第31話 拠点から広がる波紋
「未来のハーレム—つながりの広場」がオープンしてから1か月が過ぎた。親子アートイベントや地域の物語を紡ぐ会、多文化体験教室など、様々なイベントが開催され、地域住民や訪問者たちが自然と集まる場所になりつつあった。
しかし、日常の中で拠点が定着し始めるとともに、「次にどう広げていくべきか」という課題も見えてきた。沙也加たちは、拠点だけでなく地域全体を巻き込んだ新しい形を模索し始めた。
多様性ワークショップの提案
ある日のミーティングで、ラミーが新しいアイデアを提案した。
「これまでは拠点の中での活動が中心だったけど、次は外に出てみるのはどうだろう?例えば、地域の学校や他の団体とコラボして、出張型の多様性ワークショップをやるとか」
「それ、いいね!拠点を知ってもらうだけじゃなくて、私たちが直接足を運ぶことで、もっと広いつながりが生まれるかもしれない」
美奈が目を輝かせる。
「学校なら子どもたちに早い段階で多様性について触れてもらえるし、他の団体と連携すればさらに活動の幅が広がるね」
拓哉も賛成する。
沙也加はその提案を聞きながら、次の一歩の可能性を感じていた。
学校との初めてのコラボレーション
地域の小学校が、ラミーの提案に興味を示し、出張型ワークショップの実施が決まった。テーマは**「違いを知る、つながりを作る」**。
• 第一部:自己紹介の壁
子どもたちが自分の好きなものや得意なことを絵や言葉で表現し、模造紙に貼り付けて一つの「自己紹介の壁」を作る。
• 第二部:違いを楽しむゲーム
異なる意見や価値観を楽しむことをテーマにしたコミュニケーションゲーム。
• 第三部:未来の地図を描く
子どもたちが思い描く「みんなが笑顔で暮らせる街」を一緒に描き、未来のつながりを想像する時間。
ワークショップ当日
小学校の体育館に集まった子どもたちは、最初は少し緊張した様子だったが、ラミーが笑顔で声をかけると、一気に空気が和らいだ。
「さあ、みんなの好きなものや得意なことを教えてくれるかな?何でもいいよ!絵でも文字でも大歓迎!」
子どもたちは思い思いに模造紙に絵を描き始めた。
「僕はサッカーが好き!」
「私は絵を描くのが得意!」
「私はお菓子を作るのが好き!」
完成した「自己紹介の壁」を見て、子どもたちは声を上げた。
「みんな全然違うね!でも、面白い!」
その後のゲームでは、異なる意見を持つペアが協力して一つの目標を達成する体験を通じて、「違い」が価値になることを楽しむ様子が見られた。
子どもたちの未来の地図
ワークショップの最後、子どもたちは大きな紙に「未来の街」を描いた。そこには、笑顔の人々、緑豊かな公園、多文化のシンボルが並び、色鮮やかな未来が広がっていた。
「これ、みんなで作った街だよ!」
「ここに私たちが住んだら楽しいね!」
その言葉に、沙也加たちは胸が熱くなった。
「この街が、本当に実現するように、私たちも頑張らなきゃね」
地域からの反響
ワークショップの成功を受け、他の学校や地域団体からもコラボレーションの申し出が届き始めた。拠点の活動が地域全体に広がり、未来のハーレム計画は新たな局面を迎えつつあった。
藤田会長も嬉しそうに語る。
「拠点がただの建物じゃなくて、街全体を繋げる存在になってきてるね。こんな風に広がるとは思わなかったよ」
手帳に記した言葉
その夜、沙也加は手帳にこう書いた。
「未来のハーレムは、壁の中に留まらない。地域全体に広がり、違いを楽しむつながりを育てていく。この広がりが、未来の種になる」
物語は拠点を超えて、さらに広い世界へとつながっていく。未来のハーレム計画は、次なる挑戦とともに、希望を灯し続けていた──。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます