第25話 パーソナリティ4-1
「いやぁ~。美味しかったし、気持ち良かったな!」
「うん!とっても楽しかった!ヒカリ様!ありがとう!」
ち~ちゃんが嬉しそうに、ポカポカした赤い顔で僕の手を握りながら歩いている。
今は夕方。
昼に二人の歓迎会をした後に、そのままこの街にある大衆浴場でゆっくりと風呂に入った僕達は、自宅へと向かっている。
クロックさんの話だと、この国に来たのは昨日だったらしく、宿屋で一泊して早朝に僕の家へと尋ねに来たらしい。
クロックさんは頼まれたから【使徒】にしたけど、ち~ちゃんはどうするのか尋ねてみると、二人とも希少種のハイヒューマンらしく、寿命がエルフと同じで2,000年は生きられるらしい。まだち~ちゃんは12歳。これから多くの年月を生きられる彼女は、縛られずに自由に生きて欲しいとの事。
そりゃそうだ。
ち~ちゃんはこれから苦しんだ分、いっぱい楽しんで、いっぱい恋愛をして欲しいものである。
「待ったっす!自分も手を繋ぐっす!」
「あら♪ それじゃ、私も。」
「それでは拙者も。」
ち~ちゃんの空いた左手と手を繋ぐしずく。そのしずくの隣に並んで手を繋ぐさくら。そして僕の空いた右手と手を繋いだサスケ。
・・・・・何故男と手を繋いでんだ?普通はサスケがち~ちゃんと繋いで、さくらかしずくが僕と繋ぐんじゃね?
そんな不満を抱きながら、五人一列になって、鼻歌を歌いながら楽しそうに家路へと向かった。
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ヒカリ達を後で見ながら歩く二人。
クロックが呟く。
「・・・・・聞いたか?」
「えぇ。」
私はヒカリ様のやりたい事を聞いた。
その言葉が、今も頭から離れない。
・・・・・いつかは自分達の国を持って(どこか静かな所で)、僕の城(家)を建ててさ、本業のパーソナリティ・・・・・いや【ゴースト】の番組をずっとやりながら、世界を統一したい。(スローライフを送りたいね。)・・・・・
レインが言う。
「まずは国ね。」
「それは自分に心当たりがある。・・・・・そうだな。ヒカリ様が今日の夜【ゴースト】をやると言っていた。それは外せないから、それを聞いたらすぐにでも調査の旅に出かけよう。その間はチェリーの事をよろしく頼む。生活費と教育費として、そしていざという時の為にある程度はゴールドを預けておこう。」
「それは助かるわ。それでは何かあっても大丈夫な様に、貴方にサスケを付ける事にしましょう。・・・・・良い返事を待っているわ。それと、アルフィンという商人に会う事が出来たらグッツ販売の進捗状況を聞いて頂戴。」
クロックにキャップのグッツ販売の事を説明する。
「何と!そんな計画があるのですね!それは素晴らしい!!!商人とお会いしたら是非私も参加しましょう!!!」
「よろしく頼むわ。それで・・・・・・・。」
ヒカリ達が楽しそうに手を繋いで並んで歩いている後ろで。
瞳の光を失いながら、計画を嬉しそうに語っている二人。
どうやったら二人とも、ヒカリの言葉をそんな曲解に出来るのか。
どうやったら二人とも、同じ様に受け取る事が出来るのか。
謎だった。
そして案の定、ヒカリは何も知らない。
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「さて!・・・・・今日もやるか!」
黒のロングコートを羽織り、黒のキャップを深く被る。
テーブルに【マスターキューブ】を置いて準備が終わった僕は、壁際に目をキラキラしながら正座して並んでいる六人を見る。
観覧しているリスナーが、本日二人増えた。
・・・・・だから何故正座?
僕はその様子に呆れながら微笑んだ後、首に貼っているシールを剥がし、【マスターキューブ】の金色に光っているマスを押した。
「よう!皆!俺の声が聞こえるか?!・・・・・・・さぁ、今日も始めるぜっ!!!!」
もの凄い勢いで、お便りとリスナーの声が届く。
この番組をやる度に、お便りの量がどんどんと増えていく。
それはリスナーが増えているという事だし、この【ゴースト】という番組にお便りを出して参加しようとするリスナーが多くなったという事だ。
思わずニヤリと笑う。
マジで嬉しい。
まだ三年しか経っていないのに、ここまで実感できるとは!
「おっと・・・・・そうだった!まずはリスナーの皆に報告だ!この前の【ゴースト】でお便りをもらった『ち~ぱぱ』だけどな!その娘さんの『ち~ちゃん』が元気になったんだ!」
『ペンネーム/魔女っ子 えっ?どういう事?』
『ペンネーム/ふぃあっち ち~ちゃん【死神憑き】にかかったんですよね?』
『ペンネーム/動物好きちゃん 治るなんてあり得ないっちゃ!』
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
「おっ!早速、ち~ぱぱとち~ちゃんからだぜ!」
『ペンネーム/ち~ぱぱ 皆さん!本当なんです!ち~ちゃんの【死神憑き】を【ゴースト】様がお見舞いにいらっしゃって、何と治してくれたのです!』
『ペンネーム/ち~ちゃん 元気になったよ!【ゴースト】様が治してくれたんだ!【ゴースト】様!本当にありがとう!!!』
ちらりと壁際を見ると、大粒の涙を流しながらクロックとチェリーが一生懸命【キューブ】のマスを入力している。
『ペンネーム/魔女っ子 嘘でしょう?』
『ペンネーム/動物好きちゃん 凄すぎるっちゃ!』
『ペンネーム/ろーど 流石我が【ゴースト】だ!』
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
「ハハッ!まぁ、そう言う事だ!だけどな。一番はリスナーのみんなが励ましてくれたおかげだと俺は思っている!・・・・・だからみんな!ありがとな!!!」
『ペンネーム/ゆーり ち~ちゃん!良かった!』
『ペンネーム/ふぃあっち ち~ちゃん!おめでとう!』
『ペンネーム/ろーど ち~ちゃん!よくがんばったな!』
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
『ペンネーム/ち~ちゃん うん!リスナーの皆が励ましてくれたから、頑張れたんだよ!皆!本当にありがとう!!!』
『ペンネーム/ち~ぱぱ 皆さん!ありがとうございました!』
まだ始まったばかりなのに、鬼の様にお便りが届く。
そのほとんどが、ち~ちゃんに対するお祝いのコメントだ。
見ると、ち~ちゃんはまだ涙を流しながら一生懸命入力している。
それを温かい目で見守っているレイン達。・・・・・何故お前達も号泣しているんだ?
・・・・・ん?
何か少し外が騒がしい様な気がしたが、ここは地下だ。
気のせいだろう。
僕はリスナーに報告が出来て満足すると、通常のお便りに戻った。
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