第2話 仕組まれた

「仕組まれた消失……?」

 車内の静寂の中で、マネージャーの言葉が頭の中で何度も繰り返された。

 助手席に座る僕は、緊張で手のひらに汗が滲むのを感じていた。目の前にいるこの男――田仲真由香のマネージャーだと名乗る男が、どこまで真実を知っているのかも分からない。だが、一つだけ確かなことがある。

 僕が真由香の失踪のカギを握っている。


「御幸さん、これを見てください」

 マネージャーは車内のタブレットを僕に差し出した。画面には、真由香の公式SNSアカウントが表示されている。最後の投稿は、彼女が失踪する数時間前にアップされたものだった。投稿には、こう書かれている。


「思い出の場所で、あなたたちを待っています。」


 そこには笑顔の真由香の写真が添えられていた。しかし、背景には見覚えのない場所が映り込んでいる。どこか古びた商店街の一角のようだが、具体的な場所は分からない。投稿には数万件のリプライがついているが、そのほとんどが「どこにいるの?」という質問や心配する声で埋め尽くされていた。


「この投稿が、彼女の最後の言葉になりました」

 マネージャーは低い声で続ける。

「思い出の場所……御幸さん、この言葉に心当たりはありますか?」


「……わからない。僕が知っているのは、彼女が“公園”を好きだったということくらいです。でも、それがどこの公園なのかまでは……」

 言いながら、胸の奥に押し込めていた記憶が徐々に蘇ってくる。確かに、彼女は“思い出の場所”という言葉をよく使っていた。


「公園ですか……」

 マネージャーは何かを考えるように黙り込んだ。

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