第16話 日常
「これ・・・・・どったの?」
「はい♪ 森でモンスターや魔獣を狩って取り出しました!」
「そっ。そう。」
僕は見上げる。
山の様に積み上げられた魔石を。
どれだけ倒せばこの量の魔石を得られるのだろうか。
チラリと横を見ると、期待にワクワクした顔をしているレインが。
これはどう見ても褒めて欲しい顔だ。
「・・・・・よし。よし。よくやったね。ありがとう。」
僕はレインの頭を撫でる。とても嬉しそうだ。
同時に三人が頭を出してきたので一緒に撫でる。・・・・・しずくは関係ないよね?
・・・・・しかしこれは。
もう一度山の様に積まれた魔石を見上げる。
これ程の魔石を一夜で集めるなんてあり得ない。S級冒険者でも、国の軍隊を使ってもおそらく無理だろう。それをたった三人で集めてきたのだ。この三人がどれほどの強さなのか想像もつかない。
あれ?これってもしかして、前世のマンガとかでよくある、強大な力を持った者が封印されていたか何かなのか?
それを僕が解いたとか?
「え~と、レイン。僕の為にしてくれて本当にありがとう。でもね、今後は勝手にモンスターや魔物を殺さないでほしい。」
「えっ?何でですか?」
レイン達は首をかしげる。
僕は説明する。僕達冒険者は、モンスターや魔物を狩って稼いでいる。それをレイン達が殺しまくったら、僕達の稼ぎがなくなるからだ。
「なるほど。そんな職業が今の時代はあるのですね。分かりました。それでは今後はヒカリ様の指示がない場合は、モンスターを狩ったりはしません。」
「よろしく頼むよ。」
まぁ、レイン達が昔はどんな者だったのかは分からないけど、今は仲間だ。
分かってくれるならそれでいいさ。
「んじゃ、取って来てくれた魔石をちゃっちゃと【吸収】して、朝飯を食べますか!」
そう言って、僕は山の様に積まれた魔石に向かって手を掲げた。
寿命が2,000年になった。
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「ヒカリ様!こっちは綺麗になりました!」
「こっちもオッケーっす!」
「こちらも綺麗にしました。」
「拙者も綺麗にしましたぞ!」
「オッケー!僕の方も綺麗になったから、今日の仕事はこれで終わりだ。皆ご苦労さん!」
レイン達と出会ってから一ヶ月が経った。
すっかりこの生活にも慣れた四人は、今は僕の仕事を手伝っている。
G級とF級対象の依頼。
この街『マリオン』のドブさらいだ。
冒険者ギルドの依頼は、モンスター討伐だけじゃなく、他にも生活を助ける依頼も数多くある。護衛任務や薬草採取、害虫駆除やドブさらいまで。
しかも、こういった生活に関わる依頼は意外と金になるのだ。
だから命の危険を冒したくない人は、G級やF級までにして討伐以外の依頼をこなして生活をしている冒険者も多い。
「さて!レイン達のおかげで午前中でドブさらいが終わったから、あとは自由行動だ。お疲れさん。」
「フフッ♪ それじゃ私はヒカリ様の影に戻ります。・・・・・その前に【浄化】。」
すると、全員ドブで汚れた服や体があっという間に綺麗になる。
この【浄化】魔法はめっちゃ便利だな。
「私は資料館へ行ってきます。」
「あっ、私も行くっす!」
さくらはしずくと一緒に資料館へ。時間がある時はいつも二人は資料館へ行って、この時代の世界の事を調べている。
後でレインに報告しているみたいだ。
「それでは拙者は、遠くでヒカリ様に害をもたらす者がいないか監視します。」
そう言うとサスケはフッと消える。
喋り方な。
前に前世の時代劇の話をしたら、すっかりはまってしまったらしい。
三人を見送ると、レインは嬉しそうに僕の影へ。
レインは他の三人に比べて、僕の影からは、ほとんど出ようとしない。
前に聞いたら、『私はヒカリ様の使徒。貴方様を未来永劫。ずっと・・・・・ず~~~と、お守りすると誓ったのです!だから離れません!』だとさ。
影の中は居心地がいいみたいだし、本人がそれでいいならいいんだけどね。
