第22話 多文化フードフェスティバルの幕開け

多文化交流カフェの新たな試みとして計画された「多文化フードフェスティバル」の準備が佳境を迎えていた。商店街とのコラボレーションは順調に進み、地元の店舗が参加を表明したほか、地域の住民やカフェの常連客もイベントに協力を申し出てくれた。


イベント前日の準備


イベント前日、カフェではメンバーたちが最終準備に追われていた。


「ポスターは商店街の入口に貼り付けたし、SNSでも告知したから、集客は大丈夫だと思う。でも、当日の動線をもう一度確認しておこう」

拓哉がチェックリストを手に、効率よく指示を出す。


「展示スペースの配置はこれで大丈夫かな?」

美奈がカフェ内に設けた「つながりの地図」の展示コーナーを確認している。


「料理コーナーは商店街の広場に設置して、ここカフェ内では対話型イベントを進行する流れだね。みんな、準備は万全にしよう!」

沙也加は全員を励ましながら、自らも展示の仕上げに取り組んでいた。


商店街とのコラボで、多文化をテーマにした料理が出店されることになっていた。地元の飲食店がアジア、中東、南米の料理を提供するほか、地域住民が家庭の味を披露する屋台も加わる。


イベント当日の朝


当日、朝から商店街はいつもより活気に溢れていた。各店舗が多文化をテーマにした装飾を施し、訪れた人々を迎え入れる準備を整えていた。


「こんなに人が集まるなんて思わなかったよ。これは期待できるね!」

商店街の会長、藤田が嬉しそうに笑う。


カフェ内では「つながりの地図」展示とともに、小さな対話の場が設けられ、訪れた人が自由に参加できる形式になっていた。


初めての挑戦


最初の来場者が商店街の広場に集まり始めた頃、沙也加たちはカフェ内で対話イベントの進行を始めた。


「皆さん、ようこそ!今日は『多文化フードフェスティバル』と題して、商店街全体で多様な文化を楽しむイベントを開催しています。このカフェでは、対話や展示を通じて、違う価値観や考え方を共有する場を設けています。どうぞ自由に参加してくださいね!」


会場のあちこちから拍手が湧き、参加者たちは自然と笑顔を交わした。


新たなつながり


カフェ内では、地域住民同士や訪問者たちが対話に花を咲かせていた。


「これ、つながりの地図って言うんですね。こんな風に自分の思いを書き込むのって面白いですね」

「普段はあまり文化の違いなんて意識しないけど、今日はいろんなことに気づかされました」


広場では、アジアの餃子、中東のケバブ、南米のエンパナーダなど、色とりどりの料理が並び、人々が行列を作っていた。


「おいしいね!これってどこの料理なんだろう?」

「これはトルコ料理らしいよ。屋台の人が教えてくれた!」


料理を通じたつながりもまた、多文化を実感する大きな要素となっていた。


一人の声


イベントが終盤に差し掛かった頃、カフェ内の対話スペースにいた一人の中年女性が沙也加に声をかけた。


「今日はとても素晴らしいイベントでした。実は、私もこの商店街で小さなお店をやってるんですけど、こんな風にみんなが交流できる場がもっと増えたらいいなって思いました」


「ありがとうございます!このカフェが、そのきっかけになれたなら本当に嬉しいです」

沙也加は感謝の気持ちを込めて答えた。


「実は私、若い頃に海外で働いていたことがあって。その時に感じた文化の違いが、このイベントを通じて懐かしく蘇りました。ここがこれからも続いていくよう、何か手伝えることがあれば言ってくださいね」


その言葉に、沙也加は胸が熱くなるのを感じた。


イベントの終わりに


夕方、イベントは無事に幕を閉じた。参加者は予想を上回り、商店街全体が多文化交流の温かな空気に包まれていた。


「やったね、沙也加!今回の成功で、私たちの活動がさらに広がる予感がするよ」

美奈が笑顔で言う。


「そうだね。でも、これがゴールじゃない。私たちが目指しているのは、つながりを広げ、深めていくこと。この成功を次に繋げていこう」

沙也加の言葉に、メンバー全員が力強く頷いた。


手帳に記した言葉


その夜、沙也加は疲れた体をベッドに横たえながら、手帳を開いてこう書き込んだ。


「多文化フードフェスティバルは、未来のハーレムの新たな扉を開いた。食や対話を通じたつながりが、私たちをさらに豊かな場所へ導いてくれる。次は、この灯を絶やさない仕組みを作りたい」


イベントの成功は新たな課題と可能性をもたらした。物語は、つながりを守り、次のステップへと進んでいく──。

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