第4話 さらなる危機



 小屋で一夜を明かした翌朝。薄明かりが差し込む中、俺たちは次の目的地「王都」を目指す準備をしていた。


「王都まで行くには、森を抜けて荒野を越えなきゃならない。でも、その荒野にはやばいゾンビがうじゃうじゃいるらしいよ。」


「森よりもやばいのかよ……。もう嫌な予感しかしない。」


 ミナが地図を広げてルートを確認する横で、俺は肩を落とした。転生したばかりで、いきなりこんなハードモードを生き抜くなんて聞いてない。


「でも、このまま時間を無駄にしてたら完全ゾンビが押し寄せてくる。どのみち動くしかないでしょ。」


「そうだな……よし、行こう!」


 俺たちは覚悟を決め、森を抜けるべく小屋を後にした。


 森を進む途中、俺たちはまたしても唸り声を聞いた。咄嗟に近くの茂みに隠れると、目の前を複数のゾンビが通り過ぎていく。幸い、こちらに気づいていない。


「危なかった……でも、あのゾンビ、少し様子がおかしくなかったか?」


 ミナの言う通り、ゾンビたちは普通の徘徊型とは違い、何かを探しているように見えた。


 その時だった。奥の茂みから声が聞こえた。


「おい! そこの奴ら、何やってるんだ!?」


 突然の声に驚いて振り向くと、そこに立っていたのは鋭い目をした男だった。黒い鎧を身にまとい、大きな剣を持っている。肩には奇妙な機械装置がついている。


「お前ら、生きてる人間か? それとも半ゾンビか?」


「半ゾンビだよ! でもこの子は生きてる人間!」


 ミナが答えると、男は目を見開き、俺をじっと見つめた。


「生きてる人間だと……? この森でそんな奴を見るのは初めてだ。だが、そうなるとお前ら、あいつらの標的になるぞ。」


「えっ、あいつらって?」


 男は剣を構えながら森の奥を指さした。その先には、異様に大きなゾンビたちの群れがいた。普通の完全ゾンビよりもさらに巨大で、武器を持ち、動きも速い。


「……強化型ゾンビ部隊だ。王都周辺にしかいないはずの連中が、なぜこんな森の中にいる?」


「え、強化型って、あのデカゾンビよりさらにやばいってこと?」


「そうだ。そして、あいつらは命令を受けて動いている。つまり……」


「つまり?」


「誰かが奴らを操っているってことだ。」


 男は名を「ザイド」と名乗った。彼はこのゾンビ化した世界で生き延びるため、自分の身体に改造を施した「ゾンビハンター」だった。


「お前たち、これからどうするつもりだ?」


「王都に行く。純白のエリクサーを探しに。」


 俺がそう答えると、ザイドは目を細めて俺たちを見た。


「……本気で言ってるのか? 王都は今やゾンビの巣窟だぞ。俺でも生き延びられるかどうか怪しい場所だ。」


「でも、行かなきゃいけないんだ。あそこにしか治療法の手がかりがないから。」


 ザイドは一瞬考え込んだが、やがて静かにうなずいた。


「面白い。なら、俺も同行してやるよ。」


「えっ、本当か!? 助かる!」


「勘違いするな。お前たちを助けたいわけじゃない。ただ、俺もそのエリクサーとやらに興味があるだけだ。」


 頼りになりそうな仲間が増えた――と同時に、俺の不安も増した。どう考えても、この旅は簡単には終わらない。


 王都へ向かう道中、俺たちは再び強化型ゾンビに遭遇した。彼らはただ徘徊しているわけではなく、何か特定のターゲットを探しているように見える。


「おい、あいつらの動き、普通じゃないぞ。」


 ザイドが鋭い声を上げた。その瞬間、ゾンビたちの一体がこちらに気づき、異常な速度で駆け寄ってきた。


「グォォォ!!」


「やばい! 来るぞ!」


 俺たちはすぐに身構えたが、そのゾンビは通常のものとはまるで違う動きだった。まるで訓練された兵士のように、計算された動きでこちらに襲いかかる。


「どうなってんだよ! 普通のゾンビじゃない!」


「おそらく……完全に操られている。誰かがこれを計画的に動かしているな。」


 ザイドは剣を構え、瞬時に反撃に出た。その一撃でゾンビの首が飛ぶ。


「これが強化型の厄介なところだ。完全に倒すには、急所を正確に狙わないといけない。」


「急所ってどこだよ!」


「頭部だ! 脳を破壊しない限り、こいつらは止まらない!」


 強化型ゾンビたちをなんとか撃退した俺たちは、改めて王都へ向かうことを決意した。しかし、ミナが呟いた一言が俺たちの不安をさらに煽った。


「ねえ……もしゾンビを操ってる奴がいるなら、そいつがエリクサーのことを知ってたら……?」


「どういうことだ?」


「つまり、その誰かがわざと王都に罠を仕掛けている可能性があるってことだよ。」


「そんな……じゃあ、俺たちはハメられてるってことか?」


「そうかもしれない。でも、行かなきゃ何もわからない。」

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