第14話 使徒



「ゴースト様。」


「いや、誰?」




何この状況?


意味が分からないんですけど。



見知らぬ美男美女が四人。僕の前で床に片膝を付いて跪いていた。



そのままの態勢で、先頭で跪いている美しい女性が笑顔で答える。



「失礼しました。私達は昨日、貴方様に助けられた者です。」


「へっ?」



思わず変な声を出す。



「ちょ、ちょっと待ってよ。昨日助けた子達って、どう見ても子供だったよね?」


「フフッ。あの時は治してもらいましたが、体力も栄養もなかったので。」



「あぁ。魔力を食べると言っていたっけ。・・・・・という事は、僕の影の中で十分な魔力を食べられたってこと?」


「はい♪ それでようやく元の体に戻る事が出来ました。」



そう言うと、彼女達は立ち上がる。



「申し遅れました。私の名はレイン=シルバー。後ろにいる三人は私の眷属でございます。」



後ろにいる三人が頭を下げる。



僕は答える。


「僕の名前はヒカリ。よろしく。」



「えっ?【ゴースト】様ではないんですか?」


「何で知ってんだよ!」



思わずツッコんだ。




レイン=シルバーは説明する。


遥か遠い昔、信じていた仲間に裏切られ、封じられ、衰弱して、死ぬまでずっとあの牢獄にいた事を。


そしてこの三年間、兵士達が聞いていた四角い物体から現れる僕を見て、ずっと楽しみに聞いていたという事を。



僕は驚いた。


兵士にもリスナーがいるという事に。


そして、ここにいる四人は三年前からずっと聞いていたと言っていた。



それって古参じゃん!



直に聞くと、やっぱり嬉しいな。



「へっ、へぇ~。そうだったんだ。・・・・・えっと、レインって呼んでいいかな?」


「はい♪ 【ゴースト】様 ♡♡♡」



「いや。その呼び方はやめて欲しいな。僕の本当の名前はヒカリ。【ゴースト】は放送する時のパーソナリティ・・・・・いや、演者さ。」


「そうですか!という事は、本当の名前を知っているのは私達だけ? キャ~♪♪♪」



一緒に飛び跳ねて喜んでいる四人。


直でリスナーと話をしていると、ちょっとむずがゆい。



「それで?レイン達はもう自由だ。これからどうするの?」



そう言うと、レイン達はすぐさま僕の前で跪いた。



そして顔を上げると、真剣な顔で答える。


「私は・・・・・私達は!貴方とずっと一緒に共にいたいです!ですからどうか!・・・・・どうかお傍においてください!!!」


「「「 おいてください!!! 」」」


「へっ?」



また思わず変な声が出た。



参った。



いきなりそんな事を言われても困る。



自分一人で精一杯なのに・・・・・あっ。でも食事は僕の魔力だし、住む所も僕の影の中なら問題ないか?



そんな事を考えていると、スキルが表示される。




『寿命/残り1年』 


『貴方に対する忠誠が上限を超えました。使徒にしますか? 【使徒】残り12名/マスターと同じ寿命となる。マスターが死亡すると同じく死亡する。』




・・・・・はっ?


何だこれ?こんなの初めて表示されたぞ。


使徒?仲間を増やせるって事なのか?



新しいスキルの表示を見ていると、レインが言う。



「ヒカリ様!私を!私を【使徒】にしてください!!!」


「えっ?レインも見えるの?」



レインが嬉しそうに頷く。



「いや。見えてるんなら分かるでしょ?もう僕の寿命はあと1年しかないんだ。もちろん延ばす事は出来るけど、すごく大変なんだよ。だから君達はせっかく自由になったんだから、僕に付き合う必要はないよ。」



レインはすぐに答える。


「ヒカリ様。私達には分かります。この寿命が1年になったのは、私達のせいなのですよね?私達は貴方がいなかったら消滅する運命だったのです。なら、死ぬ時も一緒です。お願いします。どうか、どうかお供をさせてください!!!」




またまた参った。



真剣なのが伝わるから。



これは本気だ。



僕はある程度稼ぎながら、前世から夢だったラジオのパーソナリティをずっとやりながら気楽に一生を過ごしたい。



これがこの世界の目標だ。




・・・・・・・まぁ、そこに仲間がいてもいいか。



いろんな意見も聞けるしね。




「よし。・・・・・分かった。それじゃ、よろしく!」



僕はレインに右手を差し出す。



「よろしくお願いしますっっっっっ!!!」



めちゃめちゃ喜びながら僕の手を強く握った。



すると、レインの体が虹色に光る。



僕は続ける。


「そうそう、レインさ。【使徒】は何番がいい?ゼロから11番まで。何か選べるみたいなんだ。」


「それでしたら、ゼロでお願いします!」


「おっ。おう。」



食い気味に、顔の近くまで綺麗な顔を近づけるレイン。


ドキッとするからやめて下さい。



すると、スキルの表示が追加された。




『寿命/残り1年』


【使徒】残り11名


ナンバー0:レイン=シルバー




するとレインはいきなり僕に抱きつく。


「あぁ!これで・・・・・これで【ゴースト】様・・・・・いや、ヒカリ様と一心同体!!!これからの私の命。・・・・・全てを貴方に捧げます!」



怖ぇよ!


あと重すぎるわ!


それと、柔らかい物があたるから、抱きつくのはやめて下さい。



僕は興奮しているレインをやさしく離す。



「ハハハ。・・・・・所で他の三人はいいの?」



僕が聞くとレインが答える。


「この三人は私の眷属。私が消滅すれば同じ様に消滅します。ですので、ヒカリ様の【使徒】になった私と眷属達は同じです。どうぞこれからも、ずっと私と同じに接してください。」



「よろしくお願いします。」


「よろしくっす!」


「よろしく。」



二人の可愛らしい女性は、動きやすそうな黒のシャツに黒のショートパンツを着ている。そして双子の様に顔が似ていた。髪は銀のショートカットで分け目が左右逆だ。そして男性の方は銀の長髪を後で束ねて腰には漆黒の長刀を。黒いシャツと黒いパンツを着ていた。



「えっと、名前は?」



そう言うとレインが答える。


「この子達には名前がありません。必要なかったので。」



「そうなの? でも、これからは名前がないと呼びずらいよなぁ。う~ん・・・・・僕が名前をつけてもいい?」


「「「 お願いします!!! 」」」




即答だった。



女性二人は、髪が左の分け目の方が『さくら』。右の分け目の方が『しずく』。そして男性の方は『サスケ』にした。



せっかくだから日本の名前がいいと思ったんだ。


覚えやすいしね!



「・・・・・さて、それじゃ、さくら。しずく。サスケ。これからもよろしく!」


「「「 はいっ!!! 」」」



三人は名前を与えられて、とても嬉しそうだ。



僕はキャップとコートを壁に掛けると、レインに言う。


「それじゃ、僕はもう寝ようと思うけど、皆はどうするの? 家でゆっくりしててもいいし、僕の影に入って休んでもいいよ。」



するとレインが笑顔で答える。


「とりあえず私達は元気になりましたので、まずは魔石を取りに行きたいと思います。【使徒】になって分かりましたが、魔石をヒカリ様が吸収すれば寿命が延ばせるんですよね?」



そんな事まで分かるんだ。



「まぁ、バレてるんならしょうがないけど、寿命を減らしたのは僕の意思さ。君達が気にする事はないから、ゆっくりしてなよ。」



「・・・・・本当にもう貴方という御方は・・・・・いえ、私達は寝なくても生きていけますし、私達の為に失ってしまった寿命を少しでも返したいのです。・・・・・しずく。貴方はヒカリ様の護衛を。・・・・・それでは失礼します。」




そう言うと、しずくを残し、三人は頭から砂の様に崩れていく。そして黒い砂となって風に吹かれるように一階へと上って行き、玄関の隙間から外へと消えていった。



僕はその様子を唖然としながら見た後、黙ってしずくを見る。



「それじゃ、影の中にいるっす!」



笑顔で言うと、しずくは僕の影の中へと嬉しそうに入っていった。




暫くの静寂。




僕は静かに階段を登って居間へと行き、そのまま自室へと入るとベットへダイブした。






「・・・・・寝よ。」






僕は考えるのをやめた。
























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