第9話 未来への壁

多文化フェスティバルが成功してから数週間が経った。沙也加たちの「未来のハーレム計画」は少しずつ広がりを見せていたが、それと同時に課題や新たな壁も見え始めていた。


フェスティバル後の振り返り会議


「フェスティバルは大成功だったけど、予算がギリギリだったわね」

絵里は資料を見ながら指摘した。「もっと大規模なイベントをやるなら、安定した資金源を確保しないと難しいかも」


拓哉も頷く。「大学の助成金だけじゃ限界があるし、次回以降はスポンサーを探さないと厳しいね。でも、どんな企業に声をかければいいのか……」


「それに加えて、もっと明確なテーマが必要かもしれない」

ウィリアムが口を開いた。「フェスティバルは楽しかったけど、来場者の中には、ただ楽しみに来ただけで、文化や多様性について深く考える機会にはならなかった人もいる気がする」


沙也加はその意見に思わず考え込んだ。確かに、フェスティバルは多くの人を巻き込むことには成功したが、「未来のハーレム」というテーマをどれだけ伝えられたのかという点では課題が残った。


「次回は、もっとメッセージ性のある企画を考えなきゃいけないかもしれないね……」


新たな挑戦のための会議


メンバーたちは何度も話し合いを重ねた。次のステップとして、単なるイベントではなく、**「継続的な学びの場」**を作ることが提案された。


「例えば、定期的なワークショップを開催して、参加者と深く関われる場を作るのはどうかな?」

美奈が提案すると、ラミーも賛同した。


「いいね。その方が、文化や多様性について長期的に考える機会を提供できると思う」


しかし、拓哉が現実的な問題を挙げる。


「でも、それだと参加費が必要になるかもしれないね。無料のイベントばかりだと資金が持たないし、どこかで収益を上げる仕組みを作らないと」


「確かにそうだね……でも、参加費を取ると、参加しにくい人もいるかもしれない」

沙也加は眉をひそめた。収益性と参加のハードルをどうバランスさせるか、簡単には答えが出なかった。


突きつけられる批判の声


そんな中、計画は新たな課題に直面する。フェスティバルの成功が話題になった一方で、一部のSNSや匿名掲示板では批判的な声も上がっていた。


「多文化とか言ってるけど、ただの自己満足じゃないの?」

「現実を知らない大学生が理想を語ってるだけだろ」

「文化交流って言うけど、特定の文化を押し付けてるだけじゃないの?」


これらの声に、沙也加は大きなショックを受けた。彼女たちが目指しているものが誤解され、否定されることがこんなに辛いとは思わなかった。


絵里との対話


「批判なんて気にしないで進めばいいのよ」

絵里はそう励ましたが、沙也加はどこか納得できない様子だった。


「でも、もし本当に私たちが何かを押し付けてるとしたら……それは未来のハーレムじゃないよね。違う文化を受け入れるって言いながら、私たち自身が偏った視点を持っていたらどうしよう」


「そんな風に考えられるってことは、沙也加さん自身が偏見を持たないように努力してる証拠よ。すべての人に理解されるのは無理だけど、少しずつ伝えていけばいいの」


絵里の言葉に、沙也加は少しだけ肩の力が抜けた。


未来への新たな決意


その夜、沙也加は手帳に新たなメモを書き込んだ。


「未来のハーレムは、誤解や批判に負けない強さを持つ場にする。誰もが安心して集まり、学び、成長できる空間を作り続ける」


そして、これまでの課題を一つ一つ振り返り、解決策を練り始めた。

• スポンサー探し:地域企業や教育団体への協力依頼。

• テーマの明確化:毎回のイベントやワークショップに焦点を絞ったテーマを設定。

• 参加費の柔軟性:支払いが難しい人にも参加できる仕組みを考える。

• 批判への対応:批判の声に耳を傾けつつ、より多角的な視点を取り入れる。


「乗り越えるべき壁は多いけど、これが未来のハーレムを作るための試練なんだ」

沙也加はペンを置き、窓の外を見つめた。街の明かりが小さな希望のように瞬いていた。


物語は、新たな課題とともにさらに深みを増していく。未来のハーレムを形にするため、沙也加たちの挑戦は続いていく。

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