第12話 リスナー1



『それじゃ皆!またな!』




そう言うと、ベットの上に置かれた【キューブ】に映し出された【ゴースト】様のお姿がゆっくりと消えていく。



『アーツ帝国』の第一皇女ユーリティアは、余韻に浸りながら横たわると、そのまま枕を抱きしめる。



「はぁ。・・・・・ゴースト様・・・・・何て、何て凛々しくて、あんなにもカッコイイの?」




目の前にいるかの様に。



そしてベットの横で恋人の様に話しかけてくれる。



会いたい。



会いたい。



会って貴方の全てを感じたい。





「ゴースト様・・・・・・・しゅき♡♡♡♡♡」



ユーリティアは枕を強く抱きしめた。






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『それじゃ皆!またな!』




そう言うと貴方の姿がゆっくりと消えていった。



私は【キューブ】をしまうと、自室から出る。



すると、外で待っていた数人の聖騎士が私の周りを囲む。



そのまま暫く歩く。聖騎士は黙って私の後に付いて行く。



黄金の大扉の前まで行くと、後ろにいた光り輝く白い鎧を着た聖騎士二人が、私に会釈をすると先頭に立って大扉を開いた。



開けるとコンサートホールの様な広い空間に出る。


その先には、この国が信仰している美と慈愛の神。アイレミンの巨大な神像がたっていた。




ここは『ロマンティ皇国』。



その大聖堂。



私が神像の方へと歩いて行くと、7主教の一人が近寄ってきて苦言を述べる。



「フィア様。毎回、毎回、突然お部屋にこもるのはどうかと。もっと【大聖女】として自覚をもってですね・・・・・。」



はぁ。また始まった。



「エリジャ。私にも優先しなければいけない事があるの。」


「それは決まっている、祈りの時間よりもですか?」


「ええそうよ。」



私は内側にしまった【キューブ】を触る。



どんな時にも優先しなければいけない。



あの御方のお姿。



あの御方の声。



一度でも見逃す事なんて出来ない。




だって。




だって私は。




フィアは神像をうっとりとした顔で見上げる。






貴方に首ったけなんだもの♪♪♪ ♡♡♡♡♡♡






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『それじゃ皆!またな!』




そう言うと、姿が消える。



「・・・・・終わっちゃった。」



体育座りで見ていた獣人の女の子は寂しそうに呟く。




つまらなかった。




ずっとつまらなかった。




力を求めても。




技を求めても。




【最強】を手に入れても。




ずっとつまらない。




三年前。


そんな時に出会った、敵から奪った【キューブ】から現れる【ゴースト】。




あの声。




透き通る。




響く。




心に響く。




優しい声。




衝撃が走った。




つまらなかった。




ずっとつまらなかった僕が、一瞬で夢中になった。




会いたい。




会いたい。




どんな事をしてでも会いたい。




【ゴースト】に。




そして・・・・・。




気づくと、座っている女の子の周りに数十人の兵士達が取り囲んでいた。


手には剣が。弓が。杖が。


魔法使いもいるようだ。



隊長っぽい男が叫ぶ。


「あれがジェミニだ!!!あいつを殺せば戦況は一気に変わる!!!いいか!一斉に攻撃を・・・・・・・。」




刹那。




全員が、座っていた女の子の腰にある長刀が一瞬光ったかの様に見えた。




首が。




胴体が。




ズレる。




ズレる。




地面へとそのまま落ちて。




絶命した。






女の子はゆっくりと立ち上がる。



「・・・・・終わっちゃったし。さっさと仕事。終わらせよ。」



そう言うと、少し離れた所で、怒声と争う音が聞こえる方へと歩き始めた。






地面に、己が斬った数万の死体を置いて。






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僕は【マスターキューブ】のマスを押して放送を切った。


椅子に横たわって大きく伸びをする。



「う~ん!終わった、終わった。今日も上手く出来たな♪」



いや~。やっぱり楽しい。


前世でずっとやりたかった事だ。


こうやって夢がかなうとマジで感無量だね!



横たわりながら天井を見上げる。



うん。



徐々にリスナーも増えている感じがする。


それは、僕の番組を受け入れてくれる人達が増えたという事だ。


もっと興味を持ってもらえるように、会話のテクニックを磨かないとな!



「さてと。今日はゆっくりと眠れそうだ。」



そう呟くと、僕は椅子から立ち上がる。



「ん?」



寝室に行こうと思い、地下室から出ようすると、床には四人の男女が片膝を付いて跪いていた。



十代後半位だろうか。


銀髪の美男美女の三人が後ろに。そしてその先頭に跪いている銀の長い髪、漆黒のドレス、魅惑のプロポーションのとても美しい女性が、深い青の瞳を僕の方へと向けた。






「【ゴースト】様。」


「いや誰?」







即答した。













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