第18話 第二回調査報告
「それじゃあ、第二回調査報告会をはじめようか。まずは、ジィさんから召喚魔法について報告してもらおうかな」
僕の部屋で恒例の報告会が始まった。
今回はジィさんと賢者がメインかな? ヴァンが何してたかは知らないけど。
「そうじゃのぉ、何から話すか……」
ジィさんの調査結果によると、詳細は不明だが厄介な術式が詰め込めるだけ詰め込まれていることがわかったらしい。なんのことかよくわからない。
「認識阻害、誘導誤認、思考誘導、行動強制なんかの召喚者に都合のいい術式がおそらく大量に掛け合わされておる。で、これの厄介なところは儂も術に掛かっておるから詳細はまったくわからんし、解除も難易度が高すぎるという無理ゲーじゃ」
「私も調査は行ったけど、概ね同意だね。ちょっとずつ解除は試みるけど、あまり期待しない方がいい」
召喚者ってことは、マユルワナさんに都合のいいようになってるってことか。
「あと姫さんに関してなんだけど、おそらく術式のことを完全に把握はできていない。たぶん、ふわっとこういうものだなってくらいにしかわかってないと思う」
「あー、そうじゃろうなぁ。理解しとったらもうちょいやりようがあるはずじゃ」
えーと、つまりどういうことだ?
結局、特に何も分からなかったということでいいのかな。
「私たちからの報告はこんなところかな。ま、時折違和感を覚えることがあったけど、だいたいは術式のせいだということだね。調査は続けておくよ」
違和感なんかあったかな。
んん? こう考えているのも誘導されているとかそういう話なのか? はは、よくわからんね。
「では、次は吾輩であるな。森の汚染度合いと魔獣の状況を確認してきたのである」
おお、ヴァンはちゃんと仕事をしていた。
意外と真面目だよね。
「まず、あの毒蛙による汚染はある程度抑え込みに成功しているのである。ただ、広がりを抑えているだけなので、ヨロイ殿に浄化を手伝ってほしいのである」
[おーけー]
そういえば、ヨロイの魔法は浄化もできるんだっけ。
毒にも効果があるなんてすごいな。
「感謝するのである。あとは、魔獣の状況であるな。森の浅い部分については落ち着いたようである。当分はこちら側に出てくることはなさそうであるな」
「ありがとうヴァンくん。一応警戒はしておいてね?」
「了解である」
報告会は終わりかな?
魔力制御の訓練をちょっとだけやって、もう寝たいんだけど。
「さて、報告はこんなところかな。あとは姫さんが言ってた救出作戦について話しておこうか」
あー、そうか。
そんなことも言っていたな。あれって結局、行くことだけは聞いたけど他には何も知らされてないよね。
「みんなで行く必要はないと思うんだよね。私はとりあえず行ってみることにするから、あと一人か二人募集しようかな。行きたい人ー」
「隠密だろ? 俺はパスで」
[同じくパスでーす]
リュウとヨロイがすぐに断った。
まあ、監獄に潜入しての仕事となるとこの二人は向いてなさそうな気がする。
「……この中なら、儂とヴァンじゃろうなぁ。なんか役割が偏っておらんか?」
「まあまあ、適材適所ということである。吾輩は参加で構わんのであるよ」
「それじゃ、私とヴァンくんとジィさんで行ってくるね。リュウくんとヨロイくんは引き続きコウくんの特訓よろしくね」
色々と決まったようだ。
僕が行くことはなさそうなので安心した。
「あ、そうだ。コウくんは魔法を使えるようになったとしても、言いふらさないようにね?」
「え、なんで?」
あんなに苦労してるのに?
めちゃくちゃ自慢したくなると思うのだが。
「戦力になると思われたら、戦場に出ることになるよ?」
「誰にも言いません!!!!」
絶対に言わない。
自分の身を守るために訓練はしているが、戦場は流石に無理だ。そりゃあ、みんなのように戦えたらカッコいいだろうけど、当分は無理だな。
「まあ、いずれは戦うことになるだろうけどね。それまでは、隠しておくといいよ」
「りょ、了解」
戦わない方がいいけどなぁ。
まあ、英雄の一人と思われてるからそのうち戦わないといけない気もするよなぁ。
「さて、他にはもうないかな? ……じゃあ解散!」
そして、みんながいなくなる。
そろそろ退出方法にも慣れてきたけど、やっぱりカッコいいな。魔法を使えるようになったら、僕にもできるのだろうか。俄然やる気が湧いてきた。あ、ヨロイは普通に扉から出てもらっていいですか?
よしよし、こっそり練習してヨロイを驚かせてやろう。
……
結果? まあ、別にいいじゃない?
わりとすぐに寝ましたね。
――――――
翌朝、リュウに叩き起こされて走り込み。
だんだん慣れてきたとかは全くない。ただただしんどいね。まあ、まだ三日くらいだから慣れるわけもないんだけど。
疲れた体を引きずりながら食堂に向かう。
この後は魔力制御の訓練をした後、リュウと組み手をするんですって。組み手ってなにするんだろうなぁ。痛いのは嫌だなぁ。
食堂で着席し、食事の時間になるのを待つ。
ここで食べるのは僕だけなので、無音の時間が続く。そういえば、この世界は基本的に一日二食らしいということがわかった。正直に言って足りないので、ヴァンにまた肉をお願いしようかな。
ぼーっと考えごとをしていると、食事が運ばれてきた。
「英雄様、どうぞ」
「ありがとう、キリラちゃん」
キリラちゃんにお礼を言う。
庭で会った時には避けられてる感じもしたが、コミュニケーションって大事だよね。他の人たちはこの城に近づかないみたいだから、アイマさんとキリラちゃんとしか話したことないけど。
おや? いつも通りすぐに去っていくかと思ったが、なぜか今回は立ち止まり、ジッとこちらを見ている。
「どうしたの?」
「……魔獣、ありがとうございました」
それだけ言うと、ぺこりと頭を下げて去っていった。
森での迎撃戦のことだろうな。
僕、なにもしてないんだよなぁ。
「……いただきます」
なんだか微妙な気持ちになる。
食事も、いつもより味気なく感じた。
「ごちそうさまでした」
あっという間に食べ終わり、食堂を出る。
今から訓練場で魔力制御の時間だ。今日は何かを掴めるといいんだけど。
訓練場にはすでにヨロイがいた。
あれ、リュウとヴァンもいるな。
[お、来たね!今日も魔力制御をやろうと思ってたんだけど、予定変更だよ!]
ヴァンがいる時点でなんとなく察した。
「吾輩と森に行くのである!」
「ああ、やっぱり……」
そうだよねぇ。
報告会でヨロイに浄化を手伝ってほしいとか言っていたもんな。しかしなんで僕も行くことになったんだろう。
[実際に見てみるのも勉強になるからねー。大規模な毒の浄化なんて見る機会はそうそうないから、いい経験になると思うよー]
そこまで言われたら行くしかないか。
浄化がどんなものかも気になるし、怖いけどついていこう。
「リュウも行くの?」
「おお、行くぞ!なんかあった時に動けるやつがいた方が安心だからな!」
直接言ってはこないが、僕のことを心配してくれているのだろう。いろいろぶっ飛んではいるが、こうなってくると心強い。
[早速、出発しよー!たぶん魔獣が襲ってくることはないけど、十分に気をつけてね]
こうして、召喚初日以来はじめて森に足を踏み入れることになった。何も起きなければいいけど。
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