第8話 多文化フェスティバルの舞台裏

新しいメンバーたちの協力で、「多文化と地域を繋ぐフェスティバル」の準備は着々と進んでいた。沙也加たちは大学と地元の商店街を繋ぎ、文化交流の場を広げるために奔走していた。


開催2週間前、フェスティバル準備の会議。


「地域の商店街からは、10軒の出店が決まりました!」

拓哉が嬉しそうに報告する。参加する店舗には、アジア料理や地元の特産品を扱う店が含まれており、来場者を引きつける目玉になりそうだ。


「アート展示のスペースも確保しました。地域のアート団体ともコラボが決まったので、私たちだけじゃなく、地元のアーティストの作品も展示されます!」

美奈の報告に、沙也加は微笑む。「すごいね、これなら地域の人たちも参加しやすくなるね」


一方、ウィリアムは少し緊張した面持ちだった。「僕の企画している文化紹介プレゼン、果たして日本の人に興味を持ってもらえるかな……ちょっと不安だよ」


「大丈夫だよ、ウィリアム」沙也加は優しく声をかけた。「文化の違いを伝えること自体が、このフェスティバルの目的だもん。たとえ全員が共感できなくても、何かを感じてくれる人はきっといるよ」


フェスティバル当日、会場は大賑わい。


朝から会場は活気に溢れていた。商店街の出店は彩り豊かで、アジアや中東の料理の香りが漂っている。地域の親子連れや学生たちが次々と訪れ、試食を楽しんだり、商品を手に取ったりしていた。


アート展示コーナーでは、美奈が中心となり、訪れた人々に作品の解説を行っていた。子どもたちがアートを通じて自由に感じ取る姿に、美奈は微笑んでいた。


「やっぱり、言葉がなくても伝わるものがあるんだね」

沙也加は展示を見ながら、美奈に話しかけた。


その頃、ウィリアムの文化紹介プレゼンテーションも始まっていた。スライドには、アメリカや中東、アフリカなど様々な文化の生活や価値観が映し出され、会場に集まった観客は真剣に耳を傾けていた。


「私たちは、違いを恐れることが多いです。でも、違いを理解することは、お互いを尊重するための第一歩です」

ウィリアムの力強い言葉に、会場から拍手が湧き起こった。彼の表情には、プレゼンを終えた安堵と達成感が浮かんでいた。


フェスティバルの終盤、沙也加は絵里と一緒に会場を歩いていた。


「これだけ多くの人が集まってくれるなんて、最初は想像もしていなかったわ」

絵里はそう言いながら、周囲の賑わいを見渡した。


「うん、でもみんなが力を合わせてくれたからだよ」沙也加は感謝の気持ちを込めて答えた。「このフェスティバルが、私たちの未来のハーレムの第一歩になればいいなって思う」


「きっとなるわよ。この場が、たくさんの人にとって新しい発見の場になったはずだもの」


フェスティバルが終わり、片付けを終えた後、メンバーたちは達成感に満ちた表情で集まった。


「お疲れ様!」沙也加は声をかける。「今日のフェスティバル、本当に最高だったよ。みんなのおかげでここまで成功できた!」


拓哉が笑顔で答えた。「これが始まりだね。もっといろんなことができそうな気がする」


美奈も頷いた。「次はもっと大きな規模でやりたいな。可能性が広がった感じがする」


ウィリアムは静かに微笑みながら言った。「違いを尊重するって、実際に体験することでしか学べないことがあるんだなって気づいたよ。僕もすごく勉強になった」


その日の夜、沙也加は疲れた体をベッドに投げ出しながら、ノートを開いた。手帳にはこう記した。


「未来のハーレム計画、少しずつ形になってきている。このフェスティバルは一つの到達点であり、新しいスタート地点でもある。次は、もっと広い窓を開けて、もっと多くの人と繋がっていこう」


沙也加の心には、新しい目標が芽生え始めていた。


「未来のハーレムは、誰かの自由と学びの窓になる。それを形にしていくために、次の一歩を踏み出そう」


物語は、さらに深く広がっていく。未来への期待を胸に抱きながら──。

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