第15話 つながりのその先に
「つながりの地図」のワークショップから数週間が経った。参加者たちの感想や完成した地図への反響は大きく、沙也加たち「未来のハーレム計画」のメンバーも改めて手応えを感じていた。
しかし、次の一歩を踏み出すには、より大きな挑戦が必要だとメンバー全員が感じ始めていた。
展示会という挑戦
「完成した地図をもっと多くの人に見てもらう場を作りたいんだ」
沙也加はミーティングの冒頭でそう語った。
「具体的には、地域で展示会を開けないかと思ってる。地図を展示するだけじゃなくて、過去のワークショップの内容や参加者の声も紹介したい。未来のハーレムがどういう場所なのかを、もっと広く伝えるための機会にしたいんだ」
「それなら、展示会の中で新しいワークショップも併設したらどうかな?」
美奈が提案する。「展示を見た人がその場で対話に参加できる形にすれば、展示会自体が新しいつながりを生む場所になると思う」
「いいね!対話型の展示会って、新しいかもしれない」
ラミーも興味を示した。
拓哉は現実的な問題を指摘した。
「ただ、地域で開催するとなると、場所や資金の確保が大きな課題だね。それに、これまで以上に計画を練らないといけない」
「その通りだね。でも、やってみる価値はあると思う」
沙也加の目は、次の挑戦への決意で輝いていた。
展示会の準備
展示会の開催場所には、地元のコミュニティセンターが選ばれた。過去のイベントで協力した商店街の店主が、施設の管理者を紹介してくれたのだ。
「ここなら、地域の人たちも気軽に訪れやすいですね」
沙也加はホッとした表情を浮かべた。
「場所が決まったら、次は展示内容を詰めていかないとね。展示パネルや映像、体験型のワークショップをどう組み合わせるかがポイントだと思う」
拓哉が資料を広げながら進行する。
美奈とウィリアムは、展示のデザインと対話型の仕組みを考えることになった。ラミーは商店街や地元の団体と連携して、来場者を増やすための広報を担当する。
展示会への期待と不安
準備が進む中、沙也加はふと一人になる時間が増えた。メンバーたちはそれぞれの役割を全力で果たしているが、今回の展示会がどれだけ成功するかは未知数だ。
夜、手帳にこう書き残す。
「展示会は、未来のハーレムを形にするための大きな挑戦。でも、どれだけ伝わるだろう?自分たちの思いが、来てくれる人に届くのかな」
沙也加はペンを置き、深呼吸をした。挑戦の先に何があるのかは分からない。それでも、進むしかない。
展示会の開幕
ついに迎えた展示会当日。会場には「未来のハーレム—私たちのつながり」と題された大きな看板が掲げられ、入り口には過去のワークショップの写真や「つながりの地図」が飾られていた。
最初の来場者は、商店街の常連客と思われる親子だった。小学生くらいの娘が「この地図、すごいね!」と声を上げ、母親も興味深そうにパネルを眺めていた。
「私たちも参加できるんですか?」
母親の問いに、美奈が笑顔で答える。
「はい!展示を見ていただいた後、簡単なワークショップに参加していただけます。よければぜひ!」
対話型ワークショップの始まり
展示会の一角では、訪れた人がその場で対話に参加できるワークショップが行われていた。テーマは「私たちのつながり」。参加者たちはそれぞれの価値観や考えを共有し、展示内容と自分を結びつけていった。
「私は、地域のつながりが大切だと思うんです。普段は商店街の店員とお客さんって関係だけど、こうやって話せる場があるのは新鮮ですね」
「私も普段は仕事で忙しくて、こういう場所に来るのは久しぶりです。でも、話してみると、いろんな人と考えが重なるんだなって感じました」
来場者たちの声に、沙也加は胸が熱くなった。これこそが「未来のハーレム」の一つの形だと実感する瞬間だった。
成果と次の課題
展示会は無事に幕を閉じ、多くの来場者が展示内容に感動し、次回の活動にも期待を寄せてくれた。
「今回の展示会、本当にいい反応だったね。でも、課題も見えてきたよ」
拓哉が終了後の会議で語った。
「例えば、来場者の年齢層が偏っていたこと。もっと若い世代や幅広い層に届けるには、新しい広報手段を考える必要があると思う」
「確かにそうだね。でも、今回は一歩前進だよ。この展示会が次の活動の基盤になるはず」
沙也加はそう言いながら、メンバーたちを励ました。
手帳に記された未来の地図
その夜、沙也加は展示会での出来事を振り返りながら、手帳に新しい言葉を書き加えた。
「未来のハーレムは、一つの展示だけで完成するものじゃない。小さなつながりを紡ぎ続けていくことで、いつか大きな地図を描けるはず」
次の挑戦に向けて、物語は新たなステージへ進み始めていた。未来のハーレムを形にする旅は、まだ終わらない──。
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