済むまで話を聞いてやるからさ。」
『ペンネーム/動物好きちゃん 信じるっちゃ!』
『ペンネーム/ふぃあっち 私も応援してます!頑張ってください!』
『ペンネーム/みどり ですです!私も応援するです!』
『ペンネーム/ろ~ど 勇気を出すんだ!わらわが付いておるぞ!』
・・・・・・・
・・・・・・・
続々とお便りが届く。
「ハッ!リスナーの皆も応援してくれているぞ!よぉぉぉぉぉぉぉぉぉし!みんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!りゅう君に勇気を注入だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!頑張れ~♪頑張れ~♪りゅ~う~君!!!」
『ペンネーム/動物好きちゃん がんばれちゃ!がんばれちゃ!りゅ~う~君!』
『ペンネーム/ふぃあっち がんばれ!がんばれ!りゅ~う~君!』
『ペンネーム/魔女っ子 がんばれ♪がんばれ♪りゅ~う~君♪』
『ペンネーム/ろ~ど がんばれ!がんばれ!りゅ~う~君!』
・・・・・・・
・・・・・・・
前世の応援音頭の反応に結構似ていた。
「よし!りゅう君。結果は後で聞かせてくれ!・・・・・それじゃ、次行くぞ~。」
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【マスターキューブ】のマスを押す。
「おっし。今日も終わり、終わり。」
帽子を取って一息つくいて、ふと壁際を見る。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!何度見ても素敵ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
「・・・・・生ゴースト。生ゴースト。生ゴースト。」
案の定、レイン中心に全員が奇声を上げて、ゴロゴロ床に転がっている。
ゴロゴロメンバーが一人増えた。
ヒカリは知らない。
リスナーに向かって『頑張れ!』と言った時に、世界中で同じ様に音頭が上がったのを。
それは、それぞれの国に、それぞれの街に音頭が響き渡る程に。
ヒカリは知らない。
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
ヒカリ信者、ますます増幅中。
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