第21話 繋がりを守るために

「未来のハーレム—多文化交流カフェ」の運営が2カ月目に入り、カフェは地域の中で徐々に認知を広げつつあった。新しい来訪者も増え、静かに展示を楽しむ人、対話に参加する人、それぞれが自分のペースでこの空間を使うようになっていた。


しかし、運営面での課題はますます大きくなり、沙也加たちは「この場所を守るにはどうすればいいのか」という現実的な問題に直面していた。


メンバーとの議論


「今月の収支、やっぱり赤字なんだよね」

拓哉がテーブルに広げた帳簿を見せながら、少し困った表情を浮かべた。


「寄付や参加費だけではやっぱり厳しいよね……」

美奈も頭を抱えるように言った。


「このままでは、せっかくのカフェを続けられなくなるかもしれない。何か新しい方法を考えないと」

ラミーがそう口にした。


「でも、ここを商業的なスペースにしてしまったら、今の良さが失われる気がする。それは避けたい」

沙也加の言葉に、メンバー全員が静かに頷いた。


地元の声


その日の午後、カフェには地元商店街の会長である藤田が訪れた。以前からカフェを応援してくれている人物だ。


「最近、だいぶ賑やかになってきたね。この場所ができてから、商店街にも少し活気が戻ってきた気がするよ」

藤田は嬉しそうに話した。


「ありがとうございます。でも、正直なところ運営が厳しくて……もっと安定した形にできないか考えているんです」

沙也加は素直に現状を打ち明けた。


「そうか。それなら、商店街としてもっと協力できることがあるかもしれないな。例えば、定期的にイベントを一緒にやる形にするとか、商店街のPRも兼ねられる仕組みにするのはどうだろう?」


その提案に、沙也加は目を輝かせた。

「確かに、それならお互いにメリットがありますね!」


「具体的な案を持ってきてくれたら、商店街の会議で提案してみるよ」

藤田の言葉に、沙也加は希望を感じた。


新たな方向性の模索


その夜、メンバーたちは商店街との協力を軸にした新しい運営プランを考え始めた。


「例えば、商店街の店舗がカフェの中で商品を紹介するスペースを設けるとかどうかな?それなら収益にも繋がるし、地域との繋がりも強くなる」

拓哉が提案すると、美奈も賛同した。


「それに、イベントで商店街とコラボできれば、来場者も増えるかもしれないね。例えば、多文化をテーマにしたフードフェスティバルとか」


「いいね。食べ物なら、対話が苦手な人でも気軽に楽しめるし、多文化を感じやすいテーマになると思う」

ラミーも笑顔で加わった。


ウィリアムは少し考え込んでから言った。

「ただし、商業的になりすぎると、この場所の本来の目的を見失うリスクがある。そのバランスをしっかり考えなきゃね」


「その通りだね。未来のハーレムは、つながりと対話を大切にする場所であり続けたい。それを守りながら、新しい可能性を探していこう」

沙也加は力強くそう言った。


新しいイベントの準備


メンバーたちは「多文化フードフェスティバル」を次の目標に掲げた。商店街の協力を得て、地元の店舗が多文化をテーマにした料理を提供し、カフェ内では対話や展示も楽しめる形を目指すことになった。


準備は大変だったが、商店街の協力や、これまでカフェを訪れてくれた人々の声が支えとなり、少しずつ形が見えてきた。


一人の来訪者の言葉


イベント準備に追われる日々の中、カフェには再び、以前静かなコーナーで過ごしていた女性が訪れた。


「また来ました。この前、ここに来てから少しずつ自分の気持ちを話せるようになってきたんです。職場でも少しだけ前向きになれました」


その言葉に、沙也加は心から嬉しくなった。


「この場所が少しでもお役に立てたなら、本当に嬉しいです。またいつでもいらしてくださいね」


「ありがとうございます。この場所があるだけで、本当に救われます」


手帳に記された言葉


その夜、沙也加は手帳にこう書いた。


「未来のハーレムを守るために、柔軟でありながらも、私たちの信じる価値を貫きたい。つながりが広がり、深まる場所であり続けるために」


カフェを続けるための試行錯誤は続いていく。しかし、その中で一つ一つのつながりが確実に未来のハーレムを形作っていた。物語は、新たな挑戦の中でさらに深みを増していく──。

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