第30話 未来の種を蒔く
「未来のハーレム—つながりの広場」が完成し、オープンしてから数週間が経った。この場所は、地域の人々や遠方から訪れる人々が集う新たな拠点となりつつあった。対話を楽しむ人、展示を眺める人、壁画に思いを描き加える人──それぞれが自由な形でこの空間を利用していた。
しかし、沙也加たちはまだ道半ばであることを感じていた。この拠点をどう維持し、さらに成長させていくかが次なる課題となっていた。
第一回コミュニティ会議
拠点を中心にした活動を長く続けるため、商店街や地域住民とのコミュニティ会議が初めて開かれた。会場はカフェスペースで、和やかな雰囲気の中で話し合いが進められた。
藤田会長が最初に口を開いた。
「この場所が商店街にとっても大きな財産になりつつあるね。これからどう活用していくか、一緒に考えていきたい」
一人の若い母親が発言した。
「この間、子どもと一緒に来ました。普段はなかなか話す機会がない他の親子とも知り合えて、本当にいい場所だと思います。もっと子どもたちが楽しめるイベントを増やしてほしいです」
それを受けて、美奈が提案した。
「たとえば、子どもたちが自由に描けるアートイベントや、親子で一緒に参加できるワークショップを定期的に開催するのはどうでしょう?」
「いいね。それに加えて、高齢者向けの活動も考えられるといいと思う。この場所がすべての世代を繋げる場になったら素敵だね」
ラミーが補足する。
新たなアイデアの実現
会議で出た意見をもとに、いくつかの新しい企画が立ち上がった。
1. 親子アートイベント
• 子どもたちが自由に絵を描き、大きなキャンバスを完成させるイベント。親子で共同制作することで、家族の絆を深める狙いもある。
2. 地域の物語を紡ぐ会
• 高齢者たちが自分の人生や地域の歴史を語り、それを若い世代が聞き書きするイベント。
3. 多文化体験の拡大
• 新たな文化体験として、外国の家庭料理教室や音楽セッションを取り入れる。
第一回親子アートイベント
初の親子アートイベントが開催された日、広場には多くの親子が集まっていた。子どもたちはキャンバスに思い思いの絵を描き、笑い声が広がっていた。
「ママ、ここ見て!こんなに大きなお花描いたよ!」
「すごいわね!じゃあ私は隣に太陽を描こうかな」
親子が一緒に絵を完成させる様子を見守りながら、美奈は感慨深げに呟いた。
「こんな風に、違いじゃなくてつながりを感じられる空間がどんどん広がっていくといいな」
地域の物語を紡ぐ会
翌週に行われた「地域の物語を紡ぐ会」では、地元で長年暮らしてきた高齢者たちが自分たちの経験や思い出を語った。
「昔、この商店街には毎日たくさんの人が集まってね……今とはまた違った活気があったよ。でも、こうやって新しい場所ができて、また人が戻ってきてくれるのが嬉しいよ」
その話を熱心に聞きながら、若者たちはノートに書き込み、時折質問を投げかけた。世代を超えた対話が生まれる瞬間に、ラミーは静かに頷いていた。
日常の中での成長
ある日の夕方、一人の女性がカフェを訪れ、沙也加に声をかけた。
「実は、前にここでのイベントに参加してから、自分の考え方が少し変わりました。それまで、人と違う意見を言うのが怖かったんです。でも、ここで対話を重ねるうちに、自分の意見を言うことも、他の意見を聞くことも大切だって気づきました」
その言葉に、沙也加は小さく微笑んだ。
「この場所が、少しでもそんな風に感じられる場になっているなら、本当に嬉しいです」
手帳に記した言葉
その夜、沙也加は手帳を開き、こう記した。
「未来のハーレムは、誰かの心に小さな光を灯す場所。この場所で生まれたつながりが、一人一人の未来を照らしていく。その種を大切に育て続けたい」
拠点を中心にした新しい挑戦が始まった未来のハーレム計画。その物語は、さらに深く広がる未来へと続いていく──。
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