第6話 繋がる窓

「第1回未来のハーレムワークショップ」は、参加者たちの満足した笑顔とともに幕を閉じた。その日、沙也加は手応えを感じる一方で、課題も見つけていた。


「もっと多くの人に、この場所を知ってもらうにはどうすればいいんだろう?」

翌日の朝、ノートを開いた沙也加は、一人でつぶやいた。


参加者が少ないことは想定内だった。だが、この計画を進めていくには、もっと広い層の人々に興味を持ってもらう必要がある。それには、ただ集まるだけでなく、もっと「魅力的な仕掛け」が必要だ。


沙也加は、これまで集まったメンバーに相談することにした。次回の会議で、絵里が先に提案を切り出す。


「今度は、具体的なテーマを持ったイベントを開いてみるのはどうかしら?例えば、料理や音楽、ファッション……文化を実際に体験できるようなもの」


「いいですね!」沙也加はすぐに賛成した。「ハーレムって、文化や教育の場でもあったから、そういう実体験を取り入れるのはすごく意味があると思います!」


ラミーも頷きながら口を挟む。「僕が知ってるアラビックミュージシャンを呼んで、小さな演奏会を開いてみるのも面白いかもしれないね」


次回のイベントの準備は、メンバー全員で行うことになった。テーマは「多文化体験」。内容はラミーの提案を中心に決まった。

• 音楽ライブ:アラビック音楽の演奏。

• 体験ワークショップ:ヘナアート体験や、中東料理の試食会。

• 展示コーナー:ハーレムの歴史や文化を紹介するパネル展示。


これらを、大学の一角を借りて開催することに決まった。


「これなら、私たちの計画をもっと多くの人に知ってもらえそうだね!」沙也加の目は輝いていた。


イベント当日


イベントは予想を超える人々を引き寄せた。通りがかりの学生や地域の人々も足を止め、音楽や文化体験を楽しんでいた。


ラミーが連れてきたミュージシャンが奏でるアラビック音楽に、多くの人が足を止めて聴き入った。その音色は、どこか懐かしく、それでいて新鮮だった。


体験コーナーでは、中東料理のフムスやタブーリが振る舞われ、ヘナアートの体験では行列ができるほどの盛況ぶりだった。


展示コーナーには、ハーレムの歴史や文化に触れる解説が並べられ、沙也加自身も来場者に説明をして回った。


そんな中、一人の女性が沙也加に声をかけてきた。彼女はどこか懐かしさを感じさせる雰囲気を持つ中年女性だった。


「あなたがこのイベントを企画したの?」


「はい。まだ小さな取り組みですが、未来のハーレムを現代に再現するというテーマで活動しています」


その言葉を聞いた女性は静かに微笑んだ。


「素敵な考えね。私も昔、異文化交流の場を作る活動をしていたことがあるの。でも、あまり理解されなくてね……続けるのは大変だと思うけど、あなたたちならきっと何かを変えられるわ」


沙也加はその言葉に背中を押されるような思いがした。


イベントが終わる頃、メンバーたちは達成感に満ちた表情で集合した。絵里が笑顔で言う。


「今日は本当に成功だったわね。この調子で、もっと大きなイベントに挑戦できるんじゃない?」


ラミーも頷いた。「僕たちの活動を広げるヒントが、今日いろいろ見つかった気がするよ」


沙也加はその言葉に心から同意しながら、小さく手を握った。


「これからが本番だね。もっとたくさんの人に、この場所を知ってもらいたい」


その夜、沙也加は手帳にこう書き込んだ。


「未来のハーレム計画、第一歩成功。次は、もっと多くの窓を繋げていこう」


まだ始まったばかりの挑戦。しかし、沙也加の心の中には確かな手応えが芽生えていた。この計画はただの思いつきではなく、社会に変化を起こすための道のりなのだと。


物語は少しずつ、未来へと向かって動き始めていた。

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