僕は一人になると、冒険者ギルドへと向かった。
「レイナさん。今日の依頼は終わりました。」
「あら、ヒカリ君。早かったですね。」
ドブさらい完了サインが入った依頼書をだして、1万ゴールドを受取る。
「おう!ヒカリ!元気そうだな!」
「あっ。グリーミュさん。ちわっす。」
いつもの様に僕の肩を組むグリーミュさん。獣人の毛が気持ちいい。後、柔らかい物があたるので、前にも言いましたけどやめて下さい。僕の影から殺気を感じるのは何故だろうか。
後には『獣の誓』メンバーが笑顔で見ている。
「そう言えば、とうとう【A】級っすね!」
「おう!今回の依頼を達成すればな!」
今、この冒険者ギルドフレグラ支部は、『獣の誓』の話題でもちきりだ。
それは、とうとうA級に昇格できる依頼が来たからだ。
数少ない上位冒険者と呼ばれるB級になれば、ほとんどの冒険者から尊敬される。
しかし、A級ともなると国単位で数組しかいない憧れの存在だ。しかも、この国はまだA級冒険者がいない。
獣人パーティがここまで来るのは並大抵の事ではない。それだけの努力と実績と信頼を積み重ねてきた結果だろう。
「姐御達が【A】級になったら、凄い嬉しいっすけど、無理はしないで下さいよ?」
「お前が言うな。」
剣士のイーシャがツッコむ。
「まっ、とりあえず俺達は暫くは遠征でいなくなるからよ。ヒカリもこの間みたいに無茶だけはするんじゃないぞ?」
「おいっす!」
グリーミュさん達『獣の誓』は、嬉しそうに僕の頭を撫でると、ギルドから出ていった。
確か出立は明日だったから、わざわざ顔を見せに来てくれたんだろう。マジで姐御達、頑張ってA級になって欲しいわ。
見送った後、レイナさんに話す。
「レイナさん。そろそろE級冒険者らしくモンスター討伐に出ようと思ってるんですよ。『ダンジョン』の依頼書でこなせそうなのありますか?」
「あら。ヒカリ君も『ダンジョン』に行くのね。」
【ダンジョン】。
大体国に一つはある、多くのモンスターが潜んでいる深く広大な迷宮。
100層近くはあり、深く行くほどにモンスターが強くなるのが特徴だ。
浅い層から強いモンスターも出現する事があるので、E級以上が推奨されている。
「だってまだ『古の森』の討伐依頼は少ないんですよね?」
「そうなのよね。」
一ヶ月前。
急に『古の森』のモンスターの遭遇率が低くなってしまい、あまり稼げなくなってしまったのだ。・・・・・原因は知っているんだけどね。
なので今は、E級以上の冒険者のほとんどはダンジョンへ行っている。
「ヒカリ君はE級になったばかりだから、あまり無理はしないようにね。」
そう言って、僕に合った依頼書を数枚渡す。
僕は依頼書を受取ると、レイナさんにお礼を言ってギルドを後にした。
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「おっ。良かった。開いてるわ。」
街並みを歩き、少し入った路地に小さな店が一軒。
扉の上に飾られている鳥が彫られた看板が表に出ている。この看板がある時はやっている証拠だ。
扉を開けると鈴の音が鳴る。
「おいっす~。アルフィンいるかぁ~。」
「ん?あれ、ヒカリじゃん。この間は大変だったね。」
「ほとんどこの街にいないのに、何で知ってんだよ。」
彼の名前はアルフィン。この世界で初めて出来た男友達だ。
金髪のイケメンで、見た目は軽そうなイメージだが、個人で様々な商品を扱っている商人だ。人脈も幅広くあるらしく、いつも世界中を飛び回っていて、あまりこの街にはいない。だから今日は開いていてラッキーだ。四年前にこの国に来た時に、色々と面倒を見てもらった男で、その後は意気投合して、この街に帰って来た時にはよく一緒に飲みに行っている。
「それでどったの?今日は【ゴースト】があるみたいだから、夜は付き合えないよ?」
「ハハハ・・・・・。」
アルフィンもリスナーの一人だった。
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